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ALS海外文献

基礎

C9ORF72 の反復配列の伸長は核-細胞質間輸送を障害する The C9ORF72 repeat expansion disrupts nucleocytoplasmic transport.

Zhang K, et al.
Nature. 2015; 525(7567): 56-61.

抄録・解説 LTTプログラム委員 郭 伸先生

背景

C9ORF72 遺伝子の6塩基反復配列伸長(HRE)[GGGGCC(G4C2)]は、家族性の前頭側頭型認知症(FTD)を伴う筋萎縮性側策硬化症(ALS-FTD)の40%で認められることが報告されている。センス鎖(GGGGCCexp)またはアンチセンス鎖(CCCCGGexp)がRNA結合タンパク(RBP)を引き寄せて正常な機能が失われたり、異常伸長したRNAがnon-AUG翻訳による2アミノ酸反復ペプチド(DPRs)の形成を促したりすることで、細胞毒性を発揮すると考えられる。これまでに、HRE RNAはヘアピン構造およびグアニン四重鎖を形成し、RBPと結合することが報告されている。

方法

G4C2が30回反復伸長[(G4C2)30]したショウジョウバエモデルを用いて、G4C2HREの遺伝的修飾因子のスクリーニングを行い、同定された因子が神経変性に及ぼす影響を検討した。また、C9ORF72遺伝子の異常伸長を有するALS患者(C9ORF72 -ALS)から作成したヒトiPS細胞由来神経細胞、G4C2の反復伸長を有するショウジョウバエS2細胞を用いて、G4C2HREの核-細胞質間輸送への関与を検討した。

結果

ショウジョウバエモデルのRBPスクリーニングによって、HRE毒性の強力な抑制因子として核-細胞質間輸送を制御するタンパクであるRanGAPが同定された。ショウジョウバエ複眼の光受容体神経に(G4C2)30を発現させると時間依存的な神経変性をきたしたが、変異型RanGAPあるいはRanGAPの過剰発現により神経変性は抑制された。C9ORF72 -ALSの細胞では、RanGAP1と核膜孔複合体(NPC)を構成する分子(nucleoporins)の凝集が認められ、NPCにもRanGAPと同様の病理学的変化が認められた。また、S2細胞では、Ranの核-細胞質(N/C)比が低下し、Ranの核内への移行阻害が示唆された。実際に、(G4C2)30発現細胞でNLS(核移行シグナル)とNES(核外移行シグナル)のN/C比を検討すると、核内輸送が抑制、核外輸送が亢進しており、核-細胞質間輸送の異常が確認された。また、TDP-43の核内輸送の抑制も確認された。C9ORF72 に対するアンチセンスRNAの導入によってRanのN/C比が完全に回復したことから、核-細胞質間輸送の障害はC9ORF72 毒性によるものであると考えられた。ポルフィリン化合物であるTMPyP4は、RanGAPのHREグアニン四重鎖に対する結合を阻害して核内輸送を回復させ、また、核外輸送に関与するExportin1の阻害剤(KPT-26)によっても核-細胞質間輸送の障害が抑制されたことから、ASO、KPT-276、TMPyP4はC9ORF72 HREを原因とする神経変性疾患の治療において有用であると考えられる。

考察

ショウジョウバエモデルおよびヒトiPS細胞由来神経細胞において、G4C2反復配列は核-細胞質間輸送を障害することが示された。また、G4C2反復配列はRanGAPだけでなく、NPCとも直接的または間接的に相互作用した。C9ORF72 HREはNPCにおいて核-細胞質間輸送の障害に関与しており、これがALS・FTDの病因の基盤であると考えられる。本研究では、C9ORF72 -ALSの発症原因として、核-細胞質間輸送障害の関与が示唆された。今回の検討では、DPRsが核-細胞質間輸送の障害に関与する影響は排除していないものの、複数のモデルを用いた結果から、RNA毒性を介する病態仮説との一致が示された。

SAJP.RIL.19.08.2147

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