この画面は上記「登録」か「不要」をご選択いただければ元のページに戻ります。
設定変更の場合は、画面上部の「ご興味のある領域選択」メニューをご利用ください。
近年、いわゆる「体内時計」に注目が集まっています。
ヒトの生理活動の多くが体内時計の影響を受けているだけでなく、現代人の生活習慣の変化に伴う体内時計の変調が、
体調に悪影響を及ぼすことも知られるようになってきました。
体内時計が刻む生体リズムはさまざまな疾患の症状発現にも影響しますが、それは鼻疾患も例外ではありません。
本コラムでは、生体リズムが鼻に及ぼす影響についてご紹介していきます。
睡眠・覚醒や体温、血圧、ホルモンの分泌などヒトの生理活動は、約24時間周期のサーカディアンリズム(circadian rhythm;概日リズム)により制御されています。サーカディアンリズムはいわゆる体内時計と呼ばれるものであり、2017年にはHallらがサーカディアンリズムを制御する分子メカニズムの発見でノーベル生理学・医学賞を受賞するなど、研究が進んでいます。
その一方、ヒトはサーカディアンリズムとは異なるさまざまなリズムの影響も受けています。本コラムではヒトを取り巻くさまざまな生体リズムについて紹介するとともに、アレルギー性鼻炎の症状発現や睡眠にも関わる生体リズムの仕組み、それをターゲットにした治療などについても紹介します。第1回では、ヒトを取り巻くさまざまな生体リズムや鼻との関わりについて見ていきたいと思います。
ヒトのサーカディアンリズムは現在、24時間10分程度ということが明らかになっています1)。ヒトは光(昼・夜)、社会的因子(学校・行事)、環境因子(温度・湿度・騒音・振動)、食事、身体活動などに同調して、24時間で睡眠と覚醒の周期を繰り返します2)。
ヒトの生理活動はこの24時間周期のリズムに則っています。例えば、火傷をした患者のデータを分析したところ、昼間に受傷した患者は、夜間に受傷した患者と比べて患者よりも治癒が60%早く、その背景にはアクチンの作用にサーカディアンリズムが関与していることが示唆されています3)。変わったところでは、英国で4年間に渡りtwitterのつぶやきを分析した検討において、週末、平日にかかわらず、「怒りの感情」は午前中が最小で、夕方から早朝にかけて大きくなるパターンが示されました4)。耳鼻咽喉科領域では、アレルギー性鼻炎症状が早朝に悪化する「モーニングアタック」もサーカディアンリズムの影響下にあります5)。
このように、サーカディアンリズムはヒトの生理現象や病態と大きく関わっていますが、一般的には馴染みがないものの、それ以外にも生体にはさまざまなリズムが備わっています(表)。24時間より長いリズムはインフラディアンリズム(infradian rhythm;長日リズム)と呼ばれ、ヒトの性周期(約28日)、冬眠や鳥類の繁殖リズムなどが挙げられます2,6)。一方、サーカディアンリズムより短い周期のリズムはウルトラディアンリズム(ultradian rhythm;縮日リズム)と呼ばれます2,6)。
ウルトラディアンリズムの例として挙げられるのは、心臓の拍動周期(約1秒)、レム睡眠とノンレム睡眠の周期(90分)、細胞分裂(2~20時間)などです6)。左右の鼻粘膜が数時間ごとに腫脹と収縮を交換するネーザルサイクル(nasal cycle)もウルトラディアンリズムの1つに数えられます7)。
バイオリズム | 時間 | 主な例 |
ウルトラディアンリズム (縮日リズム) |
24時間未満 | ホタルの発光周期、心臓の拍動周期、レム睡眠とノンレム睡眠の周期、ネーザルサイクルなど |
サーカディアンリズム (概日リズム) |
約24時間 | 睡眠と覚醒のリズム、メラトニンなどのホルモン分泌のリズム、体温のリズムなど |
インフラディアンリズム (長日リズム) |
24時間以上 | ヒトの性周期、冬眠や鳥類の繁殖リズムなど |
高橋真由美. ファルマシア 47(7): 654-658, 2011などを参考に作成
ネーザルサイクルはヒトだけではなく、ラットやウサギ、イヌ、ネコなど他の哺乳類にも見られます8)。ヒトの場合、必ずしも全員に現れることはなく、70%程度の人に存在します9)。その生理的意義ははっきりしていませんが、鼻粘膜の血管が自律神経系によって制御されて起こっていると考えられています。左右の鼻腔の優位性が入れ替わる周期については、2~3時間という報告が多いようです7,9,10)。
イスラエルの研究チームが健康人33例(女性18例、平均30.3歳)を対象に、鼻腔カニューレと圧力センサーを組み合わせた記録装置を用いてネーザルサイクルを観察した研究によると、ネーザルサイクルの周期は、覚醒時が平均2.02時間、睡眠時が平均4.5時間と覚醒時に有意に短くなっていました(p<0.0001、paired t-test)10)。このように、ネーザルサイクルと睡眠・覚醒のサイクル(サーカディアンリズム)は強く関連していることが示されます。
生体にはさまざまな周期のリズムがあり、鼻においてもウルトラディアンリズムとサーカディアンリズムの影響を受け、またそれぞれが密接に関わっていることがわかります。第2回では、サーカディアンリズムにスポットを当て、そのメカニズムや乱れが鼻疾患に与える影響とその原因などについてご紹介します。
SAJP.DLE.19.02.0316
※ご興味のある領域を選択ください。ご希望内容を中心に表示いたします。
この画面は上記「登録」か「不要」をご選択いただければ元のページに戻ります。
設定変更の場合は、画面上部の「ご興味のある領域選択」メニューをご利用ください。