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ALS海外文献

基礎

家族性パーキンソン病、認知症、および運動ニューロン疾患:縦断研究 A familial form of parkinsonism, dementia, and motor neuron disease: a longitudinal study.

Fujioka S, Boeve BF, Parisi JE, Tacik P, Aoki N, Strongosky AJ, Baker M, Sanchez-Contreras M, Ross OA, Rademakers R, Sossi V, Dickson DW, Stoessl AJ, Wszolek ZK.
Parkinsonism Relat Disord. 2014; 20: 1129-1134.

抄録・解説 LTTプログラム委員 齋藤豊和先生

背景

大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration:CBD)は、進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)や嗜銀性顆粒病、Pick病などと同じく、Tauタンパクが脳内に沈着するタウオパチーの一種である。有病率は10万人に1~9人と推定され、比較的まれな疾患でありながら、その臨床像は多様であり、進行性、非対称性の固縮および失行(大脳皮質基底核症候群)、PSP症状(Richardson症候群)、行動異常型前頭側頭型認知症(bvFTD)、原発性進行性失語症などを呈する。生前の確定診断は難しく、CBDに特異的なバイオマーカーもまだ見つかっていない。本研究では、剖検でCBDと確認された患者を発端者とする進行性神経変性疾患の大家系を対象として、発症者の臨床像、PET所見、病理所見、および遺伝的所見の検討を試みた。

方法

CBDと剖検にて診断された患者の家族を対象に、電話および面接による系譜的調査を実施した。臨床所見については標準的な形式を用いて既往歴およびパーキンソン病症状(Unified Parkinson's Disease Rating Scale)、認知機能(Mini-Mental State Examination)、パーキンソン病重症度分類(Hoehn-Yahr分類)を含む神経学的徴候を評価した。また、必要に応じて11C-dihydrotetrabenazine(DTBZ)や18F-fludeoxyglucose(FDG)を用いたPETによるニューロイメージング検査を実施した。病理所見については発端者であるCBD患者の剖検脳を調べた。さらに、発端者の末梢白血球からDNAを抽出し、Tau遺伝子MAPT、認知症関連遺伝子PGRN、パーキンソン病関連遺伝子LRRK2の全エクソンを解析したほか、前頭側頭型認知症(FTD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)の関連遺伝子C9ORF72のリピート配列異常伸長をスクリーニングし、他のFTDおよびALSに関連する遺伝子についてもスクリーニングした。

結果

CBD患者の家系5代64例のうち、CBD発端者を含む8例に神経変性疾患が認められた。遺伝形式は常染色体優性遺伝と考えられたが、浸透率は低下していた。CBD発端者は64歳時に進行性の構音障害や言語障害を発症。68歳時の検査で非流暢性失語、喚語困難、まわりくどい表現、前頭葉徴候、右側の動作緩慢、固縮、および錐体路徴候を示し、発症から5年後に死亡した。神経病理学的検査の結果はCBDに合致し、大脳皮質および皮質下にアストロサイトプラーク(アストロサイトの末梢突起におけるTauの蓄積)が認められた。他の神経変性疾患発症例も7例すべて進行性であり、2例が行動変容を伴うパーキンソン病、2例がパーキンソン病単独、1例がALS、1例が認知症、1例が進行性の歩行障害および構音障害であった。この他3例にわずかな神経学的徴候が認められた。ただし、この3例に本人の訴えはなく、いずれの神経変性疾患診断分類にも該当せず、PET検査によっても特に異常は認められなかった。CBD発端者のDNA解析の結果、MAPT、PGRN、LRRK2、C9ORF72を含む既知の神経変性疾患関連遺伝子に変異は認められなかった。

考察

以上のようなパーキンソン病、認知症、および運動ニューロン疾患の複雑な表現型を示す神経変性疾患の家系はまれであり、既知の遺伝子変異をもたない新規の家系が明らかになった。このような家系における原因遺伝子の解明は、疾患の分子メカニズムに関する理解を深めることが結果的に根治的治療法の発見に役立つ。現在、この家系に対して、全エクソーム解析による調査を進めており、原因となる遺伝子変異や遺伝的リスク因子の解明が期待される。

SAJP.RIL.19.08.2147

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