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ALS海外文献

基礎

ALS疾患蛋白TDP-43は運動ニューロン軸索に活発に輸送され軸索伸長を調節する The ALS disease protein TDP-43 is actively transported in motor neuron axons and regulates axon outgrowth.

Fallini C, Bassell GJ, Rossoll W.
Hum Mol Genet. 2012;21(16): 3703-3718. doi: 10.1093/hmg/dds205. Epub 2012 May 28.

抄録・解説 LTTプログラム委員 齋藤豊和先生

背景

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は大脳皮質と脊髄の運動ニューロンを侵す神経変性疾患である。異常リン酸化(hyperphosphorylated)およびユビキチン化(ubiquitinated)されたTAR DNA-binding protein 43 kDa(TDP-43)を含む細胞質内封入体がALSの病理学的特質の1つであり、TDP-43をコードする遺伝子変異はALS発症と直接関連づけられている。TDP-43は、広範に発現するDNA/RNA結合蛋白質であり、正常な細胞では核内のRNA転写において、未成熟メッセンジャーRNA(pre-mRNA)スプライシングおよびマイクロRNA(miRNA)プロセシングを制御する役割を担っているが、大部分のALS症例では運動ニューロンの核内に認められない。しかしながらALSを特徴づける選択的な運動ニューロン変性が、核内TDP-43の消失、細胞質内TDP-43封入体の毒性獲得、あるいは細胞質内蓄積、もしくはこれらの複合のいずれを原因とするかは明らかとなっていない。
従来の多くの研究では、TDP-43の核内機能であるpre-mRNAスプライシング制御に焦点が当てられてきたが、最近の研究結果からは、TDP-43は細胞質内および軸索においても、mRNAの運命(安定性、輸送、翻訳など)を調節することによって運動ニューロンの生存維持を制御している可能性が示唆されている。

目的

TDP-43が細胞質内および軸索において、運動ニューロンの機能に重要なmRNAの運命を調節する役割を担っている可能性を検討するため、初代培養運動ニューロンを用いてTDP-43の局在および動力学的特性を調べた。

方法

初代培養した運動ニューロンを使用し、TDP-43の細胞内局在を免疫蛍光染色によって検討し、さらに細胞イメージングで得られた結果を確認するため、生化学的アプローチを施行した。

結果

TDP-43の大部分は運動ニューロンの核に局在していたが、TDP-43を含む顆粒が軸索に局在し、軸索および成長円錐に沿って活発に往来していることが示された。運動ニューロン軸索において、mRNAの輸送および翻訳を調節することが知られている他のmRNA結合蛋白質(mRBP)がTDP-43と共局在し、TDP-43陽性顆粒の一部を構成していることが明らかとなった。なお、ALSの病因として知られるミスセンス突然変異(M337VまたはA382Tのアミノ酸置換)を有するTDP-43を発現させると、野生型TDP-43に比べ、細胞質内および軸索への移行が増加した。
また、TDP-43のC末端断片を過剰発現させると、運動ニューロンの細胞体内および神経突起内に過剰リン酸化されたユビキチン陽性封入体が形成され、これら封入体には、mRBP のうち特に、HuDがTDP-43との相互作用により含まれることも示された。
さらに、運動ニューロン内に全長または変異TDP-43を過剰発現させると、軸索伸長に重篤な機能障害が発現した。これはTDP-43が他の蛋白質と相互作用を行うC末端ドメインに起因して生じることが示され、逆に短ヘアピンRNA(shRNA)ベクターでTDP-43の発現をノックダウンすると、軸索伸長が促進したことから、TDP-43は他のmRBPとの相互作用を介して軸索伸長の負の調節因子として作用する可能性が示唆された。

結論

以上の結果は、TDP-43が運動ニューロンの軸索伸長を調節する機能を持つ可能性を示唆するものであり、運動ニューロンの細胞質におけるmRNAの翻訳後調節の障害が、ALS発症の主要な要因である可能性を示すものである。

SAJP.RIL.19.08.2147

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