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筋萎縮性側索硬化症患者における高カロリー経腸栄養:無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅱ相臨床試験 Hypercaloric enteral nutrition in patients with amyotrophic lateral sclerosis: a randomised, double blind, placebo-controlled phase 2 trial.

Wills AM, Hubbard J, Macklin EA, Glass J, Tandan R, Simpson EP, Brooks B, Gelinas D, Mitsumoto H, Mozaffar T, Hanes GP, Ladha SS, Heiman-Patterson T, Katz J, Lou JS, Mahoney K, Grasso D, Lawson R, Yu H, Cudkowicz M; MDA Clinical Research Network.
Lancet. 2014;383:2065-2072.

抄録・解説 LTTプログラム委員 尾野精一先生

背景

筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、筋肉および脂肪の減少による体重減少が一般的に認められる。原因としては、嚥下困難、抑うつ、食欲不振、摂食動作の障害による摂取量の減少や、代謝亢進によるエネルギー消費量の増加などが考えられている。一方、ALS患者の体格指数(Body Mass Index:BMI)と生存期間には関連が認められるとする報告があり、痩せすぎのBMI<18.5kg/m2では生存期間が短く、中度肥満のBMI 30~35kg/m2では生存期間が長いと指摘されている。さらに、ALSモデルのSOD1変異マウスに高カロリー・高脂肪食を与えた結果、体重が増加し、疾患進行が遅延したという報告もある。そこで本研究では、経腸栄養を施行している進行期ALS患者を対象に、高炭水化物または高脂肪による高カロリー食供与の安全性と忍容性を検証する目的で、無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅱ相臨床試験を実施した。

方法

対象患者は、本研究に参加する米国のALSセンター12施設で診療中のALS患者から募集した。登録条件は18歳以上で、糖尿病、肝疾患、心血管疾患の既往がなく、すでに胃瘻による経腸栄養を施行している患者である。患者ごとに1日に必要な推定エネルギー必要量を計算し、それと等価のエネルギーを補充する対照群と、125%のエネルギーを高炭水化物食で補充する高炭水化物・高カロリー群(HC/HC群)、同じく125%のエネルギーを高脂肪食で補充する高脂肪・高カロリー群(HF/HC群)を比較した。患者を1:1:1の比率で上記の3群に分け、経腸栄養における食事介入を4ヵ月間実施し、さらに介入終了後1ヵ月の追跡を行った。主要評価項目は安全性と忍容性である。安全性については有害事象数を評価し、忍容性については処方食の遵守率が80%を超えていれば「忍容性あり」、何らかの理由で4ヵ月を完遂できなければ「忍容性なし」と判定した。

結果

2009年12月~2012年11月に24例(対照群7例、HC/HC群9例、HF/HC群8例)を登録したが、4例が試験開始前に同意を取り下げたため、20例(対照群6例、HC/HC群8例、HF/HC群6例)で試験を行った。想定よりも症例数が少なく、対照群と比較してHF/HC群でALS機能評価スケール(ALSFRS-R)、HDLコレステロール(HDL-C)、インターロイキン6(IL-6)の各数値が高かったが、そのほかの背景因子は3群間でおおむね均衡していた。合計5ヵ月間における有害事象数は、対照群42件、HC/HC群23件、HF/HC群48件であり、HC/HC群は対照群と比較し少ない傾向があった(p=0.06、Fisher's exact test)。最も多かった有害事象は胃腸関連(栄養チューブの脱落、腹部膨満、消化不良、下痢)であった。また、重篤な有害事象数は、対照群9件、HC/HC群0件、HF/HC群3件であり、HC/HC群は対照群と比べて少なかった(p=0.0005、同)。有害事象による介入中止率は、対照群50%に対し、HC/HC群0%、HF/HC群17%であった。なお、5ヵ月間の追跡期間における死亡は、対照群7例中3例に対し、HC/HC群9例中0例(p=0.03、log-rank test)、HF/HC群8例中1例(p=0.23、同)であった。

考察

当初は、脂肪からのカロリー摂取率が高いHF/HC群において体重増加が最も大きいと推測していたが、HF/HC群ではおそらく胃腸関連の有害事象が影響して、体重はむしろ減少した。一方、月平均0.39(95%信頼区間:-0.16~0.94)kgの体重増加を達成したHC/HC群は、対照群と比較して安全性や忍容性に優れ、マウスモデルでの結果と同様に、経腸栄養でも高カロリー食が生存期間の延長に有用である可能性が示唆された。ただし、今回の検討は症例数のきわめて少ないパイロットスタディと位置づけられ、より早期の患者を対象とした大規模な試験での検証が求められる。

参考文献

1) 清家由美子, 荻野美恵子:日々少し異なる食品を摂取することが必要-ALS患者さんの経腸栄養剤中心の栄養補給法-. 難病とケア 18:61-65, 2013
2) 沖野惣一、湯浅龍彦:ALS患者の栄養管理の特殊性. 臨床栄養 114: 753-757, 2009
3) 清水俊夫:栄養障害の診かたと栄養管理. Medicina 51: 1304-1306, 2014

SAJP.RIL.19.08.2147

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