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ALS海外文献

臨床・診断

筋萎縮性側索硬化症患者における自己幹細胞移植の反応性を予測する間葉系間質細胞の生物学的マーカー Biological markers of mesenchymal stromal cells as predictors of response to autologous stem cell transplantation in patients with amyotrophic lateral sclerosis; an investigator-initiated trial and in vivo study.

Kim HY, Kim H, Oh KW, Oh SI, Koh SH, Baik W, Noh MY, Kim KS, Kim SH.
Stem Cells. 2014;32:2724-2731.

抄録・解説 LTTプログラム委員 郭 伸先生

背景

骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)は自己増殖能およびニューロンを含む多様な細胞への多分化能を有するほか、種々のサイトカインや成長因子を分泌し、神経系では新たなニューロンやシナプスの形成など、神経学的機能の改善につながる機構を活性化することが示唆されている。筋萎縮性側索硬化症(ALS)のin vitroおよびin vivoモデルでは、このBM-MSCが疾患進行を変えうることが示されており、臨床でもALS患者の脊髄に自己BM-MSCを移植する治療の安全性と実現可能性がすでに報告されている。韓国でもパイロットスタディに引き続きオープンラベルの単アーム試験が開始されたが、対照群の不在は治療効果を過大評価するおそれがあるとの批判から、主要評価項目がBM-MSC療法の効果を予測する生物学的マーカーの同定に変更された。中間解析では、それまで実際にBM-MSC療法を実施してもALS機能評価スケール(ALSFRS-R)でみた疾患進行が減速する例と変わらない例がみられたが、それを事前に予測できる生物学的マーカーがあれば臨床上重要である。

方法

2007年1月~2010年2月にALS患者45例を登録し、治療開始前の同意撤回および追跡不能例を除外して37例を解析対象とした。BM-MSC療法前3ヵ月間を導入期間としてALSFRS-Rの変化を測定し、BM-MSC療法後も初回治療から6ヵ月間、同スコアを追跡した。BM-MSC療法は施行1ヵ月前に患者骨髄を腸骨から採取のうえ、BM-MSCを分離培養し、1ヵ月の間隔を空けて2回、腰髄(L2-L3)へ髄腔内注射した。BM-MSC療法後にALSFRS-Rスコアが改善、またはBM-MSC療法後3ヵ月間の同スコアの低下速度が導入期間よりも減速した患者をレスポンダー、同スコアの低下速度に変化がなかったか、むしろ加速した患者をノンレスポンダーとし、それぞれ移植したBM-MSCの残存検体から神経栄養因子の検出を行った。また、両群から各1例を無作為に選び出し、それぞれの残存BM-MSCをALSモデルであるヒト変異型SOD1導入マウスの小脳延髄槽に移植した。

結果

レスポンダー群(19例)とノンレスポンダー群(18例)の背景因子やBM-MSC療法前の臨床所見に有意差は認められなかった。しかし、レスポンダー群ではBM-MSC療法後3ヵ月間のALSFRS-Rスコアの低下が有意に小さく(0.79±1.71 vs. 3.0±1.81、p<0.01、Mann-Whitney U test)、ALSの進行が緩和されたことが示唆された。レスポンダー群13例およびノンレスポンダー群8例の残存BM-MSCにおいて、神経栄養因子の発現をELISA法で検出したところ、レスポンダー群のBM-MSCでは、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)、angiogenin(ANG)、トランスフォーミング増殖因子β(transforming growth factor beta:TGF-β)の発現量が有意に多かった。これらの発現レベルはレスポンダー群で一貫して高かったことから、その違いがBM-MSC療法の効果に影響している可能性が示唆された。SOD1変異マウスへの移植実験でも、レスポンダー由来のBM-MSC移植によって運動機能低下の減速や寿命の延長が認められる一方、ノンレスポンダー由来のBM-MSC移植ではこうした効果が認められず、臨床試験の結果が確認された。

考察

今回の試験結果から、ALS患者に対する自己BM-MSC療法では、分離培養したBM-MSCにおける神経栄養因子(VEGF、ANG、TGF-β)の発現レベルが効果を予測する生物学的マーカーとなり、自己BM-MSC療法の適応例を同定するのに役立つ可能性が示唆された。ALS患者に対する幹細胞療法の効果発現機序についてはまだ十分に解明されていない。ただし、移植した細胞の長期定着は限られ、定着と治療効果に相関はないとする報告によれば、BM-MSCの効果には障害された組織への持続的移植ではなく、むしろ一時的な神経栄養因子の増強が関与している可能性がある。BM-MSC療法においても神経栄養因子が神経保護や運動機能の改善に重要な役割を果たしていることが示唆され、今後は移植する細胞の適切な用量や回数を確立するための研究が必要である。

SAJP.RIL.19.08.2147

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