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ALS海外文献

臨床・診断

フリーラジカルとミクロソームプロスタグランジンE合成酵素-1誘導PGE2産生の阻害によって、筋萎縮性側索硬化症マウスモデルにおける安全性と有効性が改善 Concurrent blockade of free radical and microsomal prostaglandin E synthase-1-mediated PGE2 production improves safety and efficacy in a mouse model of amyotrophic lateral sclerosi.

Shin JH, Lee YA, Lee JK, Lee YB, Cho W, Im DS, Lee JH, Yun BS, Springer JE, Gwag BJ.
J Neurochem. 2012;122:952-961. doi: 10.1111/j.1471-4159.2012.07771.x. Ep 2012 May 23.

抄録・解説 LTTプログラム委員 佐々木彰一先生

背景

フリーラジカルおよび炎症反応は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で生じる神経障害の主要な経路である。しかし、臨床試験においては、抗酸化剤でも非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)でも明らかな有効性は示されていない。
フリーラジカルおよびプロスタグランジンE2(PGE2)により誘導される炎症反応の双方を標的とするアプローチは、運動機能と生存率を相乗的に改善する可能性がある。本研究では、アスピリンの抗炎症作用と強力な抗酸化作用を併せ持つ薬剤が、この2つの機序による相加・相乗的な神経保護作用により、ALSの有効な治療薬となる可能性について検討した。著者らはアスピリンの誘導体の1つとして、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチルフェニル)-エチルアミノ安息香酸](AAD-2004)を合成した。

方法

動物実験では8週齢の変異SOD1G93A トランスジェニックマウスを使用し、AAD-2004を2.5mg/kg(経口投与、1日2回)、イブプロフェンを25mg/kg(腹腔内投与、1日2回)またはリルゾールを50mg/kg(餌に混合)投与して、運動機能評価と組織的検討をした。運動機能はロータロッドを使用して週2回評価し、ロータロッドテストで運動機能欠損を示した初日をALS発症日と定義した。死亡日については、体が完全な麻痺を示すか、ロータロッドを20秒以内に転がせなかった日とした。運動ニューロンの生存率は、腰髄全体(L1~L5)を40μm厚に切って10枚目ごとに0.5%クレシルバイオレットで染色し、区切った範囲内で残存している運動ニューロンを数えることで解析した。

結果

in vitro において、AAD-2004は50nMで強力なスピントラップ剤として、フリーラジカルを完全に除去した。また、リポポリサッカライドで処理したBV2細胞でのミクロソームPGE2合成酵素-1(mPGES-1)活性を230nMの50%阻害濃度(IC50)で阻害し、リコンビナントヒトmPGES-1蛋白活性を直接かつ濃度依存的に249nMのIC50で阻害した。SOD1G93A トランスジェニックALSモデルマウスでは、AAD-2004の投与によりフリーラジカル産生、PGE2産生、脊髄でのミクログリア活性の阻害が認められた。また、AAD-2004の投与によって、オートファゴソーム形成、軸索変性、運動ニューロン変性が減少し、リルゾールやイブプロフェンと比較して、著明に運動機能を改善し、生存率を上昇させた。ロータロッドテストでの運動機能欠損の発生は、対照群に比較してリルゾール群で12%、イブプロフェン群で15.6%、AAD-2004群で36%遅延した。また、生存期間も対照群に比較してリルゾール群で8.2%、イブプロフェン群で9.4%、AAD-2004群で21%延長した。AAD-2004のSOD1G93A マウスにおける最大効果濃度は2.5mg/kgであり、その400倍の1,000mg/kgを経口投与しても胃出血は生じなかった。

結論

フリーラジカルおよびmPGES-1誘導PGE2産生の双方を標的とするアプローチは、ALSだけでなく、アルツハイマー病やパーキンソン病など、他の神経変性疾患の治療においても有望と考えられる。

SAJP.RIL.19.08.2147