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ALS海外文献

ケア

外傷と筋萎縮性側索硬化症の関連:集団ベースのレジストリによる症例対照試験 Trauma and amyotrophic lateral sclerosis: a case–control study from a population-based registry.

Pupillo E, Messina P, Logroscino G, Zoccolella S, Chiò A, Calvo A, Corbo M, Lunetta C, Micheli A, Millul A, Vitelli E, Beghi E, EURALS Consortium.
Eur J Neurol, 2012;27, doi: 10.1111/j.1468-1331.2012.03723.x. [Epub ahead of print].

抄録・解説 LTTプログラム委員 尾野精一先生

背景および目的

筋萎縮性側索硬化症(ALS)に及ぼす外傷の影響については多くの研究報告があるが、それらの結果は一致していない。そこで今回、イタリアで大規模な症例対照試験を実施し、ALSと外傷の因果関係について評価を行った。本研究では、「ALS患者は一般の集団よりも、外傷歴を有する割合、反復して外傷を受けた割合、またはより重症の外傷を受けた割合が高い」という仮説を立て、検証を行った。

方法

2007年9月~2010年4月にイタリアの4つの行政区において、集団ベースのレジストリに登録された18歳以上のALS患者を対象とした。各症例に、年齢差±5歳、性別、居住区が一致する院内対照を2例ずつ選んだ。院内対照の1例目はアルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病を除く神経性疾患患者(NC)、もう1例は整形外科または外科患者を除く非神経性疾患患者(NNC)とした。外傷イベントは医療的ケアを必要とする傷害と定義し、傷害の種類、部位、タイミング、重症度、合併症を記録した。傷害の詳細は、患者または代理人から面談で聴取した。χ2検定を用いた単変量解析により、ALS群と対照群の外傷歴を比較した。また、ロジスティック回帰モデルを用いた多変量解析を行い、外傷イベントの有無、外傷イベントの回数、最も重度の外傷イベントの重症度、入院を要した外傷イベントの回数、障害の原因となった外傷イベントの回数を危険因子として、ALSの発症リスクをオッズ比および95%信頼区間(CI)で評価した。なお、多変量解析では、年齢、性別、学歴、回答者(患者自身または代理人)、身体活動度、喫煙歴、アルコール歴、コーヒー摂取歴による調整を行った。

結果

ALS患者458例および院内対照820例(NC:413例、NNC:407例)が組み入れられ、有効解析対象症例は各377例であった。1回以上の外傷イベントは、ALS群225例(59.7%)、NC群191例(50.7%、p<0.05)、NNC群179例(47.5%、p<0.01)であり、ALS群に多く認められた。傷害の好発部位は脚、腕、頭の順で、ALS群と対照群の間に有意差が認められた部位は、その差が大きい順に腕、頭、腹、脊椎であった。傷害のタイプとしては骨折が最も多く、挫傷、脳震とうの順となり、それぞれがALS群で対照群よりも多く認められた。さらに、ALS群324例、全対照群(NC群+NNC群)724例を対象として多変量解析を行ったところ、1回以上の外傷イベントに対するALS発症のオッズ比は1.63(95%CI:1.25~2.14、p<0.01)、3回以上の外傷イベントでは3.07(95%CI:1.86~5.05)、重症の外傷イベントでは2.44(95%CI:1.36~4.40)であった。なお、これらオッズ比は、ALS発症から5年および10年以上前の外傷イベント、12ヵ月以内に診断されたALS患者および患者自身による回答に限定して解析を行った場合、有意に高かった。

結論

ALS患者では、非ALS患者と比較して、外傷歴をもつ割合、反復して外傷を受けた割合、重症の外傷を受けた割合が高かった。よって、外傷は後にALSを発症するリスク因子となり、反復して外傷を受けた場合、また外傷が重症である場合は、そのリスクは高くなる可能性があると考えられる。

参考文献

1)中野今治:筋萎縮性側索硬化症の原因と新しい治療法. 医学のあゆみ 別冊神経疾患state of arts Ver. 1: 496-499, 1999

SAJP.RIL.19.08.2147

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