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ALS海外文献

臨床・診断

筋萎縮性側索硬化症:80歳以上の集団における発症率は予測を上回る Amyotrophic lateral sclerosis: A higher than expected incidence in people over 80 years of age.

Aragones JM, et al.
Amyotroph Lateral Scler Frontotemporal Degener. 2016: 1-6.

抄録・解説 LTTプログラム委員 郭 伸先生

背景

筋萎縮性側策硬化症(ALS)の発症率は加齢とともに増加し、70歳前後でピークを迎え、80歳以降では減少するとされている。高齢者では併存症や専門施設への入所などによってALSは過少診断されている可能性があり、統一した見解は得られていない。そこで本研究では、スペインのカタルーニャ州の限定された地域内において、ALS患者の年齢別の発症率および臨床的/疫学的特徴を前向きに検討した。

方法

本研究は2004年1月1日から2013年12月31日までに、カタルーニャ州のオソナ地区で実施した。対象は、18歳以上の住民で、少なくとも診断の2年前に同地域に居住していたALS患者とした。Vic University Hospitalは試験実施地域の全住民をカバーするNational Health Systemの基幹病院である。主なデータソースは、ALS患者の施設前向き登録とし、ALS患者データを完全なものとするために、同地域で登録された全神経内科医およびリハビリテーション専門医、高齢者専門施設、一般臨床医にもALS患者のスクリーニングを依頼した。ALSの診断は改訂El Escorial診断基準に基づき実施した。連続変数間の関連性はχ2検定およびYates検定、連続変数はStudent's t検定を用いて解析した。生存解析はKaplan-Meier法を用いた。

結果

新規に診断されたALS患者は41例(男性20例、女性21例)で、年間粗発症率は2.74例/10万人・年(95%信頼区間:1.90-3.59)であった。2013年12月31日時点の生存患者は13例で、同時点での有病率は8.38例/10万人・年であった。症状発症時の平均年齢は76.0歳、症状の発症は球型が36.6%を占めた。発症から診断までの平均期間は10.74ヵ月で、80歳以上は1.58ヵ月、80歳未満は10.81ヵ月であった(p=0.75)。改訂El Escorial診断基準で確定診断(definite)できた患者は90%で、10%はALS疑い例(probable)であった。ALS発症率は、加齢とともに増加し、10万人・年あたりの発症率は、30歳未満が0例、30~59歳が0.30例、60~69歳が4.73例、70~79歳が18.22例、80歳以上が17.99例で、80歳以上の群でのALS発症率の有意な低下は認められなかった(p=0.75)。超高齢者の患者比率は80歳以上が29.3%、85歳以上が9.8%であった。Kaplan-Meier法による症状発症からの生存期間中央値は26.62ヵ月、80歳未満は30.91ヵ月、80歳以上は16.83ヵ月であった(p=0.0009)。上肢型と球型の生存期間に差はなかった(P=0.88)。

考察

本研究では、ALS発症率は加齢とともに継続して増加していることが示された。欧州3ヵ国で実施されたレジストリのメタ解析からは、ALSの発症率は60代の終わりから70代のはじめにかけてピークを迎え、80歳以降は低下するとされている。このパターンは欧州の他のレジストリの結果と一致していた。しかし、大規模集団の解析では、超高齢者集団のALSが見逃されやすく、発症率は不正確で、過小診断となる可能性があった。本研究は、人口変動が少ない限定的な地域で10年以上にわたり実施された前向き疫学研究である。集団サイズが小さいことが弱点であるが、地域を明確に限定し、人口の変動が少なく、医療連携を緊密に行ったことで、ALS患者の詳細を把握できたと考えている。本研究結果と同じく、フランスの研究でも加齢に伴うALS発症率の増加が示されている。本研究の結果と総合すると、加齢に伴うALS発症率の増加は、欧米各国における高齢化を反映しているものと考えられる。

SAJP.RIL.19.08.2147

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