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ケア

NIPPV:カナダALSセンターでの普及率、使用へのアプローチ、および使用を妨げる障壁 NIPPV: Prevalence, Approach and Barriers to Use at Canadian ALS Centres.

Ritsma BR, Berger MJ, Charland DA, Khoury MA, Phillips JT, Quon MJ, Strong MJ, Schulz VM.
Can. J. Neurol. Sci. 2010; 37:54-60.

抄録・解説 LTTプログラム委員 尾野精一先生

はじめに

非侵襲的陽圧人工呼吸療法(non-invasive positive pressure ventilation:NIPPV)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の呼吸不全の初期管理における標準的治療法として一般に認められるようになってきた。しかしその普及率には大きなばらつきがある。英国の神経科医265名への調査では、NIPPV使用率は患者の約2.6~3.5%であったが、その30%が3名の医師からの処方であった。また欧州のALS専門医110名への調査では、NIPPVを日常的に提供している医療機関は約56%にしかすぎなかった。米国の最近のデータではALS患者の7~15.6%がNIPPVを利用していると推定されており、また日本では、NIPPVではなく、気管切開を伴う侵襲的人工呼吸療法(invasive mechanical ventilation via tracheostomy:TV)が一般的である。現在、カナダのALSセンターでのNIPPV普及率は不明である。 NIPPV導入率にばらつきがある主な原因として、導入基準に関する合意の欠如や、診療ガイドラインの遵守を妨げる患者および医療システム上の問題が考えられる。

目的

以下の事項について、カナダのALSセンターの評価を行う:1) NIPPVおよびTVの普及率、2) 現在採用されている導入基準に焦点をおいたNIPPV使用へのアプローチ、および3) NIPPV使用を妨げる障壁。

方法

記述的調査研究デザインを用いて、カナダの15の総合ALSセンターの代表医師から、定量的データ並びに自由回答形式の質的質問に対する回答を得る。質問は6つのサブカテゴリー(医師の専門、人口統計学的データ、NIPPV利用の機会、NIPPV使用の認知、NIPPV導入への医師のアプローチ、概評)からなる。

結果

15の総合ALSセンターのうち11センターから回答が得られた(回答率73.3%)。主な結果は以下の通りである:
1) カナダのALSセンターでのNIPPVおよびTVの使用は、それぞれ患者の18.3%および1.5%であった。
2) NIPPV導入の最も重要な指標は、呼吸不全の症状、すなわち起座呼吸(10点評価で9.00±1.48)、呼吸困難(8.27±1.95)、および朝の頭痛(7.55±1.21)であった。
3) NIPPVの利用を妨げる主な障壁は、患者がNIPPVの使用に耐えられなくなること(15センターの70%)と呼吸器専門医・人工呼吸器技術者の不足(15センターの50%)であった。

結論

NIPPV利用にばらつきがあることは、カナダのALS患者の管理に影響を及ぼしている。全てのALS患者に対する最適ケアを確保するためには、呼吸症状を重視したより明確なNIPPV導入基準の確立と、NIPPV利用における障壁の低減を目標とすべきである。

参考文献

尾野精一:筋萎縮性側索硬化症(ALS)の呼吸障害. 内科 103(6) : 1511-1515, 2009

SAJP.RIL.19.08.2147