文字サイズ

ALS海外文献

臨床・診断

筋萎縮性側索硬化症患者における脳脊髄液中のシスタチンC値の評価 Measurement of cystatin C levels in the cerebrospinal fluid of patients with amyotrophic lateral sclerosis.

Ren Y, et al.
Int J Clin Exp Pathol. 2015; 8: 5419-5426.

抄録・解説 LTTプログラム委員 尾野精一先生

背景

シスタチンC(Cys-C)は、孤発性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者において運動ニューロンの細胞死と関連することが報告されているが、ALSの病態形成への関与を示す直接的なエビデンスは示されていない。また、ALS患者のCys-C値は健康人や他の神経疾患患者に比べて低いとの報告がある一方で、変わらないとする報告もある。そこで本研究では、中国人ALS患者の脳脊髄液(CSF)中および血清中のCys-C値を測定し、ALS診断のバイオマーカーとしての有用性を後ろ向きに検討した。

方法

2012年3月から2014年5月までに、中国人民解放軍総合病院神経内科の外来診療所に入院したALS患者92例(男性59例、平均年齢52.04歳)を対象とした。また、対照群として多系統萎縮症(MSA)患者43例(男性34例、平均年齢59.88歳)、健康人(HC)48例(男性28例、平均年齢40.42歳)を設定した。CSFおよび血清試料を採取し、Immunoturbidimetric assay法によりCys-C値を測定した。Cys-C値と発症時年齢、発症部位、症状、罹病期間、改訂ALS機能評価スケール(ALSFRS-R)スコア、努力性肺活量(FVC)、ALS疾患進行率など、各臨床指標との相関性を検討した。ALSFRS-Rは入院後24時間以内に神経科医が評価した。各群のCSF中および血清中のCys-C値は一般化線形モデルを用いて推定した。Cys-C値と臨床指標との関連性は偏相関分析を用いて解析した。発症型別のCys-C値の比較はone-way ANOVAで有意差検定を行った後、Tukey's法によりpost hoc対比較を行った。Cys-C値によるALS診断能はROC解析を用いて評価した。

結果

CSF中のCys-C値はALS群4.17mg/L、HC群4.62mg/L、MSA群4.10mg/Lと差はなく、ALS患者におけるCSF中のCys-C値と各臨床指標との相関性も認められなかった。一方、血清中のCys-C値はALS群1.03mg/L、HC群1.01mg/L、MSA群1.07mg/Lと差はなかったが、ALS患者血清中のCys-C値とALSFRS-Rスコア(r=-0.355、p=0.007)または発症部位(r=0.274、p=0.041)との間に有意な相関性が認められた。ALS患者を発症型別に上肢型(48例)、球型(14例)、下肢型(30例)に分類したところ、CSF中のCys-C値に差は認められなかったが、血清中のCys-C値は下肢型に比べて上肢型で有意に低かった(p=0.040)。ALS診断能のROC解析では、CSF中Cys-C値の血中濃度‐時間曲線下面積(AUC)は0.506、血清中Cys-C値のAUCは0.538であった。

考察

Immunoturbidimetric assay法は、自動およびワンステップでのCys-C値測定が可能で、再現性が高く簡便な手法である。本研究では、ALS患者と対照群との間にCSF中および血清中のCys-C値に群間差は認められなかった。しかし、血清中Cys-C値については、ALSFRS-Rスコアとの間に有意な相関性が認められ、ALS重症度の予測因子として有用である可能性が示された。また、血清中Cys-C値はある特定のALS病型の予測マーカーとなる可能性も示された。ROC解析によってCys-C値によるALS診断能を評価したが、MSA群、HC群との鑑別ができなかっただけでなく、CSF中および血清中のCys-C値によるALS診断能は低いことが明らかになった。したがって、Immunoturbidimetric assay法で測定したCSF中または血清中Cys-C値はALSのバイオマーカーとして相応しくないと思われる。

SAJP.RIL.19.08.2147