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乳児型ポンぺ病(糖原病II型)の臨床と治療 【監修】国立精神・神経医療研究センター病院 名誉院長 埜中 征哉

ポンぺ病(糖原病II型)とは

ポンぺ病は、先天的な遺伝子異常による酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の欠損または活性低下により引き起こされる疾患です。ポンぺ病の病型は発症時期により、乳児型、遅発型(小児型・成人型)に分類されます。 乳児型ポンペ病は、重度の心臓障害と筋力低下という典型的な臨床症状を呈します。さらに通常、生後数ヵ月で発症し、急速かつ致命的な徴候や症状の進行をみます。


乳児型ポンぺ病の主な臨床症状

Hirschhorn R, et al.: Glycogen Storage Disease Type II: Acid α-Glucosidase (Acid Maltase) Deficiency.
In: The Metabolic & Molecular Bases of Inherited Disease. New York: McGraw Hill; 2001, p3389-3420を参考に作成

乳児型ポンぺ病の診断チャート

乳児型ポンぺ病の診断チャート

乳児型ポンぺ病に対する酵素補充療法の有用性

ポンぺ病と診断された場合は、マイオザイム点滴静注用50mg〔アルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)〕による酵素補充療法による治療を行います。


侵襲的人工呼吸器の使用(海外データ)<海外第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験>[主要評価項目]

主要評価項目であるKaplan-Meier法により求めた生後18ヵ月時における生存率および侵襲的人工呼吸器の無使用率は、ヒストリカルコントロール※では1.9%(95%信頼区間:0.0~5.5)、マイオザイム 投与試験では88.9%(95%信頼区間:74.4~100)でした。


対 象 生後6ヵ月以下の乳児型ポンぺ病(糖原病Ⅱ型)患者18例
方 法 無作為化多施設非盲検用量設定試験。マイオザイム20mg/kg(n=9)または40mg/kg(n=9)を2週間ごとに52週間静脈内投与し、マイオザイムの有効性および安全性を検討した
*:40mg/kg 承認外用量
主要評価項目 52週後までの生後18ヵ月における侵襲的人工呼吸補助なしでの生存率
副次評価項目 生後12 ヵ月における侵襲的人工呼吸補助なしでの生存率/生後18 ヵ月における人工呼吸補助(侵襲的又は非侵襲的)なしでの生存率/左室心筋重量(LVM) 及び左室心筋重量係数(LVMI)の変化量/身長及び体重の変化量
安全性 18例中11例で、infusion associated reaction( IAR:本剤投与中または投与終了後数時間以内に発現した有害事象のうち、本剤の投与との関連性が否定できない有害事象)を224件示したが、すべて軽度から中等度であり、重度のものはなかった。最もよくみられたIARは、蕁麻疹(47件)、発熱(27件)、酸素飽和度低下(24件)であった。 IARは、通常、投与速度を遅くしたり、投与を中断したりすることによりコントロールし、IARを示した11例すべてが後遺症なしに回復した。治療を中止した患児はいなかった。
利益相反 米国Genzyme社は本試験の実施に財政的支援を提供した。/本論文の著者の一部は米国Genzyme社の社員である。/本論文の著者の一部は米国Genzyme社から財政的支援を受けている。
   
承認時評価資料、Kishnani PS, et al.: Neurology 68(2): 99-109, 2007
http:【用法・用量】 通常、アルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として、1回体重1kgあたり20mgを隔週点滴静脈内投与する。
監修者のことば
国立精神・神経医療研究センター病院 名誉院長 埜中 征哉

ポンぺ病(糖原病II型)は先天的な遺伝子異常による酸性α-グルコシターゼ(GAA)の欠損または活性の低下を原因とする希少疾患であるため、日常診療ではなかなか診療する機会がないかもしれません。ポンぺ病は進行性の難治性疾患として指定されているライソゾーム病に分類され、未治療の場合は死に至る疾患です。しかし、現在は酵素補充療法による治療が可能であるため、早期に診断し、治療を開始することが重要です。乳児型ポンぺ病は出生時には明らかな症状がみられませんが、生後数ヵ月以内に急速に進行するのが一般的です。心臓および骨格筋にグリコーゲンが大量に蓄積することによって進行性の心筋症、全身の筋力低下、筋緊張低下(フロッピーインファント)に至り、心不全又は呼吸不全により生後1年以内にほとんどの患者が死に至ります。臨床検査では、一般的に中等度の肝腫大が見つかり、場合によっては巨舌症が見つかることもありますが、最も特徴的な徴候は顕著な心肥大です。

乳児型ポンぺ病は稀な疾患であるため、発症から診断までの貴重な時間が失われることが多くみられます。ポンぺ病と類似した徴候を示す疾患を鑑別するために重要な検査としては、酵素活性検査や筋生検がありますが、実施に時間がかかるため乳児型ポンぺ病患者に使用するには問題があります。現在、新生児スクリーニング用のろ紙を用いた簡便な方法として、簡易かつ非侵襲的にGAA活性を測定する「乾燥ろ紙血検査」が可能です。ポンぺ病の早期発見・早期治療のために、ご活用いただくことを願います。

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