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臨床・診断

筋萎縮性側索硬化症および前頭側頭葉変性症:TDP-43 proteinopathyのスペクトラム Amyotrophic lateral sclerosis and frontotemporal lobar degeneration: a spectrum of TDP-43 proteinopathies.

Geser F, Lee VM, Trojanowski JQ.
Neuropathology. 2010;30(2):103-112.

抄録・解説 LTTプログラム委員 尾野精一先生

要旨

TDP-43は、414個のアミノ酸からなる核蛋白で、染色体1番のTARDBP遺伝子によりコード化されている。TARDBP遺伝子は最初、ヒト免疫不全ウイルスtype 1のtransactive responsive DNA配列に結合する43 kDの蛋白をコードする遺伝子として同定された。TDP-43は多くの組織に普遍的に存在する高度に保存された蛋白で、中枢神経系(CNS)ではニューロンやグリア細胞に存在し、細胞質にはわずかに存在する。 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で相対分子量43 kDの位置に検出されたtransactive response DNA-binding protein(TDP-43)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびユビキチン陽性封入体を有する前頭側頭葉変性症(FTLD-U、現在はFTLD-TDPと称される)の主たる疾患蛋白である。 TDP-43の発見により、これらの疾患が多系統の疾患(multi-system disease)であるとの考えが確固たるものとなり、その結果、ALSから認知機能障害/認知症を伴うALS、運動ニューロン疾患を伴わないFTLD(FTLD-TDP)、または運動ニューロン疾患を伴うFTLD(FTLD-MND)に及ぶ多様な臨床および病理学的疾患単位から構成される疾患スペクトラムとしてTDP-43 proteinopathy(蛋白症)という概念に至った。 これらの疾患は、TDP-43と関連した類似の発症機序を共有する広範な疾患連続体の線上にある。TDP-43 proteinopathy が、α-synucleinopathyやtaunopathyと類似した新たな神経変性疾患の疾患群であるとの概念展開において注目される。

結論

TDP-43 proteinopathyは、α-synucleinopathyやtaunopathyと同類の新たな神経変性疾患群である。しかしながら、神経変性疾患におけるTDP-43封入体の明確な病因的役割はまだ確立していない。TDP-43の広範な分布が、CNSの広範な障害を規定し、ニューロンおよびグリア細胞の異なる集団が、脳や脊髄全体にわたって、また疾患経過のなかでは時間によって異なる脆弱性を示す。FTLD-TDPでは主に前頭側頭葉変性パターンが、またFTLD-MNDでは主に錐体路変性パターンが現れるという考えはさらに進んで、TDP-43 proteinopathyは、TDP-43に関連した類似した疾患機序を共有する多系統に及ぶ単一疾患の広範な臨床病理学的スペクトラムを表すものという概念に至ると考えられる。

参考文献

1) 吉田眞理:ALS/FTLDのTDP-43による再評価. 神経内科 68(6):548-557, 2008
2) 新井哲明ら:FTLD/ALSにおけるTDP-43蓄積. 神経内科 68(6):540-547, 2008

SAJP.RIL.19.08.2147