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2014年4月に、わが国で最初のSGLT2阻害薬が発売された。以来、次々に新しい製剤が発売され、1年以上が経過した現在では6成分7製剤が使用可能となっている。しかし、発売後に多様な副作用が報告されていることもあり、まだ十分に普及していないのが現状だ。
本剤は新規の作用機序を有する薬剤で、適切に使用すればベネフィットが得られるはずである。
そこで今回、糖尿病治療の第一線で活躍されている綿田裕孝先生に、SGLT2阻害薬への期待や、安全かつ効果的に使用するポイントについてお話をうかがった。

 

糖尿病の発症機序の1つにインスリンの作用不足があります。従来の糖尿病治療薬はいずれもインスリンの作用不足を改善するものでした。これに対し、SGLT2 阻害薬は余分な糖を尿中に排出させることで血糖値を下げるという、インスリン非依存性の作用を有するまったく新しい機序の薬剤です。インスリン作用に関与しないという点に違和感をもたれる先生方もいらっしゃると思いますし、この機序が長期的にみてどのような影響をもたらすかがまだわからないので、処方を躊躇している先生もいらっしゃると思います。

また、作用機序から予測された尿路・性器感染症や脱水等の副作用が実際に発現していますし、脱水に伴う脳梗塞や、他剤との併用による低血糖、皮疹やケトアシドーシスも報告されています。『SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation 』1) が出されていますので、日本での使用経験が蓄積されてから使いたいと考えておられる先生も少なくないと思います。

さらに、糖尿病は慢性疾患ですから、投薬期間制限があったため使いにくい面がありました。

しかし、2015年5月から投薬期間制限が解除されたSGLT2阻害薬もあります。SGLT2阻害薬の血糖降下作用を期待して、今後は処方が増える可能性が高いと思われます。


SGLT2 阻害薬の発売後、65歳以上の患者さんを対象に特定使用成績調査(高齢者)が実施され、安全性と有効性に関して、情報収集、解析が行われています。また、臨床試験の段階では想定されていなかった皮疹の発現が多く報告され、他剤との併用で重篤な低血糖も生じたことから、早急に「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」が発足され、Recommendationが出されました1)。このように、発売後早期に安全性に対する対応がとられたことは非常に良かったと思いますし、特定使用成績調査で集積されたデータはわれわれにとって非常に有益な情報となると考えます。

これまで、65歳以上の患者さんには慎重に投与したほうがよい、できれば使用は控えたほうがよいと考えられていました。日本の糖尿病患者の平均年齢が65歳2)くらいですから、それでは対象がかなり狭まってしまうと懸念していました。しかし、特定使用成績調査の結果次第では、状況は変わるかもしれません。実際にリスクが高いのは75 歳以上であり、70歳くらいまではSGLT2阻害薬の使用をためらわなくてよいとなれば、肥満を伴う高齢2型糖尿病患者さんには選択肢が増える可能性があります。

また、対象を適切に選択し、Recommendationをふまえて適正に使用すれば、安全かつ効果的に使用できると思います。臨床試験ではHbA1c、空腹時血糖値ともに低下が認められています(図1・2)。また、作用機序の異なる経口血糖降下薬との併用においてもHbA1c の低下が示されました(図3)。そのことが一般臨床医の先生方にも伝わっていると思いますので、今後は日本でもSGLT2阻害薬が普及していくのではないかと思います。

 
 

SGLT2阻害薬を第一選択として使用すべきかどうかについては、議論の余地があると思います。私自身は第三選択薬として使用することが多いですが、第一選択薬として使用できるケースもあります。例えば、肥満を伴う糖尿病患者さんで、メトホルミンに忍容性のない患者さんには第一選択薬になり得ると思います。実際、強い消化器症状を訴える患者さんや、朝夕2回で処方しても朝しか服用しない患者さんは少なくないので、そのような場合はSGLT2阻害薬に切り替えています。 SGLT2阻害薬が適しているのは、食事療法がうまくいかないような症例です。食事療法を指導しないのも、患者さんがまったくやる気がないのもよくありませんが、やってみて、現実的にうまくいかない人にとっては、助けになる薬だと思います。

そのような患者さんにSGLT2阻害薬を使用すると効果を実感し、モチベーションが向上し、食事療法にも積極的に取り組むようになったというケースもあります。安易に使って、食事療法など不要だと思われてしまうのは問題ですが、食事療法に取り組んでも成果が上がらない人には行動変容を促すきっかけになる可能性があります。

食事療法・運動療法を指導する代わりにSGLT2阻害薬を処方するのは正しい使い方ではありません。あくまでも、糖尿病治療の基本は食事療法・運動療法ですから、きちんと指導して実施状況を確認したうえで、病態を把握することが大切です。そして、病態に合わせた治療選択を行うべきです(図4)。

食事療法を指導して血糖コントロールが良好になったのなら、薬物療法は不要ですし、食事療法を指導しても血糖コントロールが不良であれば、食事療法が不十分であるか、インスリンが不足しているかのどちらかです。その点は治療戦略を考えるうえで、きちんと把握する必要があります。

SGLT2阻害薬の治療開始後は副作用にも注意が必要です。皮疹をはじめ、副作用の多くは治療開始早期に発現しています。最初は長期処方をしないほうがいいでしょう。

 

どんな薬も使ってみなければ、真価はわかりません。まずは、自分で治療効果を確かめるのが一番だと思います。それで効果が実感できると、治療対象を広げて行こうと思われるのではないでしょうか。

副作用の多くは治療開始後1~2週間で発現していますので、最初は長期処方をせず、2週間くらいで再度受診してもらうと良いと思います。また、副作用についての十分な説明と、発現時の対処法の患者指導も大切です。

SGLT2阻害薬はベネフィットがある薬剤ですから、副作用を過度に恐れて使わないのは残念です。まずは、1例に使ってみることから始め、経験を積んでいただきたいと思います。

引用文献

1)日本糖尿病学会SGLT2 阻害薬の適正使用に関する委員会. SGLT2 阻害薬の適正使用に関するRecommendation
(策定:2014 年6月13日 改訂:2014 年8 月29 日)
http://www.jds.or.jp/common/fckeditor/editor/filemanager/connectors/php/transfer.php?file=/uid000025_7265636F6D6D656E646174696F6E5F53474C54322E706466

2)JDDM 基礎集計資料(2013 年度)
http://jddm.jp/data/index-2013.html