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第11回
14万人以上の医療従事者が登録!診察後の患者さんに最適な医療コンテンツを手軽に送れるモバイルアプリとは?

米国の調査によると、半分以上の患者さんは診察を受けても、十分に説明を理解できていない。患者さんの自宅での学習効率を高めるアプリを開発したことで、この問題をほぼ解決した企業がある。どんなアプリなのだろうか?

  • (出典:flickr

    アメリカ疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の文献や調査レポートは、世界共通ルールとみなされるほどの影響力を誇る。

    同センターが出したある調査レポートによると、米国では病院を訪問する患者さんの50%以上は、医師の説明や指示を十分に理解しないまま診察室を去っているそうだ。

    なぜこんなにも多くの患者さんが、医師の説明を理解できないのだろう?

    その原因は主に3つあると考えられる。

    まず考えられるのは、患者さんの心理状況である。患者さんは病院で診断を受けるときは、通常より不安な状態であることが多い。そんな中、医師から専門用語で病状やその対処法などを説明されても、なかなか頭に入ってこないと考えられる。

    次に考えられる理由は、医師が一人あたりにかけれる時間が短いことだ。限られた時間の中、診断結果や今後の治療方法など多くの情報を一度に伝えることから、どうしても患者さんは理解を深めにくくなる。

    最後に考えられるのは、患者さんが自身の症状や治療方法に関して、自宅で学びにくいことだ。おそらく患者さんが自身の症状を学ぶための、主な情報源は病院からもらう紙資料や、書店で購入する本、ブログ、症状解説サイトなど。

    はじめの2つの原因を医師が解決するのは困難であるが、最後の原因は米ユタ州ソルトレイクシティの医療系スタートアップが生み出した「Orca Health」というアプリを使えばほぼ解決できる。

    同アプリを使えば医師は、それぞれの患者さん合わせて、症状や手術法を説明する「ビデオ、3Dアニメーション、ナレーション」を選択し、患者さんにアプリを通してお届けすることが可能。

    このアプリを使う医師は、患者さんの自宅での学習効率を高めるだけでなく、患者さんの満足度を高めることにつながる。

  • 医師がiPhone/iPadアプリを使い患者さんに効率良く情報提供

    今回ご紹介する、患者さんとのコミュニケーションアプリ「Orca Health」は、上記の問題を現場で直面していた医師とエンジニアによってユタ州で開発された。

    現在は、iPhoneとiPadユーザー向けに、9種類のアプリ(下写真)を提供している。ハーバード・メディカルスクールと共同で作成した信頼の医療コンテンツが売りだ。

    医師は同アプリを使うことで簡単に、患者さん診察後のアフターフォローをすることができるようになる。

    Orca HealthのiPhone、またはiPadアプリ(上写真)の合計ダウンロード数は、約200万(2014年2月14日時点)。

    ユーザー数は約20万人(2013年10月時点)で、その内プロフィールに「Professional=医療従事者」と記載したユーザーは、約70%(約14万人)だそうだ。つまり患者よりも医師が先行して取り入れているアプリだと言える。

    医師は、同アプリを14日間無料で利用することができる。その後は月$19.99、または年$199.99。支払い方法はAppストア決済。

    Orca Healthのユーザーである10人の医師の声(上画像)を見ると「患者さんの教育ツールとして最適」というような意見が目立つ。

    これだけ多くの医師にアプリが支持されている理由は、同アプリが冒頭で紹介した問題を解決するために、機能を特化させているからだ。

    米国のHIPAA法のプライバシーとセキュリティ規則を遵守しているため、米国の医師にとって安心して利用できるサービスであることも、人気の秘訣である。

  • 医師によるOrca Healthアプリ活用の流れ

    まず医師は、Orca Healthアプリを仕事用のiPhone/iPadにインストールしておく。

    患者さんの診察後、アプリ内のカメラ機能を使い、患者さんのレントゲン写真を撮影(上写真)、画面上の写真に指でメモを書き込む。

    その後、アプリに用意されている膨大な医療情報の中から、患者さんに見てもらいたい学習コンテンツを選択する。コンテンツの形式は、3Dアニメーション(下写真)やビデオ、イラストレーション、テキストと複数ある。

    3Dアニメーションによる解剖図には、医師が患者さんにわかりやすいように、指でコメントや矢印を書き込むことができる(上写真)。

    最後に患者さんのメールアドレスを入力(上写真)して送信すれば、簡単にパーソナル学習コンテンツを患者さんに届けることができる。

    患者さんは医師からメールを受け(上写真)、メールに含まれているリンクをクリックし、Orca Healthのユーザー登録をすることで、医師が用意した自分に合った医療学習コンテンツを見ることができるようになる。

    一度ユーザー登録を完了すれば患者さんは、いつでもコンテンツを、ウェブサイトや、iPhone、iPadのOrca Healthアプリ上で見ることができる。

    患者さんは、iPhoneやiPadの画面に映し出される解剖図を、指でタッチして角度をかえたり、ズームすることができる。また、医師からのメモ書きがあれば、それも参照可能。

    3Dアニメーションを使った学習は、2Dよりも約2倍ほど学生のテスト成績を高めたという調査結果があるように、このアプリを使うことで患者さんは効率良く、自分の病気の知識を増やすことができると言える。

    Orca Healthの調査によると、同アプリを使った医師は、患者さんの再訪問率を15%高めれたそうだ。これは患者さんが、アプリを使うことで、気軽に自分の症状や治療方法をチェックし、理解を深めれたことで、医師への信頼度や診察への満足度が高まったからであろう。

  • Orca Healthは日本の医師も使うべきか?

    現状、同アプリは日本語対応していないため、患者さんが利用する上で混乱を招くおそれがある。よって本格的な導入はおすすめできないが、今後長い目で見ると、日本でも同じようなアプリが誕生していくだろう。もしくは、Orca Healthが日本語にも対応するはずだ。

    しかし医師は、それを待つのではなく、まずは自身で積極的に使ってみてほしい。少なくとも米国では14万人以上の医療関係従事者が登録しているアプリで、毎年利用者数は伸びているので、試す価値のあるアプリであると考える。

 
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