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ALS海外文献

臨床・診断

筋萎縮性側索硬化症患者の死亡場所 Place of death in patients with amyotrophic lateral sclerosis.

Escarrabill J, Vianello A, Farrero E, Ambrosino N, Martínez Llorens J, Vitacca M.
Rev Port Pneumol. 2014; 20: 188-193.

抄録・解説 LTTプログラム委員 岩崎泰雄先生

背景

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は短期間に進行する予後不良の疾患であり、治療について臨床医は悲観的であった。しかし近年、非侵襲的換気療法(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)や経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)、カフアシスト装置の導入などにより、患者の生活の質(quality of life:QOL)は向上し、生存期間も改善できるようになった。現在直面している問題の1つは、終末期ALS患者において複雑なニーズにいかに応えることができるかどうかである。ALSの経過は多様であるが、特に終末期には患者や介護者に大きな負担を強いる。そこで、患者のニーズに応えるケア計画をデザインできるようにするため、最期を自宅で迎える患者(在宅患者)と病院で迎える患者(病院患者)を比較し、特徴やケア方法の違いからALSの終末期ケアを改善できる要素を探った。

方法

イタリア北部およびスペイン・カタルーニャ地方の5施設において診療されていたALS患者の診療記録を後ろ向きに解析した。4病院は公的施設、1病院は民間施設で、いずれの病院でもALSの診療費は免除されていた。2010年、これらの病院で診療されていて過去12ヵ月以内に死亡したALS患者を、死亡場所にかかわらず全例同定し、年齢、性別、ALS発症型(球麻痺型、脊髄麻痺型)、発症からの経過時間、換気療法開始からの経過時間、換気療法の導入様式(選択的、急性)、生前最終週の換気様式(圧換気、量換気)、換気マスクの種類、換気時間、排痰方法、PEGの有無、薬剤使用(モルヒネ、ベンゾジアゼピン、その他)を変数として、在宅患者と病院患者を比較した。

結果

全77例(女性44.2%、平均年齢66.3±11.9歳)のALS死亡例が解析対象として同定され、このうち57%が在宅患者であった。在宅で死亡する確率はケアを受けていた病院と有意に関連しており(p=0.045、二項ロジスティック回帰)、病院で死亡する患者の割合は18.7~62.5%と幅があった。年齢、性別、ALS発症型、換気療法の導入様式は、死亡場所と有意な関連が認められなかった。発症からの経過時間は、在宅患者(41.12±29.04ヵ月)よりも病院患者(29.28±19.69ヵ月)のほうが有意に短かった(p=0.044、検定法記載なし)。生前最終週の換気療法に関しては、病院患者のほうがフェイスマスクの使用率が高かった(11.4%vs39.4%、p<0.005、検定法記載なし)。一方、在宅患者のほうが量換気の割合が高かった(35.0%vs13.3%、p<0.036、検定法記載なし)。侵襲的換気療法(tracheostomy intermittent positive pressure ventilation:TIPPV)の割合は全体で14%であったが、在宅患者と病院患者で有意差はなかった。また、薬剤使用も病院患者でオメプラゾールの使用率が高かったほかは有意差がなく、排痰処置の方法や機器、PEGの有無についても有意差がなかった。

考察

今回の後ろ向き研究において、ALS患者の死亡場所は、ケアを受ける病院、発症後の経過時間、および生前最終週の換気療法における換気マスクの種類と有意に関連していることが示された。解析対象の症例数や施設数が十分でないことから、結果の解釈には注意が必要であるが、自宅で死亡するALS患者の割合は病院により異なり、医療資源、主治医の考え方、地域の介護支援態勢が、最期を自宅で迎えるか、病院で迎えるかの意志決定に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。病院患者のほうが換気療法におけるフェイスマスクの使用率が高かったのは、それが急性呼吸不全の治療として使われた可能性や、フェイスマスクのほうが自宅でのケアが困難であることを示していると考えられる。ALSを診療する病院の状況は国によって、あるいは同じ国でも地域によって多様である。問題はALS患者がどこで最期を迎えるかではなく、その過程となる状況、すなわち各患者のニーズ

SAJP.RIL.19.08.2147

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