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ALS海外文献

臨床・診断

筋萎縮性側索硬化症の補足診断ツールとしての筋超音波検査 Muscle ultrasonography as an additional diagnostic tool for the diagnosis of amyotrophic lateral sclerosis.

Grimm A, Prell T, Décard BF, Schumacher U, Witte OW, Axer H, Grosskreutz J.
Clin Neurophysiol. 2015; 126: 820-827.

抄録・解説 LTTプログラム委員 佐々木彰一先生

背景

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の早期診断には電気生理学的検査が不可欠である。筋電図検査(EMG)における線維自発電位(fibrillation potential:Fib)や陽性鋭波(positive sharp wave:PSW)の異常安静時活動は、下位運動ニューロン(LMN)の脱神経所見として有用である。さらにAwaji基準では線維束性収縮(fasciculation)も神経原性の所見として採用され、これによりALS診断の偽陽性率を上げることなく感度を上げることに成功している。しかし、日常診療の定例検査としては、EMGは侵襲的であり、痛みを伴い、時間もかかる。一方、近年では、これらの問題がない筋超音波検査(MUS)も精度が上がり、神経筋疾患の診断に有用なツールとして注目されている。本研究では、ALSおよびその他の神経筋疾患(ALS類似疾患)の診断におけるMUSとEMGの結果を比較し、線維束性収縮や線維性収縮(fibrillation)の検出にMUSが有用であるかを検討した。

方法

2011年10月~2013年3月にALSの疑いで著者施設を受診した80例を対象として、臨床検査のほかEMGおよびMUSを実施し、観察研究を行った。MUSの検査部位は、頸髄領域(上肢筋)では上腕二頭筋、前腕伸筋、腰仙髄領域(下肢筋)では大腿直筋、前脛骨筋、胸髄領域(体幹筋)では腹直筋、脳幹領域(球筋)では舌筋とした。EMGの検査部位は、頸髄領域では短母指外転筋、上腕二頭筋、腰仙髄領域では大腿直筋、前脛骨筋、胸髄領域では傍脊柱筋、脳幹領域では舌筋とした。観察研究には年齢をマッチさせた健康対照群30例も加え、患者と同じプロトコルでMUSを実施した。

結果

臨床的および電気生理学的検査の結果、ALS疑いの80例中60例がAwaji基準によりALSと診断された。他の20例はALS類似の別の神経筋疾患と診断された。MUSでは全391部位中292部位(74.7%)、EMGでは全335部位中182部位(54.3%)に線維束性収縮が検出された。ALS患者における線維束性収縮の検出率を両検査間で比較すると、共通の部位(上腕二頭筋、大腿直筋、前脛骨筋)156部位中、MUSでは137部位(87.9%)、EMGでは108部位(69.2%)であり、有意差が認められた(p<0.05、McNemar検定)。前腕伸筋を含め233部位中37部位では筋力低下が認められなかったが、このうち両検査に共通の32部位で線維束性収縮の検出率を比較すると、MUSが84.4%であったのに対しEMGが50%と、MUSのほうで検出率が高かった(p<0.001、McNemar検定)。一方、線維性収縮(または陽性鋭波)の検出率はEMGのほうが高く(p<0.05、McNemar検定)、両検査に共通の156部位中、MUSでは72部位(46.2%)、EMGでは99部位(63.5%)に検出された。舌筋における異常安静時活動の検出に関しては、MUSのほうが高感度であった(p<0.05、McNemar検定)。なお、ALS患者はALS類似疾患患者や健康対照群と比べ、臨床所見や電気生理学的所見にかかわらずMUSにおけるエコー輝度の増強が認められた(p<0.05、McNemar検定)。

考察

本研究では筋の線維束性収縮の検出において、MUSがEMGよりも感度に優れることが示唆された。線維束性収縮は健康者でも検出されうるが、筋の構造的変化を反映するエコー輝度の増強と組み合わせることによって、EMG所見と同様に信頼性の高いLMN障害の指標になると考えられる。筋力低下のない早期においてもMUSがEMGより線維束性収縮の検出に優れていたことが注目される。線維性収縮の検出ではまだ全般的にEMGに及ばないが、舌筋の検査では痛覚刺激のないMUSのほうが異常安静時活動(線維性収縮、線維束性収縮)の検出に優れることも示唆された。現在、ALSにおけるLMN障害を検出するゴールドスタンダードの検査はEMGであるが、侵襲性が高く、患者にとっては不快な検査である。EMGとMUSを組み合わせることによって、EMGの機会を減らしつつも診断の感度や特異度は維持したままLMN障害を評価できると期待される。

SAJP.RIL.19.08.2147