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アトピー性皮膚炎におけるデュピクセント®
臨床的有用性と適正使用に向けて Vol.3

アトピー性皮膚炎におけるデュピクセント®
臨床的有用性と適正使用に向けて Vol.3

アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis:AD)治療において、2018年4月23日より「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を適応として、デュピクセント®(デュピルマブ[遺伝子組換え])が臨床使用可能となった。ADの新薬は10年ぶりであり、さらにAD治療においては初めての生物学的製剤ということで、本剤への関心・期待が高まっている。そこで、AD治療のエキスパートとしてご活躍の4人の先生方にお集まりいただき、AD治療の現状と課題、ADの病態、デュピクセントの有効性および安全性、そして適正使用の推進について、お話しいただいた。

  • 司会
    大槻 マミ太郎 先生
    自治医科大学
    皮膚科教授
  • コメンテーター
    (五十音順)
    天野 博雄 先生
    岩手医科大学
    皮膚科教授
  • コメンテーター
    (五十音順)
    井川 健 先生
    獨協医科大学
    皮膚科教授
  • コメンテーター
    (五十音順)
    戸倉 新樹 先生
    浜松医科大学
    皮膚科教授

AD治療の現状と課題

大槻:
ADの治療は、日本皮膚科学会によるAD診療ガイドライン2016年 1) に基づき行われています。診断と治療のアルゴリズムでは、確実な診断に基づくステロイド外用薬とタクロリムス軟膏を軸とした薬物療法、スキンケア、悪化因子の検索と除去などによる診療の流れが示されています。治療全体を通じて「治療アドヒアランスへの配慮」という点もポイントとなっております。また、特に重症・最重症の難治性状態のADの治療では、シクロスポリンを使う場合はステロイド外用薬との併用が推奨されていることも特徴的だと思います。その一方で、現在のAD治療に対する患者満足度はあまり高くないという報告もあるようですが、いかがでしょうか。
天野:
九州大学の中原剛士先生らが実施したADの治療満足度患者調査票(TSQM-9)を用いた調査によると、ADの治療薬に対して「極めて満足」、「とても満足」、「満足」と回答した割合は、軽症患者で45%、中等症患者で32%、重症患者で13%と、満足度は決して高いとは言えない状況です。個人的な印象として、特に中等症以上の患者さんでは満足度が低いと思います。
大槻:
満足度の低さについて、考えられる要因はありますか。
井川:
AD治療においては外用薬が長年治療の軸であり、シクロスポリンの登場によって選択肢が増えたとはいえ限界がありました。その中で患者自身が手詰まり感を感じていたことが満足度の低さの要因だと思います。「現状を打破してほしい」という患者さんの想いを反映した結果と言えるのではないでしょうか。
戸倉:
ADはコントロールすることはできるが、完治させることはなかなか容易ではないということを患者さんにお話しすることがあります。そうすると「結局治療しても良くならないのでは」という考えに繋がり、満足度が低くなるということもあると思います。また、難治症例ではシクロスポリンを追加して改善が得られても、投与中止後の再燃を経験した患者さんの満足度は低いでしょう。

アトピー性皮膚炎の病態とデュピクセントの作用機序

大槻:
戸倉先生、ADの病態(図1)について解説をお願いできますでしょうか。
  • 2) Gittler JK et al. J Allergy Clin Immunol 2012;130:1344-1354.
  • 3) Guttman-Yassky E et al. J Allergy Clin Immunol 2011;127:1420-1432.
  • 4) Noda S et al. J Allergy Clin Immunol 2015;135:324-336.
  • 5) Guttman-Yassky E et al. Expert Opin Biol Ther 2013;13:549-561.
  • 6) Biedermann T et al. Front Immunol 2015;6:353.
  • 7) Gandhi NA et al. Nat Rev Drug Discov 2016;15:35–50.
  • 8) Wynn TA. Nat Rev Immunol 2015;15:271–282.
  • 9) Bai B et al. J Dermatol Sci 2007;47:259-262.
  • 10) Nomura I et al. J Immunol 2003;171:3262-3269.
  • 11) Tatsuno K et al. J Invest Dermatol 2015; 135: 3017-3024.
戸倉:
ADではTh2細胞を中心とした2型免疫応答が大きく関与しており、Th2細胞はIL-4、IL-13、IL-31、IL-5などのサイトカインを産生することが知られています。なかでもIL-4、IL-13を主に産生する細胞は、Th2細胞のほか肥満細胞、好塩基球などがあり、これらはIL-4とIL-13の受容体も有しているため、オートクライン・パラクライン機構によりこれらの細胞の活性化が促進されます。さらに、ダニ抗原などプロテアーゼ作用を持つアレルゲンやカリクレインにより刺激された表皮角化細胞から産生されるTSLP(thymic stromal lymphopoietin)はTh2細胞などに作用してIL-4産生を亢進させ、TARC(thymus and activation-regulated chemokine)の受容体であるCCR4の発現を亢進させることなどからTh2による免疫応答を増強させると考えられます。またTSLPはランゲルハンス細胞に働き、Th2細胞反応を誘導させる様に変調させる働きもあります。
 またリンパ節では、Th2細胞は、IL-4によるIgEのクラススイッチ作用でB細胞からのIgE産生を誘導します。そのほかTh2細胞が産生するIL-5は組織への好酸球の動員により炎症を促進させ、痒みに関与するIL-31は搔破行動を促し皮膚バリア機能障害や苔癬化につながります。同時にIL-4やIL-13はフィラグリンなどのバリア構成蛋白の産生を低下させるため、外部からのアレルゲンや蛋白の刺激を受けやすい状態となりTh2細胞を刺激するという悪循環に陥ります 2)-11)。以上のように、ADにおいてはTh2が中心的な役割を担っており、その中でも特にIL-4、IL-13の関与は大きいということが分かっております。
大槻:
続いて、デュピクセントの作用機序についてお聞かせください。
戸倉:
デュピクセントは、IL-4受容体αサブユニット(IL-4Rα)に特異的に結合するヒト型モノクローナル抗体で、IL-4Rαと共通γ鎖がヘテロ二量体を形成し、T細胞、B細胞、単球、好酸球などの免疫担当細胞に発現しているI型受容体と、IL-4RαとIL-13Rα1がヘテロ二量体を形成し、組織上皮細胞や平滑筋細胞と単球、活性化B細胞に発現しているⅡ型受容体に作用することで、IL-4及びIL-13のシグナル伝達を阻害します 7) 。このようにデュピクセントはADの病態において重要な役割を果たすIL-4、IL-13の働きを抑えることで炎症および痒みに対し改善効果 12) 13) を示します。

デュピクセントの臨床的有用性

大槻:
デュピクセントのAD患者さんにおける有効性についてご紹介ください。
井川:
CHRONOS試験 12) 13)は、病歴3年以上で18歳以上の中等症から重症のAD患者を対象とした国際共同二重盲検並行群間プラセボ対照比較試験です。対象患者の組み入れ基準は、日本の分類でストロングクラス以上相当のステロイド外用薬の投与で効果不十分、皮膚病変のIGA(Investigator’s Global Assessment)スコア3以上、EASI(Eczema Area and Severity Index)スコア16以上、体表面積(Body Surface Area:BSA)に占める皮膚病変の割合10%以上、週平均のそう痒NRS(Numerical Rating Scale)スコアが3点以上となっています。スクリーニングの後、デュピクセントを初回に600mg投与後、300mgを300mg/2週投与群または300mg/週(国内未承認)投与群と、プラセボ群の計3群に割付け、52週間投与されました。原則としてステロイド外用薬と保湿外用剤は併用することとされており、実臨床に近い試験デザインであると言えます。
 主要評価項目は、16週時においてEASIスコアがベースラインから75%以上改善した(EASI-75)患者の割合であり、デュピクセント300mg/2週投与群では68.9%、プラセボ群は23.2%、副次評価項目であるEASI-90(ベースラインから90%以上改善)も各々39.6%、11.1%と、プラセボ群に比べてデュピクセント300mg/2週投与群で有意に高い改善が得られました(図2)。EASIスコアのベースラインからの変化率の推移では、デュピクセントを投与開始して2〜4週で-50%を超え、16週では-80%となり52週まで継続しており、効果発現が早く長期にわたることが示されました(図3)。そう痒NRSスコアのベースラインからの変化率も、投与開始後2週時よりプラセボ群と比べ有意な低下を示し、52週にわたり維持されました(図4)。
 実臨床においてもデュピクセント投与後早期に痒みと皮疹が改善することから、CHRONOS試験の結果は納得のいくものと思います。

【目的】中等症から重症アトピー性皮膚炎の成人患者を対象に、デュピクセントとステロイド外用薬を併用した場合の長期有効性、長期安全性を評価する
【試験デザイン】国際共同、無作為化、プラセボ対照、並行群間試験
【対象】日本の分類でストロングクラス以上に相当するステロイド外用薬の投与で効果不十分な中等症から重症のアトピー性皮膚炎成人患者740例
【試験方法】最長35日のスクリーニング期間中にアトピー性皮膚炎に対する主な治療を中止し、無作為化までの7日間以上、1日2回の保湿剤の塗布を行った。デュピクセントを初回600mg、以降300mgを2週に1回皮下投与する群(300mg/2週群)、デュピクセントを初回600mg、以降300mgを週に1回皮下投与する群(300mg/週群)、プラセボを週に1回皮下投与する群(プラセボ群)に1:3:3で割り付け、すべての患者に日本の分類でストロングクラスのステロイド外用薬を併用して、52週間治療し、その後12週間追跡した。
【評価項目】主要評価項目:16週時点の①EASI-75達成率(EASIスコアがベースラインから75%以上改善した患者の割合)、IGA≦1達成率(IGAスコアが0又は1かつベースラインから2点以上減少を達成した患者の割合)
主要な副次評価項目:そう痒NRSの日内最大値の週平均(最大値は10)の以下の割合:ベースラインから16週時までの≧4点改善達成率、≧3点改善達成率
【解析計画】主要有効性解析は最大の解析対象集団(FAS)で行い、補助的な解析として治験実施計画書適合集団(PPS)でも行った。対象例数は、主要評価項目のプラセボとの差を十分な検出力で評価できるように設計した。主要評価項目は、無作為化に用いた層別因子(日本/その他の地域、及び疾患の重症度)で調整したCochran-Mantel-Haenszel検定を用いて解析した。本治験を中止した患者、救済治療が行われた患者、16週時にデータ欠測であった患者は、その時点でノンレスポンダーとして扱った。
有効性の副次評価項目の2値変数は主要評価項目と同様の方法で解析した。連続変数の評価項目は主要解析として多重代入(MI)法を用いて共分散分析(ANCOVA)モデルで解析した。救済治療後16週時までの患者の有効性データはまず欠測として取り扱い、次にMI法で補完した。主要な副次評価項目の解析では、serial gatekeeping法を用いて、2用法・用量に対する第一種の過誤を全体として0.05に制御した。各用法・用量内での各検定では、2つの主要評価項目がいずれも両側0.025の有意水準で有意であった場合、副次評価項目を事前に規定した順に階層検定手順に従って検定した。この方法で、直前の項目の解析において0.025の有意水準で統計的に有意であった場合に、次の副次評価項目について検定を行った。
【安全性】副作用(治験薬との因果関係が否定できない有害事象)はプラセボ群で29.2%(92/315例)、300mg/2週群および300mg/週群(国内未承認)を含むデュピクセント群で34.6%(147/425例)に発現した。主な副作用はプラセボ群でAD、注射部位反応等、デュピクセント群で注射部位反応、頭痛等であった。重篤な有害事象はプラセボ群で16例(蕁麻疹1例、AD1例等)、デュピクセント群で14例(AD2例、皮膚有棘細胞癌2例等)に発現した。投与中止に至った有害事象はプラセボ群で25例(AD15例、蕁麻疹1例等)、デュピクセント群で11例(注射部位反応2例、AD1例等)であった。

社内資料:国際共同第Ⅲ相ステロイド外用薬併用療法試験[R668-AD-1224] (承認時評価資料)
本試験はサノフィ株式会社及びRegeneron Pharmaceuticalsの資金提供により実施された。

社内資料:国際共同第Ⅲ相ステロイド外用薬併用療法試験[R668-AD-1224] (承認時評価資料)
本試験はサノフィ株式会社及びRegeneron Pharmaceuticalsの資金提供により実施された。

社内資料:国際共同第Ⅲ相ステロイド外用薬併用療法試験[R668-AD-1224] (承認時評価資料)
本試験はサノフィ株式会社及びRegeneron Pharmaceuticalsの資金提供により実施された。

天野:
私も同様にデュピクセント投与後に早期に痒みと皮疹、特に痒みが改善するという感触を得ています。また、IL-4及びIL-13の働きを抑えることでフィラグリンの発現が改善します 14)。その結果、皮膚バリア機能の回復も期待できます。実際にデュピクセント投与後の皮膚の状態を観察すると、肌の状態(肌質)に良い影響を与えていると思います。
戸倉:
私が診ている患者さんでも早期からの痒みの改善を経験しています。AD患者さんの多くは痒みの改善を希望されているので、デュピクセントによって痒みが軽減されることによって、患者さんの治療満足度が高まることを実感しています。

デュピクセントの安全性

大槻:
治療効果の高さは多くの医師が実感していることかと思います。一方でデュピクセントの安全性についてはいかがでしょうか。
井川:
CHRONOS試験における副作用発現率は、プラセボ(ステロイド外用薬使用)群で29.2%(92/315例)、デュピクセント群300mg/2週群および300mg/週群の合計で34.6%(147/425例)でした。デュピクセント群の主な副作用は注射部位反応、頭痛、アレルギー性結膜炎等でした。また、重篤な有害事象はプラセボ群で16例(蕁麻疹1例、AD1例等)、デュピクセント群で14例(皮膚有棘細胞癌2例、AD2例等)に認められました。投与中止に至った有害事象はプラセボ群で25例(AD15例等)、デュピクセント群で11例(注射部位反応2例、AD1例等)でした。
大槻:
安全性に関して、注意点などありますでしょうか。
戸倉:
生物学的製剤というと乾癬治療で使用される薬剤をイメージすることが多いかもしれませんが、乾癬治療に用いられる生物学的製剤に見られるような重篤な感染症などは認められておらず、投与前や投与中のスクリーニングなどは義務付けられていないという点でも使いやすい薬剤だと思います。
天野:
ADはもともと皮膚感染症リスクが高い疾患ですが、そのようなAD患者さんに使用する場合においても、デュピクセントは安全性が高く使いやすいのではないでしょうか。
井川:
結膜炎については、事前に患者さんに説明しておくことが重要ですし、場合によっては眼科医との連携も必要になってくると思います。
大槻:
いずれにしても、副作用に対してはこれまで通り注意しながら、安全に使用していくことが大事ですね。

デュピクセントの適正使用に向けて(適応患者と疾患活動性評価)

大槻:
デュピクセントの使用にあたり、厚生労働省から最適使用推進ガイドライン 15) が公表されています。「施設要件」(表1)については、ADの診断・治療に精通する医師責任者の配置が求められています。また、喘息を合併している場合はデュピクセントの投与により喘息症状が変化する可能性があります。患者さんの自己判断で喘息の治療を中止することのないよう、投与前には喘息の既往を確認し、喘息治療中であれば呼吸器内科等と連携する必要があります。また、アナフィラキシー等においても適切に対応できる当該施設又は近隣医療機関の専門性を有する医師と連携することが求められます。
 「患者要件」(表2)については、ADが確定診断され、ステロイド外用薬(ストロングクラス以上)またはタクロリムス軟膏による適切な治療を直近の6ヵ月以上行っており、これらの抗炎症外用薬による治療でも十分な効果が得られず、一定以上の疾患活動性を有する患者が対象です。従来ではこのような場合の次の一手としてシクロスポリン内服がありましたが、ここに選択肢が一つ増えたと考えるとよいと思います。重要なのは、デュピクセントはシクロスポリンと同列もしくはその前段階でも使用できる薬剤であるということです。外用薬によるプロアクティブ療法でコントロール不十分な患者さんにおいてはデュピクセントの使用を検討しても良いのではないでしょうか。
 「疾患活動性」に関しては、IGAスコア3以上、EASIスコア16以上または顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する、体表面積(BSA)に占める病変の割合が10%以上、のすべてを満たす必要があります。顔面の炎症が非常に強く、体幹・四肢の炎症が軽症という場合もあるかと思います。その場合は全身のEASIスコアが16以上にならなくても頭頸部のEASIスコアが2.4以上であればデュピクセントの投与を検討することができます。
 また、限られた診療時間内でADの重症度を評価し記録するのが難しい場合があると思いますが、特にEASIスコアを付ける際のポイントなどはありますでしょうか。

厚生労働省:抗IL-4受容体αサブユニット抗体製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について
(保医発0417第5号 平成30年4月17日)より引用,改変

厚生労働省:抗IL-4受容体αサブユニット抗体製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について
(保医発0417第5号 平成30年4月17日)より引用,改変

井川:
私の場合、全身のEASIスコアの測定には患者1人につき15〜20分程度かかります。浸潤や丘疹はできるだけその場で触診を行って評価することが理想的です。ただし、やむを得ない場合は臨床現場で一時的に評価をした上で写真を撮影しておき、後で写真を見ながらじっくり見直すといった工夫も必要な場合があります。また、毎回異なる医師が診療している場合は、医師間のスコアリングの個人差をできるだけ少なくするために、EASIスコアの測定法について勉強会を行うなど、定期的なすり合わせをしておくことが重要だと思います。
大槻:
EASIのスコアリングをする際、「皮膚症状なし=0」、「軽症=1」、「中等症=2」、「重症=3」と付けていきますが、例えば中等症と重症で判断に迷う場合に「2.5」といった付け方もされますか。
井川:
私はまず軽症と重症の臨床像をイメージしておいて、その間の臨床像は中等症と評価します。軽症、中等症、重症のどこに当てはまるのか迷う場合は中間の「1.5」や「2.5」を使うことが多いです。
天野:
私も「1.5」を使うことが多いです。スコアリングの際は、私が視診・触診を行いながら各部位のスコアを読み上げ、スコアのデータ入力は同席している医師が行うことで、時間短縮を図っています。
大槻:
評価に迷うと時間ばかりかかってしまうので、「1.5」や「2.5」を使うことが意外とコツなのかもしれないですね。ちなみに痒疹結節の場合、BSAの評価をどのようにしていますか。
戸倉:
痒疹や丘疹・結節の場合は、その皮疹を全体的に捉え炎症部位と判断し、その部位を「1%」とカウントしています。

デュピクセントの投与の継続にあたって

大槻:
デュピクセントの投与継続の患者要件については、ガイドラインでは投与開始16週後までに治療反応が得られない場合は中止する、とされています。そして、寛解を6ヵ月維持できれば、抗炎症外用薬や外用保湿薬が適切に使用されていることを確認したうえで一時中止等を検討する、とされています。ここで考えるべきことは「寛解とは何か」だと思います。私はAD患者さんに「自分の肌を自分でよく触り確認してみてください」と指導しています。特に外用治療の場合、ゴワゴワではなくツルツルの肌になるまで継続することが重要だと考えるからで、外用治療に限らずそれが寛解の一つの目安ではないかと思います。またADは繰り返す痒みがあると再燃しやすいため、痒みがない状態を維持できていることも重要と考えます。
井川:
寛解をどのように定義するかは重要ですね。実際にデュピクセント投与によりEASIスコアが大幅に改善し、いつ投与を中止するかを考え始めている患者さんがいます。このまま継続して寛解状態を6か月以上維持できた場合、投与を中止するのか、それとも継続するのかの判断は今後の患者さんとのコミュニケーションが必要だと思います。
大槻:
私の患者さんでも早期に大幅な改善が見られたケースがありました。治療開始1ヵ月の時点で投与を中止したいと申し出てきましたが、そのままデュピクセント投与を継続しています。安易な早期の投与中止は予想以上に早い段階で再燃する可能性もあります。臨床試験成績を考慮すると少なくとも6ヵ月は継続治療が必要と思われますが、この先、投与間隔延長、投与中止のタイミングや再投与に関するエビデンスを待ちたいところです。
 ところでデュピクセントの適正使用を推進する上で、患者さんにどのように説明していますか。
井川:
私は「デュピクセントを使用される患者さんへ」という冊子を活用して治療方法や有効性・安全性、喘息合併時の注意点等を説明しています。
大槻:
医療費助成制度についても記載がありますが、経済負担は患者さんにとって重要な情報ですね。高額療養費制度はもちろんのこと、学童やひとり親に対する助成制度も説明してあげることが必要です。
戸倉:
このような冊子を活用してデュピクセントの適正使用が推進されることを期待したいですね。

AD治療の展望

大槻:
AD治療の今後の展望についてお聞かせください。
天野:
ADの新薬は10年ぶりですから医師・患者ともにデュピクセントの効果を非常に期待しています。外用療法が基本であることに変わりはありませんが、デュピクセントの登場でADの治療が大きく前進すると思います。生物学的製剤の登場によって、AD患者の治療満足度がより高まることを期待しています。
井川:
乾癬領域で生物学的製剤が登場してきた時と同様に、治療をあきらめていた患者さんが治療意欲を持てるようになり、医療現場ではこの福音に高揚した感覚があります。しかし生物学的製剤だけですべての問題が解決するわけではありません。皮膚科医は正しい診断、適切な治療選択をしっかり行いながら、患者満足度の向上に努めていくことがより求められるのではないかと思います。
戸倉:
治療選択肢が増えることはとても喜ばしいことです。ただ、ADの病態は複雑で患者ごとに異なるので、皮疹の状態を見極めて個々の患者さんに対して適切な治療を行っていくために、しっかりとした知識と目を持った皮膚科医の役割がこれまで以上に重要になると思います。
大槻:
今後さらに新しい治療薬の開発が進み、AD治療はますます進歩していくと思います。デュピクセントの登場を皮切りに、多くのAD患者さんの治療満足度が向上することを期待しています。本日はありがとうございました。
  • 参考文献
  • 1) 加藤則人ほか:日皮会誌 2016; 126: 121-155.
  • 2) Gittler JK et al. J Allergy Clin Immunol 2012; 130: 1344-1354.
  • 3) Guttman-Yassky E et al. J Allergy Clin Immunol 2011; 127: 1420-1432.
  • 4) Noda S et al. J Allergy Clin Immunol 2015; 135: 324-336.
  • 5) Guttman-Yassky E et al. Expert Opin Biol Ther 2013; 13: 549-561.
  • 6) Biedermann T et al. Front Immunol 2015; 6: 353.
  • 7) Gandhi NA et al. Nat Rev Drug Discov 2016; 15: 35–50.
  • 8) Wynn TA. Nat Rev Immunol 2015; 15: 271–282.
  • 9) Bai B et al. J Dermatol Sci 2007; 47: 259-262.
  • 10) Nomura I et al. J Immunol 2003; 171: 3262-3269.
  • 11) Tatsuno K et al. J Invest Dermatol 2015; 135: 3017-3024.
  • 12) 国際共同第Ⅲ相ステロイド外用薬併用療法試験[R668-AD-1224](承認時評価資料)
  • 13) Blauvelt A et al. Lancet 2017; 389: 2287-2303.
  • 14) Hamilton JD et al. J Allergy Clin Immunol 2014; 134: 1293-1300.
  • 15) 厚生労働省:抗IL-4受容体αサブユニット抗体製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について(保医発0417 第5号 平成30年4月17日)

MAT-JP-2103452-1.0-04/2021

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