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裵英洙の薬剤師のためのマネジメント術

デキる薬剤師になるために、なぜマネジメント術が必要なのか?

名選手は名監督にあらず――。プレイヤーとして素晴らしい人でも、マネジャーとしては力を発揮できていない場面をよく目にします。こうした状況は、「プレイ」と「マネジメント」では、役割と求められる能力が根本的に異なるために生じます。

医療現場では、チーム医療の重要性が叫ばれ、患者さんのための“全体最適”が求められています。しかし、医師や薬剤師、看護師といった高度専門職が構成する医療現場では、それぞれが専門職としての価値提供を指向し、それが高じた結果として “部分最適”に陥ってしまいがちです。

各専門職がうまく機能し、全体最適を求めながらそれぞれの価値を適切に提供するためには、プレイの視点ではなくチームを動かしていく“マネジメント”の視点が不可欠となるのです。

われわれ医療職は、薬学部でも医学部でも、その教育過程において「マネジメント」を体系的に学ぶ機会はほとんどありません。しかし社会人になり現場に出て部下をもつと、毎日がマネジメントの繰り返しです。デキる薬剤師になるためには、プレイはもちろんのこと、マネジメントができることも重要といえます。

医療コンサルタントという仕事をしていると、多くの医療職がマネジメントに悩んでいる声を耳にします。私は、マネジメントは1つの“武器”だと考えています。“武器”とは道具のことであり、上手に使うことによってよりよい結果をもたらすことができます。組織を活性化させ、より効率的でより質の高い医療の提供を可能にするのです。

病院の中の薬剤部、地域医療における薬局は、医療提供において重要な存在であり、うまく機能しないと患者さんによりよい価値を提供できません。うまく機能させるための武器が、マネジメントといえます。

本連載では、高度専門職である薬剤師の皆さんに、マネジメントという武器の特性とその使い方を紹介したいと思います。

さて、薬剤師を取り巻く環境は大きく変化し、多くの現場で「マネジメント力強化」が課題になっています。部下の指導・育成などはもとより、売上拡大やコンプライアンス(法令遵守)の強化、人員調整や成果主義の導入など、対応すべき課題は増す一方という状況下では、ますますマネジメント力が求められてきます。

しかし、いきなりマネジメントについての全てを考えようとするとお腹いっぱいになって、マネジメントを毛嫌いしてしまう方もいるかもしれません。

そこで、まずは(1)人材マネジメント、(2)業務マネジメント、(3)リスクマネジメント――の3点を考えることから始めてみましょう。今回は概略を紹介します。各視点の詳細は、今後の連載でじっくりとお伝えしていきます。

(1)人材マネジメント

医療現場は、労働集約型の現場です。人が人を診る限り、価値を創造するのは人です。従って“人材のよさ”が、提供する価値の質に直結します。マネジメントに取り組もうとする人には、まず「人材マネジメント」の大切さを知っていただきたいと思います。その基本は、部下のモチベーションを保ち、育成し、成長の評価を適切に行うことです。

人材育成とは、部下本人の視点に立てば、成長の実感をもてるようにすることです。部下は目標達成に向けて努力することによって、成長します。目標が不明瞭な場合、結果である成長も不明瞭になります。明確な目標を設定し、部下のモチベーションを保ちつつ、育成・指導を行い、成長を適切に評価する――。人材マネジメントは、この繰り返しといえます。

(2)業務マネジメント

現場では、組織全体の目標に沿った部門目標を設定し、それを達成するための具体的な施策に取り組んでいると思います。

業務マネジメントを行う上では、それぞれの施策について、誰がいつまでにどのように実行するのか、その責任と権限を明確にし、かつ施策の進捗を時間軸でフォローするといった視点が不可欠です。そのためには、業務の棚卸、業務内容の見える化、コスト管理、人材配置――などを考えることが重要です。

(3)リスクマネジメント

医療現場では常にリスクを念頭に置いて業務を遂行しなければなりません。マネジャーが多忙な業務に追われてしまうと、リスクマネジメントを忘れがちです。リスクをコントロールすることはマネジャーの仕事です。そして万一、業務の中でトラブルが発生したら、マネジャー自らが解決に当たることが基本姿勢となります。

トラブルには、早い段階で対処し、小さな芽のうちに摘む必要があります。そのためには悪い情報ほど早く伝えることを部下に徹底すること、例えばインシデントレポートがスムーズに提出される環境づくりが重要です。リスクマネジメントは“なんとなく”ではできません。マネジャーが意識して日々心がける姿勢が大切です。備えあれば憂いなし、なのです。

以上、3つの視点からマネジメントの概要を述べてきましたが、マネジメントはあくまでも“武器”です。まずは手にとって使い始めないと、上手に使えるようにはなりません。マネジメントを毛嫌いするのではなく、「使いながら覚える」意識をもち、身近なものとして考えてみましょう。

マネジメントをうまく使いこなすと、組織がうまく回ります。そうなると、部下が幸せになるだけではなく、患者さんへの提供価値が増大し、患者さん自身も間違いなく幸せになります。

デキる薬剤師を目指すなら、マネジメントの世界へ、一歩、踏み出しましょう!

裵英洙氏 撮影:まるやゆういち

裵英洙氏について
ハイズ株式会社代表取締役/医師/経営コンサルタント。1972年奈良県生まれ。金沢大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科にて博士課程修了。外科医、病理専門医として病院で勤務した後、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)で田中滋教授に師事し、医療経営、医療政策を学ぶ。現在は、医療機関の経営支援、ヘルスケアビジネスの支援などを行う。
 
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