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アルコール使用障害と筋萎縮性側索硬化症の関連:スウェーデンの全国コホート研究 Association of alcohol use disorders with amyotrophic lateral sclerosis: a Swedish national cohort study.

Ji J, Sundquist J, Sundquist K.
Eur J Neurol. 2015 Jan 29. doi: 10.1111/ene.12667.

抄録・解説 LTTプログラム委員 岩崎泰雄先生

背景

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症には遺伝因子のほかに環境因子が関与していると考えられているが、一貫した関連が示されているのは喫煙のみである。アルコール摂取とALSの関連については少数の報告があるものの、対象とした症例数が少ないことなどが影響し、結果は一致していない。そこで、スウェーデンにおいて全国規模のデータベースを利用したコホート研究を実施し、重度のアルコール摂取の代替指標となるアルコール使用障害(alcohol use disorders:AUD)の有無によってALS罹患率に差があるかどうかを、標準化罹患比(Standardized incidence ratios:SIR)を算出して検討した。

方法

データの取得には入退院登録、外来診療登録、犯罪登録、薬剤処方登録、国勢調査、死因登録、移民登録など全国規模のデータベースを利用した。入退院登録や外来診療登録のデータから、同国における1973~2010年のALS患者を同定するとともに、犯罪登録や薬剤処方登録のデータから同期間のAUD例を同定した。追跡期間は、出生日、同国転入日、1973年1月1日のうち最も遅い日から、ALS診断日、死亡日、同国転出日、2010年12月31日のうち最も早い日までとし、全AUD例の合計追跡期間(患者・年)におけるALSの実測罹患数を、非AUD例のALS発症率から求めた期待罹患数で除してSIRを算出した。また、性別、年齢、教育期間、出生国、追跡時期についてもデータを取得し、AUD例におけるALSのSIRについて、層別化比較を行った。

結果

1973~2010年の間、スウェーデンでALSと診断されたのは7,965例で、AUDは42万489例であった。ALS患者のうちAUDは136例、非AUDは7,829例で、AUDでは合計1,177万1,043患者・年の追跡期間中、136例がALSを発症していた。また、非AUD例のALS発症率を換算して同期間におけるALSの期待罹患数を求めると251.7例であった。すなわち、AUDにおけるALSのSIRは0.54(95%CI: 0.45-0.63)と算出され、AUD例ではALSのリスクが低下していた。層別化比較の結果、性別、教育期間(0~9年間、10~12年間、12年間以上)、出生国(スウェーデン、スウェーデン以外)、年代にかかわらず、AUD例ではALSのリスクが低下していた。また、喫煙の影響を検討するため、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の有無で層別化比較したところ、COPD患者、すなわち喫煙歴があると考えられる場合でも、AUDにおけるALSのリスク低下はほとんど影響を受けなかった。

考察

本研究は、アルコール摂取とALSとの関連を検討した研究として、これまでで最大規模のものである。AUDで登録されるほどの重度のアルコール摂取がALSのリスク低下と関連していることが、性別、教育期間、出生国などにかかわらず、一貫して示された。アルコールがALSを防御するメカニズムは解明されていないが、アルコールが血液脳関門(BBB)を容易に通過し、中枢神経系に影響を及ぼすことはよく知られている。さらに、アルコールにはMAPキナーゼや核内因子κB(nuclear factor-κB:NF-κB)の活性化による免疫調節機能への影響もある。AUDは通常のアルコール摂取レベルを超えた状態であり、一般の飲酒には当てはめられない。また、本研究ではアルコール飲料の種類や量が不明であり、用量反応関係を解析することはできない。食事をはじめとして他にも結果に影響を及ぼす可能性のある因子があることから、その交絡を解明するため、さらなる研究が必要である。

SAJP.RIL.19.08.2147