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ムコ多糖症に気づいてあげるには、
徴候や症状を的確に鑑別することが重要です。

※株式会社エム・シー・アイ調査

ムコ多糖症は重篤な疾患です

  • ムコ多糖症は7つの病型を含む疾患群の総称で、体内のムコ多糖を分解するライソゾーム酵素が欠損することにより、全身にムコ多糖が蓄積し、全身性の多様な臨床所見を呈します1)
  • ムコ多糖症にはI型、II型、III型、IV型、VI、VII型、IX型の7つの病型があり、全体の頻度は2~5万人に1人程度と考えられています2)
  • 日本におけるムコ多糖症はII型(ハンター症候群)が約55%、I型(ハーラー症候群, ハーラー/シャイエ症候群, シャイエ症候群)が約15%であり、両者を合わせると約70%に達します2)
  • III型には原因酵素が異なる4亜種が存在しますが臨床的にはいずれも類似の所見を呈します1)。また、IV型は本来のムコ多糖症であるA型と、β-galactosidaseの欠損を原因とするB型に分類されます1)
  • それぞれの病型で重症型から軽症型まで幅広い臨床的重症度の患者が存在します1)
  • I型で重症型のハーラー症候群やII型の重症型は複数の器官に進行性の障害が生じ、小児期に死亡することが多いとされています1)
  • ムコ多糖症に共通する症状として、関節拘縮、骨格変形、低身長、特徴的顔貌、巨舌、厚い皮膚、多毛、気道狭窄、反復性呼吸器感染、難聴、心臓弁膜症、肝脾腫、臍・鼠径ヘルニア、中枢神経障害などがあります1)

器官別の症状

1)厚生労働省難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)
ライソゾーム病(ファブリー病含む)に関する調査研究班
ライソゾーム病に関して ムコ多糖症
http://www.japan-lsd-mhlw.jp/lsd_doctors_mukotatou.html
2)折居忠夫. ムコ多糖症UPDATE. 株式会社イーエヌメディックス. 2011.12

きわめて多様な臨床所見

MPSの重症度の範囲

MPSⅠ型の重症度の範囲MPSⅠ型の重症度の範囲
早期の精神発達遅滞 正常~ほぼ正常の精神発達 正常な精神発達
1 出典 英国MPS学会 ー”Survival in MPS”
※診断が確認された症例の平均年齢
10歳になる前に死亡[1] 10歳~20歳の間に死亡[1] 寿命は短くなるが、30歳を超えて生存するのが一般的※[1]
  • この疾患の臨床所見は多岐にわたります。最も重症で進行が早い病型は、MPSⅠ型ではハーラー症候群(重症型)、MPSⅡ型では重症型、また、軽症で進行が比較的緩やかな病型は、MPSⅠ型ではハーラー・シャイエ症候群(中間型)およびシャイエ症候群(軽症型)、MPSⅡ型では軽症型です。
  • MPSⅠ型の重症型では、明白かつ重篤な症状を呈するため、鑑別は比較的容易です。MPSⅡ型の重症型もMPSⅠ型と同様の臨床所見(角膜混濁を除く)が現れるため、鑑別は難しくありません。しかしMPSⅠ型、MPSⅡ型ともに軽症型は、徴候や症状が顕著でなく、一つ一つの徴候や症状は一般的な疾患と似ているため鑑別は極めて困難です。
  • MPSⅠ型およびMPSⅡ型の症状の現れ方は多岐にわたり、症状は同じでも、ごく軽症から重症まで発現の程度は様々で、進行速度も異なります。

参考文献を確認する

ムコ多糖症の手掛かり

外見から見た徴候

患者さん・ご家族からのよくある愁訴

  • 書くこと、重い物を持つこと、自分で服を着ることが難しい
  • 明るい日中は特に目が痛くなるため、帽子なしではいられない(MPSⅠのみ)
  • 私の子供は、以前は問題なくスポーツ(水泳など)ができたが、今では他の子供たちと同じようにはできなくなってしまった
  • お腹が大きく膨らんでおり、好きな服を着ることができない
  • いつも極度に疲れていて、気力が全くない
  • 短い距離でも歩くのがつらい
  • 私の子供は何度も繰り返し耳の感染症にかかっており、聴覚に障害があるのではないかと思う
  • 軟便や下痢を繰り返し、重症になることもある

患者さんの病歴

  • 幼児期に何度も他科を紹介され、いくつもの手術を経験している(鼓膜チューブ留置術、ヘルニア手術および手根管開放術等)
  • 一般的な発達の程度が兄弟姉妹と比べて遅い
  • 治療をしているが、効果が感じられない
  • 日常的な活動が困難で、運動には耐えられない

他の疾患とよく似た症状を呈します

識別診断が必要な疾患

識別診断が必要な疾患
(若年性)リウマチ性関節炎
関節拘縮
結合織の疾患(例:強皮症)
変形性リウマチ疾患
筋ジストロフィー
多発性筋炎
自己免疫疾患
ペルテス病
手根管症候群
反応性気道疾患(アレルギー、喘息)
セリアック病
  • 軽症型のMPSⅠまたはMPSⅡの患者さんは、明らかな身体症状がなく、知能も正常なことが多いことから、臨床的にMPSを疑う指標が少ないとされています。
  • あまり重要ではないと思われた症状(耳鼻咽喉の感染、ヘルニアまたは関節痛)を示す小児の患者さんが実はMPSに罹患していることがあります。

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軽症型MPSⅠ型の診断の遅れ

軽症型MPSⅠ型の診断の遅れ軽症型MPSⅠ型の診断の遅れ
  • 診断が遅れると、不可逆的な器官障害、病状の悪化、不適切な治療や処置(手術、麻酔)など、軽症型症例においてもリスクを増大させ、重篤化する可能性があります。

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器官別の手術頻度

器官別の手術頻度器官別の手術頻度
  • ほとんどの患者さんが、正しい診断を受ける前に、外科的処置を数回にわたり受けています。
  • 幼児期に他科への紹介や外科的処置を何度も経験している場合、MPSを疑う必要があります。

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