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ALS海外文献

臨床・診断

筋萎縮性側索硬化症に対するAwaji基準の有用性:前向き試験 Benefit of the Awaji diagnostic algorithm for amyotrophic lateral sclerosis: a prospective study.

Schrooten M, Smetcoren C, Robberecht W, Van Damme P.
Ann Neurol. 2011;70:79-83.

抄録・解説 LTTプログラム委員 郭 伸先生

目的

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の正確な早期診断は、患者の治療や臨床試験の組み入れにおいて重要である。後ろ向き試験において、Awaji基準(2006年)は現在使用されているEl Escorial改訂Airlie House診断基準(1998年)よりもALS早期診断に関する感度がよいと示唆されている。

方法

2008年1月~2010年4月に、ALSが疑われ、University Hospitals Leuven(ベルギー)の神経筋外来を受診した患者215例のうちALSと診断された患者200例を対象に、El Escorial改訂Airlie House診断基準とAwaji基準を前向きに比較した。各診断基準によるALSの診断確実性は、「definite」、「probable」、「suspected」、「nonclassifiable」に分類される。患者全例に、臨床診察と身体4部位(脳幹、頸髄、胸髄、腰仙髄)の針筋電図検査(EMG)を実施した。

結果

患者は全例EMGを1回以上、57例(28.5%)は2回以上実施した。臨床診察からEMGまでの期間は平均0.6±1.7ヵ月であり、患者の62例(31%)が疾患発症から平均2.1±1.0年後に死亡した。ALSと診断された200例中、初診時に「definite」または「probable」のALSと診断された患者の割合は、El Escorial改訂Airlie House診断基準、Awaji基準でそれぞれ66%および85%であった(p<5.6×10-17)。これは、一般的な臨床試験の組み入れ基準(「probable」以上のALS)に適合しない患者数を34%(68/200例)から15%(30/200例)に減少(50%超の減少)させることに相当する。El Escorial改訂Airlie House診断基準で初診時に「nonclassifiable」または「suspected」のALSに分類された患者68例のうち、後の診断で「probable」以上に分類された例は同診断基準では21例(30.9%)のみであったのに対し、Awaji基準では49例(72.1%)が「probable」以上に分類され、この49例中38例(55.9%)はAwaji基準の最初の評価ですでに「probable」以上に分類されていたものであった。El Escorial改訂Airlie House診断基準で最終的に「probable」以上に到達した21例中14例(66.7%)は、Awaji基準を用いた場合、6.6±4.1ヵ月早く診断されたことになる。Awaji基準を用いることにより、患者の25.7%でALSと診断される可能性が診断分類で1レベル以上高くなった。Awaji基準では、下位運動ニューロン変性の影響を受ける身体部位を判定する電気診断検査の変化を重要項目として新たに取り入れていることから、EMG陽性(進行中の運動ニューロン脱落を示す電気診断学的徴候)を示す身体部位数について両診断基準で比較した。その結果、Awaji基準では陽性部位数が有意に多く、患者の46.4%で陽性部位数がEl Escorial改訂Airlie House診断基準と比べて1つ以上増加した。なお、本試験では、Awaji基準の適用によりALSと誤診された例は認められなかった。

解釈

Awaji基準は、El Escorial改訂Airlie House診断基準と比べて感度が有意に優れ、ALSの偽陽性診断もなかったことから、より多くの患者でより早期にALSの診断が可能であることが示唆された。以上から、臨床試験の組み入れ基準にAwaji基準を使用することが推奨される。

SAJP.RIL.19.08.2147