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ALS海外文献

基礎

ゲノムワイド関連解析による筋萎縮性側索硬化症の新規リスクバリアントと遺伝子構造の同定 Genome-wide association analyses identify new risk variants and the genetic architecture of amyotrophic lateral sclerosis.

van Rheenen W, et al.
Nat Genet. 2016; 48(9) :1043-1048.

抄録・解説 LTTプログラム委員 郭 伸先生

背景

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、双生児研究より遺伝率が65%と推定され、患者の5~10%が家族歴陽性であることから、発症における遺伝的要素の重要性が示唆されている。ゲノムワイド関連研究(GWAS)によりC9ORF72 遺伝子の非翻訳領域における6塩基反復配列の異常伸長がALSリスク関連変異として初めて同定された後、さらに2つのリスク関連遺伝子座が同定されたが、ALSの遺伝性については大部分が未解明のままである。本研究では、新規のALSリスク関連遺伝子座を同定し、ALS発症に関わる遺伝子構造を解明するため、新規ジェノタイピングデータと既存のGWAS報告の統合解析を行った。

方法

新規にALS患者7,763例と対照4,669例のジェノタイピングを行い、既存のGWASデータと統合し、合計41コホートから14,791例のALS患者群と26,898例の対照群のデータを得た。そのうち、解析に使用可能と判定されたのはALS患者12,577例、対照23,475例だった。一方、欠測値補完用に、欠測値の少ないオランダのALS患者群と対照群から、18,741,510の一塩基バリアントを含む参照パネルを作成し、さらに1,000人ゲノムプロジェクトパネルも統合した。解析可能とされた8,697,640バリアントを対象にALSリスクについてロジスティック回帰分析を行い、次いで逆分散法による効果固定モデル解析と線形混合モデル解析を実施した。また、独立にALS患者2,579例と対照2,767例を対象に追試を行った。

結果

効果固定モデル解析において、ALSリスク関連遺伝子座として既知のC9ORF72 、UNC13A 、SARM1 に加え、新規にC21ORF2 が有意な遺伝子座として同定された(genome-wide significance: p<5×10-8)。線形混合モデル解析では、これら4つに加え、MOBP 、SCFD1 、長鎖ノンコーディングRNAが有意な遺伝子座として同定されたが、追試の結果から長鎖ノンコーディングRNAは関連なしと判定された。C21ORF2 は、非同義一塩基多型(SNP)が低頻度であることから、ALSリスクに直接関わっていると思われる。脳やその他組織を対象にcis 発現量的形質遺伝子座位(cis -eQTL)解析を行ったところ、C9ORF72 、UNC13A 、SARM1 、MOBP 、SCFD1 遺伝子座においてeQTL効果をもつSNPが認められた。多遺伝子リスクスコアを作成し、複数の手法によりSNPに基づいた遺伝率を算出したところ、7.9~8.5%と推定された。また、有意と判定された遺伝子座だけでは遺伝率の0.2%しか説明できず、有意水準未満の低頻度SNPの寄与が大きいことが示唆された。

考察

本研究により、ALSの新規リスク関連遺伝子座が発見され、ALSが多遺伝子による複雑な遺伝子構造を有していること、低頻度バリアントの重要性が示された。今後はサンプルサイズやゲノムカバー率の拡大、標的ゲノム編集などの手法により、ALSの遺伝学的、生物学的性質の解明が進むと考えられる。

SAJP.RIL.19.08.2147