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ケア

筋萎縮性側索硬化症患者の呼吸機能と介護者の苦悩レベルとの相関に関する研究 Respiratory function of people with amyotrophic lateral sclerosis and caregiver distress level: a correlational study.

Pagnini F, Banfi P, Lunetta C, Rossi G, Castelnuovo G, Marconi A, Fossati F, Corbo M, Molinari E.
Biopsychosoc Med, 2012;6: 14. [Epub ahead of print].

抄録・解説 LTTプログラム委員 尾野精一先生

背景

筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の大部分は、呼吸不全または肺炎で死亡する。ALSの治療において、患者とともに生活する介護者の役割は重要であり、介護の質のみならず患者の生活の質(QOL)にも影響する。しかし、患者の日常介護には時間がかかるため、介護者は生活に制限を受け、身体的・情緒的問題で苦悩することが多い。ALSが介護者の生活に及ぼす影響についての報告は過去にもあるが、介護者の生活がALSの病態に及ぼす影響についての報告はほとんどない。そこで本研究では、介護者の苦悩レベルがALS患者の呼吸機能に影響を及ぼすと仮定し、検証することを目的とした。

方法

ALS患者40人とその介護者を対象とし、断面調査を実施した。ALS患者については、呼吸機能を咳嗽時の最大呼気流速(peak cough flow:PCF)および背臥位での努力性肺活量(forced vital capacity:FVC)、社会的援助に対する認知度をMcGill Quality of Life sub-scale(MQOL-SS)を用いて評価した。一方の介護者については、介護の負担感をZarit指標(Zarit Caregiver Burden Interview:ZBI)、抑うつ状態をBeck Depression Inventory-Ⅱ(BDI-Ⅱ)、状態不安および特定不安をState-Trait Anxiety Inventory(STAI)を用いて評価した。なお、すべての変数の相関をPearsonの積率相関係数 r を用いて両側検定を行い、Bonferroniの補正を行った。

結果

ALS患者の呼吸機能を表すPCFとFVCは、互いに高い相関性を示した(r=0.585;p<0.01)。また、PCFはSTAI、BDI-Ⅱ、ZBIと同様の相関が認められた(それぞれr=-0.525;p<0.01、r=-0.622;p<0.01、r=-0.354;p<0.05)。FVCも介護者の不安、抑うつ、負担感を表すSTAI、BDI-Ⅱ、ZBIと負の相関関係が認められた(それぞれr=-0.508;p<0.01、r=-0.606;p<0.01、r=-0.418;p<0.01)。患者による社会的援助に対する認知度を表すMQOL-SSは、呼吸機能と有意な正の相関を示し、PCF(r=0.391;p<0.05)、FVC(r=0.688;p<0.01)であった。なお、介護者のSTAI、BDI-Ⅱ、ZBIは互いに正の相関を示す一方で、患者のMQOL-SSとは負の相関が認められた。すなわち、患者の呼吸機能は、自身の社会的援助に対する認知度が増加するのに伴って、また介護者の苦悩レベルが減少するのに伴って、改善されるという相関関係が認められた。

考察および結論

ALS患者の介護者における苦悩のレベル、患者の社会的援助に対する認知度および呼吸機能には、互いに相関関係があることが見出された。この原因と結果の方向性について、一見すると、患者の臨床状態のほうが介護者の苦悩レベルに影響するようにみえるが、逆の説明も可能である。すなわち、患者の社会的援助に対する認知度が高く、介護者が心理的に健康な状態であれば、患者の呼吸能力が向上するというものである。この仮説に従えば、家庭における介護環境の改善を通じ、介護者の不安、抑うつ、負担感を管理することによって、ALS患者の呼吸状態によい影響を与える可能性がある。

参考文献

1)川井 充:筋萎縮性側索硬化症・筋ジストロフィーの呼吸不全:診断と治療. 呼吸器ケア 6: 82-87, 2008

SAJP.RIL.19.08.2147

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