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ALS海外文献

ケア

気管カニューレを長期使用中の筋萎縮性側索硬化症患者のケアの実態 Care status of the ALS patients with long-term use of tracheostomy tube.

Park YJ, et al.
Ann Rehabil Med. 2015; 39: 964-970.

抄録・解説 LTTプログラム委員 尾野精一先生

背景

筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の約半数は退院後に自宅で人工呼吸器を装着する。患者の家族がプライマリーの介護者となるが、気管カニューレを長期使用中のALS患者やその介護者に関する注目度は低く、その実態はほとんど調査されていなかった。一方、介護者については、後期合併症予防に必要な気管切開に関する基本的知識の不足が報告されている。そこで本研究では、自宅介護を受け、気管カニューレを長期使用中のALS患者のケアの実態を調査した。

方法

調査対象は、自宅介護を受け、釜山大学校病院がフォローアップ中のALS患者とその介護者とし、患者はいずれも気管切開を伴う人工呼吸器の装着例とした。調査期間は、2013年10月から2014年4月として、患者とその介護者に対して、罹病期間、気管切開期間、介護および気管カニューレに関する詳細についてアンケート調査を実施した。気管カニューレのエア量などの測定項目は、釜山大学校病院の訪問看護師2名が評価した。なお、本研究では、必要に応じて介護者に対し、気管カニューレの取り扱い方、米国呼吸療法学会(AARC)が推奨する気管吸引方法などを教育した。

結果

調査は患者19例(男性15例、女性4例)とその介護者に対して実施した。介護者の患者との関係性は、配偶者10例、介護士3例、母親3例、子供2例、姉妹1例で、平均介護期間は5.9年、1日あたりの平均介護時間は12時間であった。患者の罹病期間は5.3年、気管切開期間は3.0年であった。気管カニューレの交換頻度は14日ごと11例、7日ごと4例、28日ごと2例、21日ごと1例であった。また、1例は適切な時期に交換できていなかった。介護者の95%(18例)はカフ圧計を用いることなくカフを膨らませた経験があり、カフ圧の異常高値は78.9%(15例)で確認された(36~50cmH2O6例、50~75cmH2O7例、>75cmH2O2例)。介護者の記録による平均エア量は6.7mLであったが、訪問看護師の測定による平均カフ圧は40cmH2O、平均エア量は7.0mLであった。カフの過膨張により気管軟化症を発症し入院した患者の介護者に対しては、気管カニューレの正しい取り扱い方を指導した。また、最近入院した4例の入院直後のカフ圧は60~90cmH2O、エア量は12~14mLであったが、教育・退院後はそれぞれ20~26cmH2O、4~7mLとなった。1日あたりの気管吸引回数は平均27.5回であったが、1日あたり15回未満が10例、40回以上が8例と二極化がみられた。

考察

本調査結果から、介護者の多くが気管カニューレに関する基本的知識がないまま介護を行っていることが明らかになった。気管切開後のケア不良は後期合併症の直接的な原因になる。多くの気管カニューレの場合、気管粘膜の損傷をきたさない最適なカフ圧は25~35cmH2Oとされているが、本調査では78.9%の患者でカフの過膨張が認められた。カフを膨らませた理由は、患者の希望、空気漏れ、理由なしなどであったが、この結果は、ほとんどの患者および介護者がカフ圧やエア量に関して誤認していることを示している。カフの過膨張は、気管粘膜の虚血性障害を惹起し、虚血が長期に持続すると肉芽組織形成による気管狭窄、ひいては気管軟化症、気管食道瘻、気管腕頭動脈びらんなどが生じる。本研究では、患者と介護者に対する教育によってカフ圧を改善することができた。多くのALS患者は家庭で侵襲的換気を実施している。患者やその介護者に対する気管切開後のケアに関する教育の重要性を強調したい。

SAJP.RIL.19.08.2147

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