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ALS海外文献

基礎

ALSの原因となる変異hSOD1G93Aの発現は、in vitro血液脊髄関門モデルの統合性を障害し、claudin-5遺伝子発現の制御に影響を与える Expression of the ALS-causing variant hSOD1G93A leads to an impaired integrity and altered regulation of claudin-5 expression in an in vitro blood–spinal cord barrier model.

Meister S, Storck SE, Hameister E, Behl C, Weggen S, Clement AM, Pietrzik CU.
J Cereb Blood Flow Metab. 2015; 35: 1112-1121.

抄録・解説 LTTプログラム委員 佐々木彰一先生

背景

近年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は神経血管疾患であるという仮説が立てられ、最初に起こる病理学的イベントの1つとして、血液脊髄関門(blood spinal cord barrier:BSCB)の障害が挙げられている。血管内皮細胞間の癒着帯は、膜貫通型タンパクからなる複雑な複合体を形成し、細胞間隙のすき間を埋めることにより、イオン、分子および細胞の流入を制御する。そのバリア機能の統合性は周皮細胞やアストロサイトにより促される。ALSモデルのヒト変異型SOD1導入マウス(hSOD1G93Aマウス)では、病気の進展によりBSCBの超微細構造の変化とIgGおよびアルブミンの漏出が内皮細胞障害とともに現れる。他の変異SOD1でも癒着帯を構成するZO-1、occludin、claudin-5といったタンパクの減少が報告されている。さらに、このようなBSCBの破綻は炎症性変化や運動ニューロン変性より前に起こっており、疾患の始まりと関連している可能性がある。

方法

hSOD1G93Aマウスの腰髄および発症前の同マウス由来の初代培養マウス脊髄血管内皮細胞(pMSCEC)における癒着帯タンパクの発現を調べた。また、マウス脳血管内皮細胞由来のbEnd.3細胞にhSOD1G93Aを安定的に発現させ、hSOD1G93Aマウス由来pMSCECと同等のバリア機能と癒着帯タンパクの発現を示すin vitroのBSCBモデルを作製し、BSCBの障害につながる経路および生化学的プロセスを検討した。

結果

末期のhSOD1G93Aマウスでは、ヒト野生型SOD1遺伝子導入マウス(hSOD1WT)と比べ、脊髄血管におけるclaudin-5の発現は低かった。また、分離培養した未発症のhSOD1G93Aマウス由来pMSCECにおいても、littermateマウス由来pMSCECと比べ、claudin-5の発現は低かった。これらのデータから、ALSを引き起こすhSOD1G93Aの発現は、未発症の段階から血管内皮細胞における癒着帯タンパクの発現低下をもたらすことが示唆された。hSOD1G93Aを発現させたbEnd.3細胞においても、全細胞溶解液および細胞表面のclaudin-5やoccludinの発現は野生型に比べ低かった。bEnd.3およびpMSCECの両細胞系において、hSOD1G93Aマウスは野生型に比べ、経内皮電気抵抗(TER)は低く、みかけの透過性(Papp)は亢進することが認められた。同bEnd.3細胞においてβ-カテニン(β-cat)/AKT/forkhead box protein O1(FoxO1)のリン酸化状態をウェスタンブロットにより解析したところ、hSOD1G93A発現細胞では野生型に比べ、pβ-cat発現が高く、pAKTおよびpFoxO1の発現は低かった。また、FoxO1によるclaudin-5遺伝子プロモーター領域の活性制御を解析した結果、FoxO1のリン酸化に応じてclaudin-5遺伝子の発現が抑制されていることが示された。

考察

以上の結果から、変異SOD1は癒着帯タンパクの発現と局在に影響を及ぼし、それがBSCBの統合性を障害していることが示唆された。変異SOD1は活性酸素種の過剰な産生を引き起こし、増大した酸化ストレスがβ-カテニン/AKT/ FoxO1経路へ作用し癒着帯タンパクの発現を変え、BSCBの完全性を障害していると考えられた。血管内皮の損傷やそれに続くBSCBの障害は、ALSにおける初期イベントの1つと考えられ、これを治療ターゲットとしてBSCBの安定化を図ることが有望なアプローチとして期待される。

SAJP.RIL.19.08.2147

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