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ALS海外文献

基礎

筋萎縮性側索硬化症におけるオプチニューリン遺伝子の変異 Mutations of optineurin in amyotrophic lateral sclerosis.

Maruyama H, Morino H, Ito H, Izumi Y, Kato H, Watanabe Y, Kinoshita Y, Kamada M, Nodera H, Suzuki H, Komure O, Matsuura S, Kobatake K, Morimoto N, Abe K, Suzuki N, Aoki M, Kawata A, Hirai T, KatoT, Ogasawara K, Hirano A, Takumi T, Kusaka H, Hagiwara K, Kaji R, Kawakami H.
Nature. 2010;465:223-226.

抄録・解説 LTTプログラム委員 郭 伸先生

要旨

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は中年期に発症し、一次運動野、脳幹、および脊髄の運動ニューロン変性を特徴とする進行性疾患である。ALSの多くは孤発性であるが、10%程度は家族性に発症する。古典的家族性ALS(FALS)の原因遺伝子としては、superoxide dismutase 1遺伝子(SOD1)、angiogeninをコードするANG、transactive response(TAR)DNA-binding protein TDP-43 をコードするTARDP、fused in sarcoma/translated in liposarcoma遺伝子(FUS/TLS)などが知られているが、これら遺伝子異常の発現はFALS患者の約20~30%にしか認められず、FALSを引き起こす遺伝子変異の大部分は不明のままである。
本報告では、もともと原発性開放隅角緑内障(POAG)の原因遺伝子として報告されたオプチニューリン(optineurin)をコードする遺伝子(OPTN)の変異がALS患者において認められたことを示す。
血族結婚のある日本人家系のALS患者6症例を対象に、3例の患者からでも責任遺伝子を同定しうる感度をもった解析法であるhomozygosity mapping を行った。single nucleotide polymorphism(SNP)の解析から両アリル共通のSNPsをもつ領域(run of homozygous SNPs; RHSs)を絞り込んだ。この方法により従兄弟、又従兄弟の結婚により生ずる共通アリル領域の98%を検出することが可能である。このRHSsの中から4人の患者に共通した第10染色体領域を選択し、17個の候補遺伝子の配列を調べ、OPTNエクソン5の欠失を2名の同胞発症者に見出し、direct sequencingにより他の1症例、計2家系3症例においてOPTNの変異が認められた。他の3例にはOPTN変異、コピー数変化は見出されなかった。さらに血族結婚の家系のALS患者10例、FALS患者76例、および孤発性ALS患者597例に解析対象を拡げ、OPTNの解析を行ったところ、孤発性ALSの1症例およびFALSの2家系4症例でOPTNの変異が認められた。OPTNの変異には、エクソン5のホモ接合性欠失、ホモ接合性Q398Xナンセンス変異、およびヘテロ接合性E478Gミスセンス変異の3タイプが認められた。これらの変異は781名の健康体日本人には見出されず、欠失も200名の日本人緑内障患者には見出されなかった。また、6,800名の緑内障患者にも変異は見出されず、欠失の報告例もないことから、ALSに関連した遺伝子変異であると考えられる。
培養細胞へのトランスフェクション解析の結果、OPTNのナンセンスおよびミスセンス変異により、核内因子κB(NF-κB)の活性化抑制機能が失われること、またE478G変異は野生型やPOAG変異とは異なる細胞質内分布を示すことが明らかとなった。
E478G変異症例では、optineurinに免疫反応性を示す細胞質封入体が認められた。また孤発性ALSのTDP-43陽性封入体およびSOD1変異FALS患者のSOD1陽性封入体にも、抗optineurin抗体による顕著な免疫標識が認められた。一般にSOD1陽性封入体はTDP-43免疫染色性を示さないことから、optineurin染色は、様々なタイプのALSの封入体に共通する、より一般的なマーカーと思われる。すなわち、optineurin分子はより広範なALS発症機序に関わっているものと考えられる。
我々の所見は、optineurinがALS全般の病因に関連のあることを強く示唆するものである。また、OPTNの変異によりoptineurinのNF-Bに対する負のフィードバックがかからないことによるNF-κBの過剰な活性化が、神経細胞死を引き起こす可能性があることから、NF-B阻害剤がALS治療の候補薬となり得ること、さらに新規ALS治療薬の開発には様々なOPTN変異トランスジェニックマウスを使用できる可能性があることが示唆された。

SAJP.RIL.19.08.2147