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香りの世界をのぞく3rd Season vol.1 ツバキとサザンカ

ツバキとサザンカとを香りで見分ける

サザンカは花の少ない秋晩から早春の季節を清らかな美しさで彩る。
神社やお寺の境内ばかりでなく、家の生け垣や町の道路沿いに植えられている。東京では神代植物公園、新宿御苑が隠れた名所で、京都府では三千院、寂光院のサザンカが見事と聞く。園芸品種も多く、江戸サザンカ系では白色、半八重で強健な‘雪月花’」濃桃色、半八重、大輪の‘七福神’など江戸の園芸文化の伝統を引いた花が有名である。これと並ぶものとして肥後サザンカ系がある。


サザンカはツバキ属の植物で学名をCamellia sasanquaという。英語名でもsasanquaである。漢字では山茶花をあてることが多い。ツバキとの特徴の違いは花が咲いているときに分かりやすい。花の散り方がツバキは花がひとかたまりになってそのまま落ちるが、サザンカは花びらが1枚1枚分かれて落ちて、地面を見ると落ちた花びらが広がっている。

11月の中ごろ七五三の祝いで小田原の報徳二宮神社を訪れた。境内は七五三を祝う家族で華やかににぎわっていた。着慣れない晴れ姿に女の子も男の子も動きがぎごちなく、子供の健やかな成長を願う親の気持ちが察せられ、ほほえましい。境内には薄紅色のサザンカが雰囲気に晴れやかさを加えていた。顔を近づけてみるとさわやかな甘さの中にやや埃くさい粉っぽさを感じた。


交通の激しい幹線道路沿いの街路樹として用いられているサザンカも季節になると立派に花を咲かせている。公害にも強い樹木なのだろう。道路沿いの街路樹のサザンカを嗅いでみるとツバキの花とは粉っぽさが違う。例えば代表的なツバキのヤブツバキ(Camellia japonica)は花粉のイメージの粉っぽさで花らしいイメージが強い。ところがサザンカはその粉っぽさにやや埃くささを感じる。道路沿いは車の行き来や人の往来も多いのでどうしても埃くさくなるのは当たり前で、花の香りも車公害の影響を受けるのだとなのだと最初は思った。ところが、道路から離れて静かに咲くサザンカを嗅いでみても同じように埃っぽい粉くささを感じることが分かった。とんだ思い違いだった。

この違いは何に由来するのだろう。分析してみるとヤブツバキにはなくてサザンカには含まれるアセトフェノンという成分が見つかった。アセトフェノンを嗅いでみるとサザンカを嗅いだときのやや埃くさい粉っぽさを確かに感じた。

それ以来、花の散り方や葉縁の細かい鋸歯の有無などの特徴の違いとは別に、花の香りでもサザンカとツバキを識別するようにしている。その際、ツバキとサザンカの中間形態を示す交配種は、注意をしながら試す必要がある。

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