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第13回
Google Glassは医療の世界を変えるのか?

従来の医療システムを大きく変える可能性があるとされる、メガネ型のスマートデバイス「Google Glass」。
グラスを通して患者さんの状態や情報をリアルタイムに把握するなど、各方面での活用が期待されている。
果たしてGoogle Glassは医療を変えるのか。医療とグラスの親和性を考える。

  • Google Glassというデバイスでできること

    発表したウェアラブルデバイスだ。眼鏡のように装着することで目前にディスプレイを表示し、動画や写真の撮影や、無線でネット接続し、情報検索などを行うことができる。

    データ保存容量は12GB。バッテリーは約1日持つとされている。専用のアプリを起動し利用することも可能で、小さなiPhoneが搭載された眼鏡型デバイスだといったら分かりやすいかも知れない。

    このデバイスの一番のメリットは、他の作業をしながら必要な情報をリアルタイムで知ることができることだ。スマートフォンの場合は画面に意識が集中するあまり、周りの状況に目がいかないことがしばしばあるが、Google Glassは常に視界の範囲内に同時に情報を捉えられるのだ。

    また、スマートフォンを操作とするときには多くの場合で両手がふさがってしまうが、音声入力に対応しているので、料理をしていても、自転車に乗りながらでも、インターネットで知りたい情報にアクセスしやすくなる。また音声の他に、側面を指でなぞるスマートフォンのような指操作も行うことも可能だという。

    一般的な販売はまだ行われていない状態だが、4月には18歳以上の米国在住者を対象に、24時間限定でプロトタイプを購入できるプログラムを実施した。価格は1,500ドル(約15万円)と安いものではなかったが、翌日の朝にはすべての在庫がなくなったそうだ。

    今後はより低価格な製品版を発表する予定で、今年の末には一般発売されるのではないか、と言われている。

    Google+公式アカウントで公開されているコンセプト動画では、日常生活やスポーツ、楽器演奏を楽しむ形で機器が使われている中で、外科手術をしている医師の姿を見る事ができる。医療・ヘルスケア分野では、プロトタイプのモデルを使って、機器を実務に活用する試みが広がりつつあるのだ。

  • Google Glassの医療活用事例

    (出典:flickr

    救急医療で求められる情報は数多くある。特定の既往歴が無いかどうか、バイタルサインはどのように推移をしているかなどを判断しながら、患者を正確に治療しなければいけない。1つの漏れや勘違いがミスにつながりかねないため、別々の媒体から情報を確認するだけでも負担になる。

    Google Glassはこうした救急医療の問題を解決するのではないかと期待されている。

    (出典:VitalMedicals

    VitalMedicalsは、Google Glassの画面上に「手術する患者のバイタルサイン」をリアルタイムで表示させることができるアプリ。

    機器を装着した状態で患者の容態を確認しながら手術することができる(上写真)ため、いちいち心拍数メーターを見る必要がない。

    (出典:Life as a Healthcare CIO

    米国ボストンのBeth Israel Deaconess Medical Centerでは、医師が治療室に入った際、壁に掲示されたQRコードを読み取ることで、Google Glassに患者のデータを表示するアプリを導入している。

    他にもGoogle Glassの現場活用事例としては、外科手術のシミュレーションを行うAR学習アプリがある。

    外科手術は経験を積むことが技術の向上につながるが、手術のシミュレーションを行うことはなかなか難しい。そこでスタンフォード大学の医師がGoogle Glassのモニタ上にARを表示し、外科手術の手順を紹介する「MedicAR」を開発した。

    切除、縫合などの手順、再現のむずかしい外科手術をGoogle Classの画面上で正確に知ることができる。

    またこれまで困難だった手術の動画配信も可能になる。メイン州の医師、Rafael GrossmannはGoogle Glassを装着して外科手術の様子を動画配信し、医療教育に革新をもたらそうとしている。

    日本での活用はどうだろう?

    在日フランス大使館によると、フランスのレンヌで行われた人工関節置換術がGoogle Glassを使って名古屋市立大学大学院に生中継された。

    このように、Google Glassによって他の活動をしながら必要な情報にアクセスしやすくなれば、特に救急医療において、業務を改善することができるのだ。

  • Google Glassの問題点

    (出典:flickr

    Google Glassの導入において問題となるのは、セキュリティ上の課題である。現在アメリカでは、EHRを医療現場に普及させているが、利便性の向上の一方でセキュリティ面での課題が年々大きくなっている。

    Google Glassに表示されるバイタルなどのデータも、元をたどればコンピュータから取得しているので、通常のコンピュータ同様のセキュリティの問題は存在する。

    Google Glassのアプリケーションから患者データが漏れる可能性もあるため送信側のコンピュータ、Google Glassの両方でしっかりとしたセキュリティ対策を行わなければならないのだ。

    また救急医療の業務において支障無く安定的に利用できるかどうかという点でも疑問符が残る。日本ですでにGoogle Glassを利用している人の体験談を見ると、朝に電源を入れて仕事場につくまでにバッテリーが半分になっていた、肝心のGoogle Glassの情報がかなりぼやけている、などの課題があるようだ。

    まだ試作段階の情報ではあるものの、個人利用はともかくとして、医療の現場に耐えうるものではないという印象を受ける。外科手術の際にディスプレイに映るバイタルデータが不明瞭であったり、長丁場の手術でバッテリーがもたずに電源が落ちてしまう可能性も考えられるだろう。

    この画期的なデバイスが医療現場に導入されるには、こうしたいくつかの問題を乗り越えていく必要がありそうだ。

  • Google Glassは医療の世界を変えるのか?

    結論から言うとGoogle Glassが医療の世界を変えるのはもう少し先の話になるだろう。現在既にいくつかの病院でGoogle Glassの活用が始まっているが、あくまで試験的な運用にとどまっている。

    Google Glassを導入する上で考えなければいけない問題は多い。病院ITに必要なセキュリティレベルをクリアすること、高い集中力が求められる救急医療の業務に支障が無いこと(ディスプレイの位置が、手術時の視野を妨げないこと)、また、長時間に渡りバッテリーがもつことなどといった問題だ。

    Google Glassはそのコンセプトが発表されてから性能、デザインともに劇的に進化してきたが、現場で利用されるデバイスとして認められる為には、更に多くの実績が必要になってくる。

    同時に、それぞれの病院でのGoogle Glassの利用についても、発表されている医用アプリの中に利用を見込めるものがあるかどうかや、機器が現場での実用に耐えうるレベルになっているかどうかが導入の目安のひとつとなるのではないだろうか。更なる製品の機能の向上と、医療現場からの利用ニュースに期待するとしよう。

 
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