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ALS海外文献

基礎

TDP-43の欠失は年齢依存的な進行性運動ニューロン変性の原因となる Loss of TDP-43 causes age-dependent progressive motor neuron degeneration.

Iguchi Y, Katsuno M, Niwa J, Takagi S, Ishigaki S, Ikenaka K, Kawai K, Watanabe H, Yamanaka K, Takahashi R, Misawa H, Sasaki S, Tanaka F, Sobue G.
Brain. 2013;136(Pt 5): 1371-1382. doi: 10.1093/brain/awt029. Epub 2013 Feb 28.

抄録・解説 LTTプログラム委員 佐々木彰一先生

背景

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位および下位運動ニューロンを侵す進行性の神経変性疾患である。家族性ALS(FALS)についてはいくつかの原因遺伝子が同定されているが、ALS症例の90%以上を占める孤発性ALS(SALS)の原因については明らかにされていない。
TAR DNA-binding protein 43 kDa(TDP-43)はRNAプロセシングを調節する核内蛋白で、近年、SALS患者の運動ニューロンにおいて、神経細胞質内のユビキチン陽性封入体の主要構成成分として同定された。通常、TDP-43は細胞の核に存在して機能する。しかし、SALS患者の運動ニューロンでは核から消失し、神経細胞質において凝集体を形成することから、TDP-43のloss of functionがSALSの病因として重要な役割を果たすと考えられる。
TDP-43ノックアウトマウスは胎生致死となるが、生後にTDP-43を欠失させたマウスは体脂肪が減少し、早期死亡することが報告されている。これらの知見により、TDP-43はマウスにおいて胎児期だけでなく出生後生存に必須であることが示されたが、出生後の哺乳類の運動ニューロンにTDP-43欠失が及ぼす影響については十分に解明されていない。

目的および方法

TDP-43のloss of functionがSALSにおける神経変性の一因であることを検証するため、運動ニューロン特異的にTDP-43をノックアウトしたマウス(TDP CKOマウス)をCre/loxP組み換えシステムを用いて作製し、TDP-43欠失が出生後の運動ニューロンに及ぼす影響について検討した。
神経学的および行動学的試験として、TDP CKOマウス(n=20)、対照マウス(n=21)に対し、ロータロッド試験および握力測定を週1回行った。歩幅は50cmの足跡から平均を測定した。運動ニューロンの形態および組織病理は蛍光抗体法、免疫組織化学法、および電子顕微鏡観察によって解析した。

結果

TDP CKOマウスでは、60週齢以降に体重減少および運動機能障害が進行し、躯幹と後肢に筋萎縮がみられた。100週齢で、対照マウスに比較して有意な体重減少(p=0.04:対応のないStudent's t検定、以下同様)、ロータロッド試験の成績低下(p=0.001)、握力低下(p=0.002)を示し、後肢の歩幅も短かった(p=0.000001)。
脊髄運動ニューロンの形態について、100週齢マウスの腰椎前角より作成した切片を用いて解析した結果、TDP CKOマウスのTDP-43欠失運動ニューロンの平均面積は、同マウスのTDP-43陽性運動ニューロンおよび対照マウスの運動ニューロンと比較して有意に小さかった(それぞれp<0.01、p<0.001)。TDP CKOマウスのTDP-43欠失運動ニューロンについて時系列で解析すると、50週齢では影響がみられなかったが、100週齢で明らかな運動ニューロンの萎縮が認められた(20週齢と比較してp<0.0001)。
また、TDP CKOマウスでは、50週齢以降にL5前根での大径の運動軸索変性および脱神経された神経筋接合部の割合の顕著な増加が、また100週齢の腓腹筋で神経原性変化の一種である群集萎縮が、それぞれ認められた。
なお、脳神経核の領域特性を調べるため、100週齢TDP CKOマウスの各脳神経核を解析したところ、TDP-43欠失運動ニューロンは、三叉神経運動核、顔面神経核、舌下神経核では萎縮が認められた一方で、動眼神経核および外転神経核では形態が保たれており、このマウスモデルがALSにおける選択的運動ニューロン障害を再現していることが示された。
さらに、100週齢TDP CKOマウスの運動ニューロンの超微細構造解析により、運動ニューロンの細胞体、近位部軸索、および坐骨神経でオートリソソーム、オートファゴソームなどのオートファジー関連構造物が蓄積されていることが明らかとなった。なお、これらの構造物は対照マウスではみられなかった。

結論

生後にTDP-43を運動ニューロンで欠失させたマウスでは、年齢依存的な進行性運動ニューロン障害および運動ニューロンシステムにおける形態学的変化が認められ、これらはSALSの神経病理における特徴と共通していた。これらの所見は、TDP-43が運動ニューロンの長期的維持に重要な役割を果たしていること、そのloss of functionがALS発症の原因となっている可能性があることを示唆するものである。

SAJP.RIL.19.08.2147

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