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記録集

第80回 日本血液学会学術集会 モーニングセミナー 3-13 ゴーシェ病と血液疾患

ゴーシェ病と血液疾患

ゴーシェ病と血液疾患の関連について、最近の知見を紹介する。ゴーシェ病と多発性骨髄腫の関連は以前から指摘されており、2,742例のゴーシェ病患者を対象とした解析では10例に多発性骨髄腫の合併が認められ、健常者との比較における多発性骨髄腫の相対危険度は5.90(95%信頼区間:2.82 ~ 10.82)と、他のがんよりも高い値であった13)

また、ゴーシェ病ではMGUS(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症)や多クローン性高ガンマグロブリン血症が高頻度で認められることも報告されている(14)

表 ゴーシェ病における高ガンマグロブリン血症の発症頻度

これらの関連を裏付ける基礎研究として、ゴーシェ病モデルマウスを用いた検討では、グルコシルセラミド合成酵素阻害薬(エリグルスタット)未投与のマウスでは月齢13カ月時に脾臓・肝臓においてゴーシェ細胞が出現していたのに対し、エリグルスタットを10カ月間経口投与したマウスではゴーシェ細胞の出現は認められなかった 15) 。また、エリグルスタット非投与群では約4割のマウスにM蛋白血症が出現したが、エリグルスタット投与群ではM蛋白血症の発症が抑制されたことも示されている15)

ゴーシェ病において高ガンマグロブリン血症が生じる機序としては、2型ナチュラルキラー T(NKT)細胞の活性化と、これを介したB細胞の活性化が考えられている。ゴーシェ病の病態下でグルコセレブロシダーゼの活性が低下すると、グルコセレブロシド(βGL1-22)やグルコシルスフィンゴシン(LGL-1)が細胞内に蓄積する。βGL1-22やLGL-1は抗原提示細胞にCD1d拘束性に提示され、2型NKT細胞を活性化する。2型NKT細胞の活性化が濾胞性ヘルパー T細胞の表現型を呈するサイトカインの放出、B細胞の増殖、胚中心反応などを引き起こし、また、B細胞の活性化が高ガンマグロブリン血症をもたらすという仮説である16)。これを支持するin vitroの検討として、B細胞と基質拘束性2型NKT細胞を混合して培養すると、IgGとIgMの分泌が上昇することが報告されている(図317)

図3 ゴーシェ病と高ガンマグロブリン血症

ゴーシェ病の治療

ゴーシェ病の治療法としては、酵素活性の低下を補う酵素補充療法(Enzyme Replacement Therapy;ERT)と、基質を合成する酵素の活性を抑制することで基質の蓄積を抑制する基質合成抑制療法(Substrate Reduction Therapy;SRT)が開発されている。

図4 海外第Ⅲ相臨床試験(ENCORE試験)サデルガの長期(4年)投与による臨床的安定性

ERTに関しては、日本人ゴーシェ病患者110例〔有効性解析対象51例(Ⅰ型18例、Ⅱ型16例、Ⅲ型17例)、安全性解析対象110例〕を対象としたイミグルセラーゼ(遺伝子組換え)の製造販売後調査の結果が報告されている。

イミグルセラーゼによるERT開始時と、その後の変化を検討したデータを以下に記す。

ヘモグロビン値は、ベースラインの平均10.1±2.4g/dLから、24週目には平均12.2±1.5g/dLへと改善し、以後、平均値は投与408週目まで12.0g/dL以上を維持していた。

血小板数は、ベースラインの平均10.3±7.0×104/mm3から、治療16週目には平均16.1±8.3×104/mm3と正常値まで改善した。以後、除々に増加傾向を示し、治療408週目では平均22.8±16.6×104/mm3であった。

平均肝臓容積減少率は、治療開始後24週8%(n=6)、48週20%(n=10)、72週14%(n=10)、96週31%(n=6)であった。平均脾臓容積減少率は、治療開始後24週45%(n=6)、48週48%(n=11)、72週43%(n=10)、96週では59%(n=6)であった。

ACE値は、成人では、ベースラインで平均47.1±29.9U/L(n=14)であったが、治療開始とともに低下し、治療開始24週後には平均19.8±7.5U/L(n=6)と正常化した。以降、ほぼ正常範囲で推移し、408週後では平均14.8±4.5U/L(n=3)であった。小児では、ベースラインで平均91.6±34.3U/L(n=32)と成人に比較して高値であったが、治療開始とともに低下し、24週後には平均32.7±10.7U/L(n=17)と正常化した。以降も正常範囲内で推移し、384週後では平均35.6±21.9U/L(n=3)であった。

ACP値は、成人では、ベースラインで平均40.3±18.1U/L(n=12)であったが、治療開始後低下し、24週後には平均15.1±3.9U/L(n=4)、96週後で平均13.7±6.0U/L(n=7)となり、その後はほぼ正常範囲内で推移し、288週後は11.3±1.0U/L(n=2)であった。小児ではベースラインで平均138.0±63.0U/L(n=31)と成人に比較して高値であったが、その後低下し、72週後には平均29.2±10.4U/L(n=29)と正常化し、以降も正常範囲内で推移し、384週後は平均31.5±28.8U/L(n=2)であった18)

一方、SRTの臨床成績として、ERTから切り替えたゴーシェ病Ⅰ型患者を対象に実施されたエリグルスタットの海外第Ⅲ相臨床試験では、52週の治療期間においてヘモグロビン値、血小板数、脾容積および肝容積からなる安定性の複合評価項目に関して、イミグルセラーゼに対するエリグルスタットの非劣性が示されている19)。また、同試験の延長試験では、エリグルスタットは長期(4年)にわたり臨床的安定性を維持することが示されている(図420)

おわりに

成人を診療する血液内科医にとってゴーシェ病が重要であるのは、ゴーシェ病は先天性の疾患であるにもかかわらず成人以降に発症する可能性があり、加えて血液内科医が遭遇する頻度が高い症状(脾腫、血小板減少、貧血、骨病変)を呈するためである。ゴーシェ細胞と、他の血液疾患でみられる偽ゴーシェ細胞との鑑別も求められる。また、高ガンマグロブリン血症や多発性骨髄腫が合併する頻度も高い。

何より重要なのは「診断できれば治療法がある」という点であり、一人でも多くの患者を治療につなげるためにも、血液内科医がゴーシェ病を十分に認識した上で、積極的に「疑う」ことが求められる。

    • 1) Charrow J, et al:Arch Intern Med160(18):2835-2843, 2000.
    • 2) ゴーシェ病診断・治療ハンドブック編集委員会編集・監修:ゴーシェ病診断・治療ハンドブック第2版,
      イーエヌメディックス, 2016, p.9.
    • 3) Beaton B, etal:Br J Haematol 182(4):465, 2018.
    • 4) Mariani S, etal:Acta Haematol 139(4):240-242, 2018.
    • 5) Mistry PK, etal:Am J Hematol 82(8):697-701, 2007.
    • 6) Thomas AS, etal:Blood Cells Mol Dis 50(3):212-217, 2013.
    • 7) Weinreb NJ, etal:J Inherit MetabDis 36(3):543-553, 2013.
    • 8) Charrow J, etal:Am J Hematol 90(Suppl1):S19-24, 2015.
    • 9) Mistry PK, etal:Br J Haematol 147(4):561-570, 2009.
    • 10) WeinrebNJ,etal:Blood131(22):2500-2501, 2018.
    • 11) Mistry PK, etal:Am J Hematol 86(1):110-115, 2011.
    • 12) 骨髄異形成症候群の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ:
      骨髄異形成症候群診療の参照ガイド平成28年度改訂版, 2017.
    • 13) Rosenbloom BE, etal:Blood 105(12):4569-4572, 2005.
    • 14) Arends M, etal:Br J Haematol 161(6):832-842, 2013.
    • 15) Pavlova EV, etal:J Pathol 235(1):113-124, 2015.
    • 16) Salio M, etal:Blood 125(8):1200-1202, 2015.
    • 17) Nair S, etal:Blood 125(8):1256-1271, 2015.
    • 18) 井田博幸,他:小児科診療 76(8):1325-1334, 2013.
    • 19) Cox TM, etal:Lancet 385(9985):2355-2362, 2015.(承認時評価資料)
    • 20) Cox TM, etal:Blood 129(17):2375-2383, 2017.

2018年10月14日(日) 大阪国際会議場 11階「会議室1101-2」で行われたセミナーを元に制作しております。

GZJP.CERZ.19.07.0582

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