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ALS海外文献

ケア

医師による死亡幇助:全カナダALS医療関係者調査 Physician-assisted death: A Canada-wide survey of ALS health care providers.

Abrahao A, et al.
Neurology. 2016; 87: 1152-1160.

抄録・解説 LTTプログラム委員 岩崎泰雄先生

背景

忍容できない苦痛があり、治癒不能の医学的状態である患者に対して、医師による死亡幇助(PAD)を認める国や地域が増えつつある。PADには医師が死を望む患者に致死量の薬剤を処方する「医師による自殺幇助」と、医師が死を望む患者にその目的のためだけに致死量の薬剤を投与する「自発的積極的安楽死」がある。2015年2月、カナダ最高裁判所(SCC)は、PADを禁じる刑法の条項を無効化する判決を下した。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は全身の麻痺と呼吸不全に至る致死的疾患であり、この判決はALS患者のケアに影響する。しかし、その適格性や実施条件などは依然として意見の分かれる問題である。そこで、同判決後施行(2016年6月)までの間に、カナダ全国のALS医療関係者を対象としてPADに関する考えを問う調査を実施した。

方法

2015年10月2日から12月3日にかけて、カナダでALS診療に関わる医師および医療専門職(AHP)を対象として、横断的な無記名式のオンライン調査を実施した。カナダ全国のALSクリニック15施設を含むカナダALS研究ネットワークの協力のもと、対象者に直接または代表者を介してEメールで調査を依頼し、オンラインの調査サイトへ誘導した。さらに、カナダ緩和ケア医学会のEメールリストを介して、ALS診療に関わる緩和ケア医にも調査への参加を依頼した。調査内容は主に、①SCCの判決に対する考え、②PADへの関与意思、③ALS患者へのPAD実施プロセス、についてである。

結果

全体で医師116名およびAHP115名が調査に回答した。調査を直接依頼した医師113名中84名、AHP75名中56名が回答しており、その回答率は74%(140/188名)であった。その他に代表者を介した依頼で医師3名、AHP59名が回答し、カナダ緩和ケア医学会からも29名の回答があった。ALS診療の平均経験年数は、医師12.7±9.8年、AHP10.5±7.6年であった。
医師の64%、AHPの80%がSCCの判決に賛意を示したが、医師の29%、AHPの38%は終末期の患者に限って適用されるべきとの考えを示した。医師の77%、AHPの81%はSCCの判決に従ってALS患者にもPADが適用されるべきとしたが、その実施条件については意見が割れた。重症度、苦痛、推定余命にかかわりなく、すべてのALS患者にPADが認められるべきとしたのは、医師の11%、AHPの29%であった。重度障害、自立性喪失、余命6ヵ月未満、耐えがたき苦痛、以上4つのうち1つ以上があるALS患者にPADが認められるべきとしたのは、医師の66%、AHPの52%であった。
ただし、医師の82%、AHPの72%はPADの開始に準備ができていないとして、追加の教育研修を希望している。重症のALS患者が医師による自殺幇助を希望した場合に致死量の薬剤を処方するとした医師は34%、PADを受け持つ別の医師に紹介するとした医師が43%であった。自発的積極的安楽死を希望した場合に致死量の薬剤を投与するとした医師は31%、PADを受け持つ別の医師に紹介するとした医師が52%であった。
PADの適格性をめぐっては多くの回答者がセカンドオピニオンによる確認が必要としたほか、精神科医による評価も必要と考え、患者のPADに対する意思確認は15日以上の間隔を空けて2回以上行われるべきとした。

考察

カナダでALS診療に携わる医療関係者の多くはPADに関するSCCの判決を支持し、身体的または精神的苦痛を伴う中等度から重度のALS患者にPADが適用されてしかるべきと考えていた。しかし、PADに直接取り組もうという医師は少なく、判決の施行にあたっては、追加の教育研修やガイドラインの策定などが必要である。

SAJP.RIL.19.08.2147

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