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第16回
ウェアラブルデバイスとヘルスケア

ウェアラブルデバイスは、主に健康維持の為に身に付けるイメージが強かった。
しかし、Apple Watchをはじめとして、端末の情報処理能力が上がるにつれて、
医療機器と遜色無い機械が身近に手に入るようになった。
ウェアラブルデバイスは医療にどんな可能性を与えてくれるのだろうか?

  • (出典:flickr

    ウェアラブルデバイスという名前を耳にしたことがあるだろうか? ウェアラブルデバイスとは、その名の通り、身につけて持ち歩くことができる機器のことである。特にコンピュータやスマートフォンなどが先にあり、その周辺機器としての使い道を期待している場合に、ウェアラブルデバイス、ウェアラブル端末と呼んでいるようだ。

    筆者はMoveというスマートフォンの活動計アプリを起動して、たまに調べているが、あまり必要性を感じる場面が無かった。また、医療に使えるような細かい情報は得られず、あくまで健康維持の為にウェアラブルを使うという印象がこれまで強かった。

    しかし、最近発売されたApple Watchをはじめとしたウェアラブルデバイスは、情報処理能力が格段に上がっている。また、医療機器にも匹敵するような性能を持ち合わせており、今後ウェアラブルを介して医療が劇的に変わるかも知れない。

  • Apple Watchの意外な性能

    Apple Watchの例を見てみよう。Apple Watchとは、Apple.inc(以下Apple)が開発した腕時計型のウェアラブルデバイスであり、iPhoneと連動して動作する。Eメール、電話の着信、イベントの通知等を腕に知らせてくれたり、身につけている間、活動量や心拍を計測することも出来る。Apple Storeの店員に伺ったところ、二本指をディスプレイにあてると恋人の心拍を確認できたりもするらしい。

    さて、最新機器を分解して紹介する海外のサイトiFIxitによれば、先日販売開始されたApple Watchの中にはパルスオキシメーターが入っていたようだ。パルスオキシメーターは、酸素の血中飽和度を測る機器で、リアルタイムの心拍を調べる為に病院内でも治療時に用いられるものである。Apple製品の紹介をするメディア9to5Macによれば、実際に医療機器と遜色ないくらい、かなり正確な心拍がとれるそうだ。

    (出典:9to5Mac

    現在は、Apple Watchで計測したパルスオキシメーターのデータは見られない状態になっているそうだが、二つの憶測がある。

    一つは、まだ必要な性能に達していないとAppleが判断しているのではないかということ、もう一つは、米国の食品医薬品局(US Food and Drug Administration:以下FDA)からの認可が降りていないのではないかということである。もし、後者が理由であれば、FDAの認可さえ降りれば、いつでもApple Watch向けのソフトウェアとして、心拍データが使えるようになる。

    Apple Watchをはめた状態で生活し、その心拍データを医師に見せるだけで心原性の疾患を診断出来るようになれば、問診や検査の手間が大幅に省ける。医療機器を身に付けることで突然襲ってくる病から救いだしてくれるようになるのだ。

    今まで、「ウェアラブルデバイスなんて医療者には関係ない」と思っていた方も、少しウェアラブルデバイスについて見直したのではないだろうか?

  • ウェアラブルと医療の関係

    (出典:mobihealthnews

    ウェアラブルデバイスの情報精度が高くなればなるほど、医療機器に近づくのは、先程の例を見ても分かるだろう。それでは、今後ウェアラブルデバイスはどれくらい普及していくだろうか? 海外の例を紹介する。

    mobihealthnewsによれば、2020年には、医療用のウェアラブルなパッチ測定機器が、米国で1200万個流通するとも言われている。それらはEHRと結びついて患者の慢性疾患の診断に活用されるようになる。同記事で紹介されていたパッチ測定機器は、スイスの循環器の遠隔モニタリングを行っているLifeWatch、米国に会社を構えるFitLinxxiRhythmなどであるが、他にも数多くあるだろう。

    これらの会社は、FDAから認可をもらっていたり、米国国立衛生研究所(National Health Institute:以下NIH)の協力を得て、臨床研究データを集めていたりしている。

    かつてCTによる3Dシミュレーションなど無かったように、医療業界は治療や診断に明らかに有用だと認められれば新しい技術を取り入れていく業界である。日本でも、米国で用いられるような医療ウェアラブルが今後普及するかも知れない。具体的な事例を見ていこう。

  • Proteusについて

    (出典:Proteus digital health

    今回はProteus digital medicine platform(以下Proteus)について見ていきたい。Proteusは、米国の医療費負担の75%を占める糖尿病や高血圧などの慢性疾患に対する個人の服薬、生活療法を助けるシステムを提供している。

    具体的には、患者の日常の服薬行動やバイタル情報をモニターし、それをもとに独自の分析レポートを提供することで、医療者が患者の診断をより円滑に出来るようにしている。また、患者側も薬の飲み忘れを防いだり、自分の今の状態をタブレット上で確認出来るため、結果的に医療者、患者の双方にメリットがある。

    (出典:Proteus digital health

    Proteusは医療者と患者間で診断情報をつなげるEHR(Electric Health Record)が中心の会社であるが、ここ最近になってウェアラブルパッチの製品を開発した。このウェアラブルパッチは、絆創膏のように体に貼り付けることで日常の患者が自身で体の情報をモニターすることが出来、患者がOKすれば、かかりつけの医師もそれを見ることが出来る。

    これまで、健康情報をタブレットに手入力するのが手間だったが、ウェアラブルパッチを用いて簡単にバイタルサインをとれるようになれば、わざわざ病院に行かなくても簡単な検査の代わりになる。結果として、医療がより身近になり、救われる命が増えるだろう。

    ウェアラブルデバイスを使うメリットがここにある。つまり、身につけているだけで情報入力出来るということだ。いちいち何回も同じような検査を病院でするのは面倒くさいし、それを確認してカルテを作成するのも大変である。また、病院の検査は大抵日にちを置いて行われるので、急な容態変化を察知することは困難である。ウェアラブルデバイスは、これらの医療情報の収集に大きな効果を発揮する。

  • 日本でも出来る?

    (出典:心脳血管研究所

    筆者は日本でも同様のことは可能であると考えている。日本の医師がスマートフォンのカメラに指を押し当てて心拍を計測し、その心拍データから心原性脳梗塞を診断出来るアプリケーション「ハートリズム」を開発した。

    家でスマートフォンを開いて、高齢者の指をカメラにあてれば、予防医療にも使える。現在、このアプリケーションのApple Watch版が開発中でクラウドワークスというサイトで協力者を募集している。まだ、センサーの使い道がどうなるか分からないが、Apple Watchに搭載された心拍センサーを使えれば、急性疾患を未然に防げるかも知れない。

    今後このようなサービスが更に広がれば、日本でもウェアラブルデバイスが医療に普及することになる。そして、極端な話かも知れないが、ウェアラブルデバイスを常に身につけていれば、24時間予防医療が可能になるだろう。

    ウェアラブルデバイスは単に趣味として身に付けるだけでなく、将来の予防医療にも欠かせない存在となる可能性を秘めている。今後も新しいウェアラブルデバイスから目が離せない。

 
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