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ALS海外文献

リルゾール

リルゾール長期使用が孤発性筋萎縮性側索硬化症患者の予後を改善しうる:中国における実地臨床のコホート研究 MicroRNAs-424 and 206 are potential prognostic markers in spinal onset amyotrophic lateral sclerosis.

Long-Term Use of Riluzole Could Improve the Prognosis of Sporadic Amyotrophic Lateral Sclerosis Patients: A Real-World Cohort Study in China.
Front Aging Neurosci. 2016; 8: 246.

抄録・解説 LTTプログラム委員 尾野精一先生

背景

リルゾールは筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の予後改善に有用とされるが、中国ではその使用に保険が適用されず、孤発性ALS患者のうちリルゾール使用例はおよそ3分の1に過ぎない。臨床試験では一般にALSの病型や重症度が限定されるが、実地臨床の患者像は幅広く、その中でリルゾールの有効性を示すことは、患者カウンセリングや臨床試験のデザインを改善するうえでも重要である。そこで、北京大学第三病院神経内科の実地臨床におけるALS患者を前向きに追跡する8年間のコホート研究を実施し、リルゾール長期使用の有効性を検証した。

方法

2007年1月から2013年12月までの間に当施設のクリニックを受診した全ALS患者を組み入れ対象とし、同意の得られた患者を3ヵ月ごとに追跡した。発症部位や臨床所見によって、病型を四肢麻痺発症型、球麻痺発症型、フレイル・アーム症候群(FAS)、進行性筋萎縮症(PMA)、原発性側索硬化症(PLS)に分類し、ALS機能評価スケール(FRS)やその改訂版(FRS-R)のスコアを含む臨床データを収集するとともに、死亡または気管切開人工呼吸の導入を主要アウトカムとして追跡した。追跡は2015年1月31日時点で打ち切りとした。リルゾールについては、50mg 1日2回を2週間を超えて使用した場合に「リルゾール使用」があったと定義し、100mgを1日規定用量(defined daily dose:DDD)として、処方量の合計から累積DDD(cDDD)を割り出し、使用期間を推定した。なお、連続変数の比較にはone-way ANOVA、Student's t検定、カテゴリー変数の比較にはχ2検定、Fisher's exact検定、Kruskal-Wallis one-way ANOVA by ranksまたはMann-Whitney U検定を用い、Kaplan-Meier法による生存解析ではlog-rank検定およびCox回帰分析を加えた。

結果

対象期間中に孤発性ALS患者1,540例が同定され、このうち415例(26.9%)がリルゾール使用群、1,125例(73.1%)が対照群として分類された。両群のベースライン因子を比較すると、リルゾール使用群のほうが発症年齢が高い(p=0.016)、発症から診断までの期間が短い(p<0.0005)、body mass index(BMI)が高い(p<0.0005)、FRSやFRS-Rのスコアが高い(いずれもp<0.0005)ことがわかった。2015年1月31日までに662例が主要アウトカムに達し、このうち157例がリルゾール使用群であった。Kaplan-Meier解析の結果、主要アウトカムまでの生存期間中央値は、リルゾール使用群67.0ヵ月、対照群64.0ヵ月であり、両群間に有意差は認められなかった(p=0.780)。ただし、リルゾール使用群をcDDDにより3群(第1四分位未満群、第1~3四分位群、第3四分位超群)に分けて解析すると、年齢、性別、BMI、発症から診断までの期間、病型、診察時のAirlie House診断基準区分、居住地(都市or地方)、FRS、喫煙またはアルコール乱用歴、有毒ガスまたは殺虫剤との接触歴を補正後も、第3四分位超群[cDDD≧168(16,800mg)]は対照群に比べて生存期間が有意に改善していた[補正ハザード比0.488(95%信頼区間0.320-0.746)、p=0.001]。高齢発症、男性、低BMI、発症から診断まで短期、地方在住、FRS低値は、いずれも予後不良と関連していた。

考察

今回の検討から中国では、ALS患者が高齢、高BMI、発症から診断まで短期、FRSやFRS-Rが高値であるほど、リルゾールを使用している状況が明らかになった。リルゾールとALSの予後に関しては、従来、その1日用量や累積用量が考慮されることはほとんどなかった。また、発症年齢や重症度が不均一な実地臨床の患者コホートでは、リルゾールの予後改善効果が得られにくかった。しかし、今回の検討から、リルゾールは短期使用ではALS患者の生命予後にほとんど影響が見られないものの、cDDD≧168(16,800mg)すなわち約6ヵ月以上の長期使用によって、実地臨床の患者コホートにおいても生命予後改善との関連が認められた。

SAJP.RIL.19.08.2147

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