文字サイズ

ALS海外文献

臨床・診断

筋萎縮性側索硬化症患者(ALS)/運動ニューロン疾患(MND)に対するリルゾールの効果 Riluzole for amyotrophic lateral sclerosis (ALS)/motor neuron disease (MND).

Miller RG, Mitchell JD, Moore DH.
Cochrane Database Syst Rev. 2012;14, 3: CD001447.

抄録・解説 LTTプログラム委員 尾野精一先生

背景および目的

リルゾールは筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の治療薬として、米国、オーストラリア、カナダおよび欧州各国など大部分の国で承認されているが、顕著な有効性が認められず、比較的高価な薬剤であることから、その有用性に関する議論が続いている。そこで、本レビューでは、生存期間の延長、生命維持のための気管切開および人工呼吸器導入の遅延に対するリルゾールの有効性を検討し、機能的健康に対するリルゾールの効果を評価することとした。

方法

ALSの成人患者を対象としたリルゾールのプラセボ対照無作為化比較試験について、Cochrane Neuromuscular Disease Group Specialized Register(2011年4月20日時点)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(2011、Issue 2)、MEDLINE(1966年1月~ 2011年4月)、EMBASE(1980年1月~2011年5月)より検索・抽出し、不足のデータに関しては論文著者、Aventis社(現・Sanofi社、リルゾール製造元)および当分野の専門家に問い合わせを行った。抽出した無作為化比較試験から得られたエビデンスについて、メタアナリシスにより系統的レビューを行った。

結果

検索により、①Bensimonらによる1994年の試験(症例数155例)、②Lacomblezらによる1996年の試験(同959例)、③Bensimon らによる2002年の試験(同168例)、④Yanagisawa らによる1997年の試験(同195例)の4試験を抽出し、このうち気管切開なしの生存期間について完全なデータが得られていた試験①~③を本レビューに採用した。これら3試験の合計症例数は、リルゾール治療群876例、プラセボ治療群406例であった。この解析により、リルゾール100mg/日投与群において、死亡または気管切開のハザード比は0.84(95%信頼区間:0.698~0.997、p=0.046、対プラセボ群)と有意なベネフィットが得られ、1年生存率は9%の向上(プラセボ群49%に対し、リルゾール群58%)、生存期間中央値は3ヵ月の延長(プラセボ群11.8ヵ月に対し、リルゾール群14.8ヵ月)が認められた。なお、リルゾール100mg/日投与により、球機能および肢機能にはわずかな改善がみられたが、筋力には変化はみられなかった。血清中アラニントランスフェラーゼは、リルゾール群でプラセボ群に対し約3倍に増加した[リスク比2.62(95%信頼区間:1.59~4.31)]。

結論

リルゾール100mg/日の投与により、発症5年未満、努力性肺活量60%超、75歳未満のALS患者において、生存期間中央値を2~3ヵ月延長できる可能性がある。今後のさらなる研究で、より早期に投与した場合、あるいは、より高齢で進行した長期罹病患者に投与した場合においても、同様のベネフィットが得られるかどうかを検討することが必要である。

参考文献

1) 中野今治:筋萎縮性側索硬化症の原因と新しい治療法. 医学のあゆみ 別冊神経疾患 state of arts Ver. 1: 496-499, 1999
2) 中原保裕:筋萎縮性側索硬化症治療剤リルゾール. 難病と在宅ケア 6: 40-41, 2001
3) 山室蕗子, 近藤元三ら:病棟薬剤師に聞く脳神経疾患ナースのためのくすりの知識 第91回 リルゾール••••••筋萎縮性側索硬化症治療薬. ブレイナーシング 27: 633-638, 2011

SAJP.RIL.19.08.2147