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ALS海外文献

基礎

ラットCNSへの広範な遺伝子導入は、TDP-43過剰発現時の筋萎縮性側索硬化症関連症状を迅速に発現させる Expansive gene transfer in the rat CNS rapidly produces amyotrophic lateral sclerosis relevant sequelae when TDP-43 is overexpressed.

Wang DB, Dayton RD, Henning PP, Cain CD, Zhao LR, Schrott LM, Orchard EA, Knight DS, Klein RL.
Mol Ther. 2010;18:2064-2074.

抄録・解説 LTTプログラム委員 佐々木彰一先生

はじめに

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の主な神経病理はtransactive response DNA-binding protein 43(TDP-43)に由来する細胞内異常凝集体と考えられている。TDP-43は核内でのDNA結合およびRNAプロセッシングに関連するさまざまな機能を有し、ALSおよび前頭側頭葉変性症(FTLD)のユビキチン化した神経病理学的病変に豊富に認められる。TDP-43は通常は核に存在するが、病変では細胞質内に認められ、これが疾患発症の重要なステップである可能性がある。なお、発症原因がTDP-43の核内機能異常によるものか、あるいは異常な細胞質内TDP-43の蓄積によるものかを決定するためには、loss of functionまたはtoxic gain of functionを検討する必要がある。ALSのニューロン喪失パターンを模倣し、これら患者でのTDP-43の影響を検討するには、上位および下位運動ニューロンへの遺伝子導入が必要である。また、ALSおよびFTLDでは脊髄と脳のいずれにおいてもTDP-43封入体が存在することから、両部位を同時に標的にすることはこれら疾患の研究において有用である。そこで筆者らは、TDP-43ウイルスベクターの静脈内投与により、脊髄、脳幹および大脳皮質への遺伝子導入を試みた。

方法

1日齢ラットへのアデノ随伴ウイルス血清型9型ベクター(AAV9)静脈内投与により遺伝子導入を行った。TDP-43(TDP-43 AAV9)ならびに対照の緑色蛍光蛋白質(GFP AAV9)を発現するAAV9ベクターを2×1012 vector genomes(vg)の用量で投与した。また形質導入パターンをより明確に視覚化するため、強く発現するwoodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulation element(WPRE)を含むGFPベクター(GFP-WPRE AAV9)を3×1012 vgの高用量で投与した。

結果

新生仔ラットへのAAV9の静脈内投与により、中枢神経系への広範な形質導入が達成された。脊髄の下位運動ニューロンへの導入効率は、投与12週間後、検討した最高用量のベクターで78%と推定された。本法による広範な遺伝子発現は、ALSのような脊髄および脳の両者を侵す疾患の研究に有用と考えられた。ヒト野生型TDP-43をラットに発現させると、後肢麻痺や筋萎縮を含むALSに密接に関連した症状が速やかに発現するとともに、4週までの早期死亡が多くみられたが、これらはTDP-43を発現させなかった対照群では認められなかった。後肢の萎縮および筋力低下は、ロータロッド、立ち上がり行動(rearing)、全般的運動(overall locomotion)、筋肉量ならびに組織像による評価で示された。筋萎縮により脱神経が示唆されたが、TDP-43群での運動ニューロンの喪失は14%しかなく、またユビキチン化した細胞質TDP-43の病理も認められなかったことから、TDP-43の核内機能異常が本疾患の発症機序であることが示唆された。ラットでのその他関連する病理として、小膠細胞症(microgliosis)ならびにリン酸化ニューロフィラメント陽性の変性神経細胞体(neuronal perikarya)が認められた。発現パターンはALSの神経病理分布を包含していた。

結論

ベクター遺伝子導入法ではトランスジェニックマウスと比べて本質的に個体間変動が大きいものの、導入遺伝子の発現は16週間の長期にわたって安定的であった。ベクター/ラット法は、機能麻痺、筋萎縮、運動ニューロン喪失のようなALSの特徴を検討するのに迅速かつ信頼できる方法であると結論する。

SAJP.RIL.19.08.2147

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