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第1回
医療機関が知っておくべき医療ビッグデータ最新事情と活用メリット

最近ビッグデータというワードをよく聞くが、そもそも「ビッグデータ」とは何なのか?
医療でビッグデータを扱うとき、誰がどのように恩恵を受けるのだろうか?
医療ビッグデータで期待されている効果について紹介しよう。

  • 「ビッグデータ」とは?

    (出典:flickr

    近年、コンピュータの処理速度が格段に進歩したことで、大容量かつ多様な情報を高速で扱うことができるようになった。こうした情報は主にインターネットサービス上で様々な形で蓄積される。このような情報を「ビッグデータ」と呼ぶ。

    ビッグデータの特徴は、テラバイト単位の大容量の情報であると同時に個人個人に密接に関係した情報であること、リアルタイムの非定型な情報が含まれるということだ。

    IT業界では、このデータを活かして1人1人に合わせた広告発信やマーケティングが出来るのではないか、と期待されている。

  • 医療ビッグデータで、パーソナライズされた治療や予防医療が可能に

    (出典:flickr

    医療業界でもビッグデータ活用は注目されており、日立やソニーのような大企業をはじめ、多くの企業が医療のビッグデータ活用に乗り出している。

    遺伝情報のデータベースを運用したり、電子カルテを利用したり、情報媒体は多種多様であるが、医療におけるビッグデータ活用に期待をかけているのが分かる。

    産經新聞の取材で、富士通株式会社の山本正已社長は「ビッグデータで成長が期待されている分野は?」という問いに対して、以下のよう述べている。

    「医療分野に期待している。近年医療の世界では『健康寿命』がテーマになっていて、健康で長生きするための予防医療が脚光を浴びている。個人にあった予防や治療が大切になる。当社は社長直轄の組織『未来医療開発センター』を設置し、得意とする電子カルテのデータと連携して、最先端の医療に結びつけることなどを研究する。」

    こうした個人向けの健康管理や医療において、積極的に活用されると目されているのが、近年急速に普及しているスマートフォンやウェアラブルデバイスなどの携帯端末だ。

    たとえば、「FuelBand」や「Fitbit」のようなウェアラブルデバイスは、自分の身体に身につけながら、日頃の運動量や食事、睡眠量などの記録をスマートフォン上で簡単に見ることができる。自分が普段持っているデバイスで自分自身の健康を管理できるのだ。

  • 噂されるアップルのヘルスケア市場参入とビッグデータ活用

    (出典:flickr

    ニューヨーク・タイムズ誌は、昨年12月に米アップル社の幹部がアメリカ食品医薬品局(FDA)とモバイル・ヘルスケアアプリケーションに関して会合を行ったと報じ、アップルのヘルスケア市場参入を予測している。

    さらに2月16日の米サンフランシスコ・クロニクル紙では、アップルがこれまでに有名なフィットネス・インストラクターや医療センターに関して経験を持つエンジニアを多数雇用してきており、医療機器の開発に向けて動きはじめたと報じた。

    医療の専門家チームを集めて開発されていると噂されるのは「iWatch」という腕時計型のウェアラブル・デバイス(上写真)や、iOS上で自身の健康データを管理できるアプリ「Healthbook」だ。

    「iWatch」や「Healthbook」は、より詳細かつ膨大なバイタルデータの計測・管理を可能にすると言われている。特に心拍数や血糖値、呼吸数、体重などの医療ビッグデータや、健康診断のデータまで確認できるという。

    日本でも最近ヤフー株式会社が、遺伝子情報と、スマートフォンやウェアラブル端末で計測した活動量や睡、食事内容などの情報(医療ビッグデータ)を組み合わせて、生活習慣に関するアドバイスなどを行う「Health Data Labo」という取り組みを発表した。

    アップルやヤフーのようなサービスが広がると、個人が手持ちのモバイルデバイスで、心拍数や体温、血圧などのバイタルデータをチェックでき、普段から健康に気を遣うようになるため、病気予防につながる。

    こうした私的デバイス活用(Bring Your Own Device=BYODとも言われる)による医療ビッグデータ収集は、個人の治療や予防を効率化させるために欠かせない存在となるはずだ。

  • ビッグデータ×医療、もうひとつのメリット「医療費削減」

    ビッグデータの活用は、医療費の削減というテーマでも大きな期待をかけられている。膨大なデータを使って個人にあった予防や治療をすれば、病院診療を減らすことができ、医療現場の業務の改善にもつながるからだ。

    日本政府は医療コストを削減する為に、診療報酬の改定や患者さんの負担引き上げ、医師や病床数の削減などを行ってきた。しかし病気にかかりやすい高齢者人口が増加することで、医療コストはどんどん増えている。

    2011年の医療費は過去最大の38兆円となり、このまま医療費が増え続ければ、医療制度をもたせることはできなくなる可能性は高い。

    (出典:国民医療費・対国内総生産及び対国民所得比率の年次推移(厚生労働省 2013年11月14日))

    ビッグデータは、こうした医療現場のコスト削減に有用として、注目されている。

    上記で述べたような個人による健康管理が進むことで、病気になる人の絶対数が減り、病院診療が減ると期待されているからだ。

    また、患者さんの電子データを活用すれば、医療現場での診断がより正確になる

    医療現場には電子カルテやCT、MRIなどの検査結果を含む診断データ、処方箋データなどが存在する。これらのデータの分析や他のデータとの連携、病院間でのデータ共有などによって、どういった治療をすれば最適な効果を得られるかという費用対効果が可視化され、医療現場のコストを削減できると言われている。

  • 医療×ビッグデータで期待される大きな効果と課題

    今回は、医療でビッグデータを活用するメリットとして、個人による健康管理の実現、医療コストの削減の2つの効果をご紹介した。

    ビッグデータは、電子カルテなどの医療現場の情報に限定されるわけではない。一般の人々が利用するスマートフォンやウェアラブルデバイスの健康データや遺伝子情報も貴重な医療データなのだ。

    今後の記事では医療機関がビッグデータを活用する上での課題を取り上げる予定だ。具体的には、いかにしてこうした個人的なデータを医療機関が取り込んでいくかや、その際のプライバシーへの配慮について書いていく。

    現代は、コンピュータの処理速度、携帯端末の機能が格段に進歩したことで、大容量かつ多様な情報が活用できるようになった。

    プライバシー管理の課題はあるものの、詳細な個人情報が含まれる医療ビッグデータの適切な活用は、今後患者さんの治療や病気の予防に大きく貢献していくはずだ。

 
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