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筋萎縮性側索硬化症患者における胃瘻造設(ProGas研究):前向きコホート研究 Gastrostomy in patients with amyotrophic lateral sclerosis (ProGas): a prospective cohort study.

ProGas Study Group. McDermott CJ, Shaw PJ, Stavroulakis T, Walters SJ, Al-Chalabi A, Chandran S, Crawley F, Dick D, Donaghy C, Eames P, Fish M, Gent C, Gorrie G, Hamdalla H, Hanemann CO, Johnson M, Majeed T, Malaspina A, Morrison K, Orrell R, Pinto A, Radunovic A, Roberts M, Talbot K, Turner MR, Williams T, Young C.
Lancet Neurol. 2015; 14: 702-709.

抄録・解説 LTTプログラム委員 齋藤豊和先生

背景

嚥下障害は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の典型的な症状の1つであり、重症化に伴い飲食時には長い時間と労力を要し、体重減少、嚥下時の咳込み、窒息、呼吸器症状などを引き起こす。長期間にわたって栄養補給を維持するには胃瘻造設が推奨されるが、そのタイミングや術式の選択に関しては、専門家の意見やコンセンサスに依存しているのが現状であり、質の高いエビデンスが不足している。胃瘻造設はALS患者の生存、生活の質(quality of life:QOL)、栄養に役立つ。そこで、安全性と臨床転帰の観点から、胃瘻造設の最適なタイミングと術式を明らかにすることを目的に検討を行った。

方法

本研究は多施設前向きコホート研究であり、ProGas研究と名づけられ、英国の24施設が参加して実施された。対象はEl Escorial基準でpossible以上と診断されたALS患者であり、胃瘻造設が決定された時点で研究への参加を確認した。同意が得られた患者から、登録時(ベースライン)、胃瘻造設術直後、3ヵ月後および12ヵ月後に、必要なデータを取得した。主要評価項目は胃瘻造設術後30日の死亡率とし、副次的評価項目として術中および術後3ヵ月の合併症発症率、術後生存期間中央値、栄養状態の変化、QOLの変化、介護者負担の変化などを評価した。

結果

2010年11月2日~2014年1月31日に、330例に対して胃瘻造設術が実施され、このうち163例(49%)が経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy: PEG)、121例(37%)がX線透視下胃瘻造設術(radiologically inserted gastrostomy: RIG)、43例(13%)が経口X線透視下胃瘻造設術(per-oral image-guided gastrostomy: PIG)、3例(1%)が外科的胃瘻造設術であった。術後30日以内に330例中12例(4%)が死亡し、術式別の内訳はPEG群163例中5例(3%)、RIG群121例中4例(3%)、PIG群43例中3例(7%)であった。造設術後30日の死亡率は、発症年齢、体重減少、機能低下率、努力肺活量(forced vital capacity:FVC)、発症部位、および治療施設で調整すると、3群間に有意差は認められなかった。また、術後の生存期間中央値は325日であり、術式別ではPEG群341日、RIG群361日、PIG群201日であり、交絡因子で調整すると3群の生存期間中央値に有意差は認められなかった。Cox比例ハザードモデルで解析した結果、発症年齢が遅いほど、また、診断時から胃瘻造設時までの体重減少率が大きいほど、胃瘻造設術後の死亡リスクは高いことがわかった。術後生存期間中央値は、診断時から胃瘻造設時までの体重減少率が10%以下であれば12ヵ月であったが、10%超だと7.7ヵ月であった。周術期の合併症はPEG群で心理的苦痛の割合が高く、術後の合併症としてはRIG群において胃瘻チューブ関連の合併症の割合が高かった。患者QOLはベースラインと術後3ヵ月で有意な変化が認められず、介護者負担は増加していた。

考察

ALS患者における胃瘻造設術のPEG、RIG、PIGの3群は、術後30日の死亡率に有意差がなく、術式に関連した死亡リスクという点ではいずれも同程度に安全であることが示唆された。さらに、死亡率を全体的に見た場合にも術式による差は認められず、ALSの発症年齢や診断から施術までの体重減少率こそが主要なリスク因子であることが示された。したがって、診断時から体重の減少が進んでいる症例では胃瘻造設の遅れがその便益を減じることになりかねない。現在のガイドラインは体重減少率が10%以内での胃瘻造設を推奨しているが、安全性と有効性の観点からは、例えば5%程度を閾値とするのがより適切である可能性がある。

SAJP.RIL.19.08.2147