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糖尿病治療の NEW WAY SGLT2の基礎知識

SGLT2とは?

Sodium GLucose co-Transporter ナトリウム/グルコース共輸送体

SGLTとは、Sodium GLucose co-Transporter(ナトリウム・グルコース共輸送体)の略で、体内でグルコース(ブドウ糖)やナトリウムなどを細胞内に取り込む役割を担う、「共輸送体」と呼ばれるタンパク質の一種です。SGLTにはさまざまな種類(サブタイプ)があり、SGLT2はその中のひとつです。

腎臓におけるSGLT2の役割

SGLTの種類はいろいろあり、体内のさまざまな場所に存在していますが、SGLT2は腎臓の近位尿細管に局在しているのが特徴です。

腎臓は血液に含まれるタンパク質の老廃物やグルコース、ナトリウム、アミノ酸、水分などをろ過し、原尿を作っています。この原尿は尿管を通って集合管へ送られますが、原尿は一日に約150リットルも作られるため、水分やアミノ酸、グルコースなど、体に必要な物質を再び体の中へと再吸収する仕組みが存在します。このときのグルコースの再吸収は主に近位尿細管で行われています。

SGLT1とSGLT2は、この近位尿細管でグルコースを細胞内に再び取り込む役割を担っています。近位尿細管で再吸収されるグルコースのうち、90%はSGLT2の働きによるもので、残りの10%はSGLT1の働きによるものです。

図.腎近位尿細管におけるグルコースの再吸収機構

SGLT2発見の歴史

写真.リンゴの木

古くからリンゴやナシの樹皮を摂取すると尿糖が検出されることが知られていましたが、1835年、フランスの化学者によってリンゴの木の根(樹皮)から「フロリジン」が発見されました。

当初、フロリジンは解熱薬や抗マラリア薬として使用されていましたが、1886年に尿糖を誘発することが明らかになりました。

1970年には糖尿病の動物を用いた実験で血糖値を下げる研究用の試薬として用いられ、1987年には糖尿病のラットの実験でインスリン抵抗性の改善が認められています。

また、フロリジンは2型糖尿病の動物に投与すると、SGLT1とSGLT2の働きを阻害することによって尿糖の排泄を促し、血糖降下作用を示すことが報告されています。

しかしフロリジンは、

01 経口投与では消化管で代謝されやすく、有効な血中濃度を保つことが難しい
02 SGLT1とSGLT2の両方を阻害してしまう(非選択的)ことから、小腸に多く存在するSGLT1の阻害によってグルコース、ガラクトースの吸収を阻害し、下痢などの消化器症状が出るおそれがある
03 脳内のグルコースのレベルを低下させる可能性がある

といった理由から、フロリジンは糖尿病治療薬として実用化されませんでした。

しかし、新たな糖尿病治療のターゲットとして「腎臓」は引き続き注目されており、その課題を克服するための検討は現在も行われています。

SGLTにはさまざまな種類(サブタイプ)があります

グルコースの吸収で重要となるSGLT2ですが、このSGLT2のほかにもSGLTにはサブタイプが存在します。これらのサブタイプはそれぞれに存在する部位や機能が異なります。腎臓における糖の再吸収には、SGLT1とSGLT2が関わっています。

サブタイプ 主な発言組織 機能
SGLT-1 小腸、腎、心筋 ナトリウムとグルコース、
ガラクトースを共輸送
SGLT-2 ナトリウムとグルコースを共輸送
SGLT-3 小腸、骨格筋 ナトリウム輸送
SGLT-4 小腸、肝、腎、胃、肺 グルコース、マルトース輸送
SGLT-5 不明
SGLT-6 腎、肺、脊髄、小腸 ミオイノシトール、グルコース輸送

大野晴也 他:月刊糖尿病3(1):108-113,2011 一部改変

糖尿病患者さんでSGLTはどう働いているか

健康な人では、グルコースの供給量と利用量のバランスがとれているため、血糖値は正常範囲に収まります。また近位尿細管のSGLT2の働きによって血中グルコースのほとんどが再吸収されるため、尿糖は排泄されません。

ところが糖尿病では、過食やインスリン作用不全によって血中のグルコースの量が増加し、運動不足とインスリン作用不全によってグルコースの利用量も減少するため、血糖値が上がります。再吸収できる限度(閾値)を超えた分が、尿糖として排泄されていきますが、その程度では高血糖を下げるまでにはいたりません。

糖尿病の患者さんでは、原尿中にグルコースが大量に存在するとともに、SGLT2の発現が増加していることがわかっています。つまり、高血糖の緩和という観点では尿糖排泄が増えたほうが有利なのにもかかわらず、逆に血糖値をより高いレベルに維持するような悪循環が作られてしまっているのです。この結果、糖尿病の患者さんでは尿糖排泄と血糖がともに上昇しています。

糖尿病の患者さんにSGLT2阻害薬を投与すると、増加したSGLT2の働きを阻害し、再吸収の量が減少するため、尿へのグルコース排泄が増加し、血糖は低下します。またSGLT2を阻害する薬は、SGLT1が再吸収を行うことにより低血糖となる危険は少ないことがわかっています。

図.高血糖時のSGLT2/低血糖時のSGLT1

SGLT1の役割・機能

腎尿細管におけるグルコースの輸送に関わるSGLTには主にSGLT1とSGLT2があり、存在部位や役割が異なります。

SGLT2は近位尿細管の腎糸球体に近い部分(S1分画)に存在し、SGLT1は腎糸球体から遠い部分(S3分画)に存在します。SGLT1はSGLT2に比較し、グルコースに対する親和性が高く、強力な再吸収能を有します。従って、上流に位置するSGLT2によって再吸収しきれなかったグルコースを強力に再吸収し“Clean up”することにより、尿細管でのグルコース再吸収は2段階のシステムが備わっております。

腎尿細管でのグルコース再吸収のほかにも、SGLT1の役割には

01 心筋でのグルコースの取り込み
02 骨格筋でのグルコースの取り込み
03 脳内グルコースの取り込み
04 小腸でのグルコース、ガラクトース(果糖)吸収

SGLT1は腎臓だけではなく、骨格筋や心筋、特に小腸粘膜に多く存在しています。SGLT1は小腸において、グルコースとガラクトースの共輸送体として機能しており、遺伝的なSGLT1の機能不全によるグルコース・ガラクトース吸収不全症では、重篤な下痢症状が認められます。

SGLT2とは?

腎臓におけるSGLT2の役割

SGLT2発見の歴史

SGLTのサブタイプ

糖尿病におけるSGLTの働き

SGLT1の役割・機能

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