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第18回
バーチャル・リアリティ技術がもたらす医療への変革

バーチャル・リアリティ(VR)とは

バーチャル・リアリティ(Virtual Reality、以下VR)という言葉が生まれて、すでに30年が経とうとしている。「仮想現実」とも言われ、ゲームをはじめとした映像を中心に、理工学的技術により作り出した感覚を現実的に感じさせるものだ。今後、急速に普及するであろうVR技術が、今、医療現場に革命をもたらそうとしている。VR技術を応用したウェアラブルデバイスの活用事例をご紹介する。

  • (出典:日本バイナリー株式会社

  • 医療トレーニングへの応用

    (出典:THE BRIDGE

    VRを利用したウェアラブルデバイスは医学生への教育や医師の技術向上のためにも一役買っている。二つの例を挙げてみよう。

    イギリスの医療教育向けツールの開発を手掛ける会社にMedical Realitiesがある。今年4月、Medical Realitiesは大腸がん手術の様子をストリーミング配信した。360度を捉えるカメラにより外科手術の詳細を映し出したものだ。Google Cardboardなどの安価なウェアラブルデバイスを装着することにより、その場にいるかのような感覚を味わうことができる。まだ、シンプルな画像ではあるが、今後CGIや感覚的なVRも含め研究は続く。

  • (出典:富士通

    また、富士通が現在開発中のウェアラブルデバイスに「zView」がある。術者が「zSpace」というスマートグラスを装着することにより、3D支援画像が術野上に重なる。ヘッドマウントディスプレィとは異なり、眼鏡と同じ感覚で装着できることから術者の煩わしさをなくしている。このデバイスは術者自体を支援するとともに、その場にいなくとも、その状態を閲覧することを可能にする。VR技術による画面共有・画像配信は医学教育や手術のシミュレーションに大きな変革をもたらすと言えるだろう。

  • 臨床への応用

    (出典:sony

    VR技術を応用したウェアラブルデバイスの活用は、臨床でもさまざまな取り組みが行われている。心理的なアプローチによるものを挙げてみよう。

    例えば、ここに高所恐怖症の患者がいたとする。患者にヘッドマウントディスプレィを装着してもらい、CGで作られた画像が見えるようにする。患者が苦手とする高い場所を実際に歩いているかのような感覚を疑似体験してもらうものだ。もちろん、そこは普通の室内だ。しかし、ヘッドマウントディスプレィを通して患者の目に入ってくる光景は別世界である。こうして患者自身が苦手とするもの・恐怖心を抱くものに対峙する状況をバーチャルな世界で体験することにより、恐怖心への克服へとつなげる方法だ。
    心理療法をはじめ、脳卒中患者へのリハビリなど幅広い分野での臨床応用が期待される。

  • さらなる進歩が期待されるVR技術

    バーチャル・リアリティといえば、真っ先に浮かぶのはゲームの世界ではなかっただろうか。ゲームや映画などで見た世界が、現実のものとして医療現場を変えようとしている。医学生への教育・医師の技術向上のためのシミュレーション、そして臨床への応用、まだまだ研究段階ではあるがさらなるVR技術の進歩により、医療技術の飛躍的な向上が期待される。

 
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