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第8回
医療機関のSNS利用で抑えておきたい
厚生労働省の「医療広告ガイドライン」7つのポイント

日本の医療事業者が広告やホームページで発信するときには、まず厚生労働省のガイドラインを遵守する必要がある。
今回はガイドラインでどのようなことが定められているかについておさらいする。

  • (出典:Photo Pin)

    当ブログではこれまで、一般的なSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の発信方法や発信すべき内容について、実体験を元に紹介してきた。

    米国では医薬品や医療機器を取り扱う企業でもSNSに関わる予算を増やしつつある、という調査結果が出ているように、今後企業によるSNS利用は医療業界でますます増えていくはずだ。

    しかし、国内外で、モラルやルールを逸脱した内容の発信が社会的な問題となり、結果として企業にダメージを与えた例も数多くある。そこで今回は少し趣向を変えて、何を発信すべきかではなく、何を発信すべきではないのかという観点からSNSのありようについて考えてみたいと思う。

    日本の医療関係者が、SNSをはじめとしたネットでの発信を行う上では、厚生労働省が定めた医療法に基づく広告規制や、広告やサイトでの発信についてまとめられた「医療広告ガイドライン」と「医療機関ホームページガイドライン」に基づいた発信を行う必要がある。

    今回は、この2つのガイドラインの成り立ちと、日本の医療機関の広告やサイト運営を行う上で特に注目すべきポイントを7つまとめてみた。

  • ガイドラインが生まれた背景

    (出典:厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」)

    「医療広告ガイドライン」は2007年の医療法改正時に定められた。それまでは患者さんの利用者保護の観点から医療関係者に関する広告は制限されてきたのが、患者さんが病状にあった適切な医療機関を選択できるようにとの配慮から、客観性や正確性を確保しているものに限って広告を認めたのである。

    この時には、ネット上の広告は該当しないものとして除外された。ウェブサイトとは利用者が自分の意思でアクセスするものであり、広告とは性質が異なるものと判断されたことが判断の背景にある。

    しかしその後、美容医療などの自由診療が掲載しているサイトの記載内容と、実際の受信時の説明や対応とが大きくかけはなれているというトラブルが続出し、全国の消費生活センターに苦情や相談の声が寄せられた。

    その結果、サイトに掲載されている不適切な内容、実態と異なる内容を掲載している医療機関に注意を喚起すべく「医療機関ホームページガイドライン」が定められることとなる。

    以来、医療機関のホームページはそれまでのように、各々の判断によって全く自由に作成することはできず、ガイドラインを遵守する必要が生じたのである。

  • ガイドラインにある「NG事項」で注意すべき7つのこと

    (出典:Photo Pin)

    ガイドラインの記載内容を大まかに並べてみると、比較広告、誇大広告、客観的事実であることを証明できない内容の広告、公序良俗に反する内容の広告の掲載の禁止といった内容が挙げられる。

    多忙な医療関係者は、サイトやSNSなどを自分たちで作成するよりも専門家に任せた方がよいと判断し、作成を外部サービスに依頼することもあるだろう。

    その時に医療広告規制やガイドラインを理解している業者であるかどうかを判断するためにも、禁止事項について確認しておきたいところだ。ここでは主な禁止事項の概略について簡単に掲載してみよう。

    1. 治療効果を示す写真は掲載できない

    「医療機関ホームページガイドライン」にて掲載すべきでない事項として第一に挙げられているのが、虚偽あるいは客観的な事実であると証明できない内容である。

    もっとも分かりやすい例が「加工・修正した術前術後」の写真の掲載だろう。「医療広告ガイドライン」によると加工や修正に関わらず「治療の効果」自体が宣伝目的での掲載は禁止項目となっており、手術前の写真、手術後の写真、イラストなどの表現も禁止と、かなり厳格に定められている。

    2. 客観的な事実であることを証明できない書き方をしない

    客観的な事実であることを証明できないケースも禁止されている。ガイドラインには、禁止事項の例として、手術の絶対的な安全を保証する表現が虚偽にわたるものに該当すると書かれている。

    また、治療後の定期的な処置が必要であるにも関わらず、「1日で全ての治療が終了します」という表現も虚偽にわたるものとのこと。

    手術の概要をなるべく簡易的に説明したとき、必ず完治すると解釈される危険のある表現になりやすいので、注意を払いたい事項のひとつだ。

    (出典:Photo Pin)

    3. 科学的に根拠のないデータを表記しない

    科学的根拠の乏しい情報で、症状のリスク、特定の手術の処置の有効性やリスクの強調することも慎むべきであるとされている。

    これは、特定の治療法を貶め、医療事業者自身が薦めたい治療に誘導するなどの行為が多く見られたために作られた項目だ。

    患者さんや読者にある病状や手術に関するリスクを喚起するときには、その根拠となる情報源を引用、参照するなどして明記しておくことが望ましいだろう。

    4. 「この分野では日本有数の実績を誇る」といった表現をしない

    ガイドラインでは、他の医療機関よりも優良であることを示すことも「比較広告」として禁じられている。例えば「施設の規模が日本一」「最高レベルの医療を提供」といった表現も、たとえそれが事実であったとしても、患者さんを誤認させるものであるとして掲載すべきではないという。

    上記の項目を適用すれば、一年のうちに数件しか手術を行わなかった病院も、数百件の手術実績があった病院も同じ宣伝しかできないことになる。診療実績の説明の取り決めについては、何らかの改善案が待たれるところだ。

    5. 著名人との関連性の強調に気をつける

    著名人との関連性も禁止項目に含まれている。ガイドラインには「著名人も○○医師を推薦しています」「芸能プロダクションと提携しています」の表記はNG、と定めてある。

    これは芸能人が通院していることが客観的に治療が優れている証拠にはならない、という理由による。

    6. 期間限定の割引キャンペーンの表記に気をつける

    ガイドラインでは、早急な受診を過度にあおる表現または費用の過度な強調も禁止、とある。分かりやすい例として「ただいまキャンペーンを実施中」「期間限定で50%オフ」などの表記がある。「著名人の関係性の強調」と並んで、自由医療の方々に気を付けていただきたい項目だ。

    7. 体験談の表記に気をつける

    医療機関にとって便益を与える体験談の強調も禁じられている。この項目は解釈が難しいのだが、体験談そのものを禁じているのではなく、「良いアンケートのみ」を意図的に取捨選択しない限りは問題ないようだ。

    もっとも、「治療効果」について喧伝するものであるかなど、他の項目に抵触しないかについては注意する必要があるだろう。

  • 日本のガイドラインは米国よりも遅れている

    医療に限らず、SNSやスマートデバイスの情報機器に関しては、ガイドラインやポリシーの整備が遅れているのが現状だ。

    今回ご紹介したガイドラインについても、SNSやブログで発信する情報が、規制の適用範囲内にあるかどうかは明確な定義は行われていない。

    また、You Tubeでの患者さんによるインタビュー動画など、扱いをどのように適用すべきか線引きが難しいという課題も残されている。

    米国では2013年3月に、オンライン広告に関するガイドライン「Dot Com Disclosures」の改定案が発表され、スマートデバイス向けの広告やSNSマーケティングの普及に即した内容が盛り込まれることとなった。日本でもガイドラインの改定・整備が待たれるところだ。

 
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