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学会共催セミナー/フォーラム

記録集

【診療ガイドライン】ゴーシェ病ガイドラインの作成に向けた取り組み

海外におけるゴーシェ病ガイドラインの現状

ゴーシェ病の治療に関するエビデンスとしては、酵素補充療法(Enzyme Replacement Therapy;ERT)と基質合成抑制療法(Substrate Reduction Therapy;SRT)1)、および造血幹細胞移植2)に関するレビューが、コクラン共同計画により公開されている。また、エキスパートらによる診療マニュアルあるいは標準業務手順書(SOP)としては、ゴーシェ病Ⅰ型に対するSRTのガイダンス3)や成人ゴーシェ病のSOP4)、小児ゴーシェ病の評価、モニタリング、ERTのガイドライン(以上英国)5)、SRTに関するリコメンデーション(米国)6)、ゴーシェ病Ⅰ型の管理目標7)、成人ゴーシェ病Ⅰ型に対するSRTにおける管理とモニタリングのリコメンデーション(以上EU)8)などがある。

一般的に、患者背景や医療環境が異なる海外のガイドラインをわが国に外挿する際には、慎重な姿勢が求められる。特にゴーシェ病では臨床病型の分布の違いや薬剤の承認状況の違いなどがあることから、海外のガイドラインをそのまま用いることは適切ではない。そのため、わが国のエビデンスに基づくわが国独自のガイドラインの作成が求められていた。

日本での作成状況(2018年12月現在)

厚生労働省難治性疾患等政策研究事業「ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班」では、2014年よりライソゾーム病等の診療ガイドラインの作成を進めている。2017年にはポンペ病やムコ多糖症Ⅱ型等の診療ガイドラインが作成・公開された。現在は、これらに続く形でゴーシェ病診療ガイドラインの作成が進められている。本ガイドラインは、先行して作成された疾患のガイドラインと同様、「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に示された手法に準じて作成される。

図2 診断から治療までの期間と虚血性骨壊死のリスクの関係(海外データ)

ガイドラインのコンセプトをに示す。「ゴーシェ病に対する適切な診断手段の推奨」および「日本の状況に即したゴーシェ病の治療・管理の推奨」を作成目的とし、一般医家や患者家族を利用者として想定している。

ガイドラインの作成にあたっては、ゴーシェ病の概要や臨床検査と診断、治療・予後に関するクリニカルクエスチョン(CQ)を設定した。また、ERTとSRTの臨床効果に関しては関連論文のシステマティックレビュー(SR)を実施し、各CQに対する推奨文、エビデンスの質、推奨の強さおよび解説を、エビデンス総体とパネル会議・議決に基づき作成することとした。

最近では当事者によるQOL・効果評価(Patient Reported Outcome Measure;PROM)の重要性が指摘されており、ゴーシェ病も例外ではない。そのため、患者会との連携の下、聴き取った内容をガイドラインに反映させることを予定している。

ゴーシェ病診療の課題

ゴーシェ病は年齢、病型、重症度が多様であり、その症状は神経症状、骨症状、気道・呼吸器症状、循環器症状、消化器・栄養系の問題など多岐にわたる。そのため、ゴーシェ病の治療は総合診療の側面を併せ持つ。患者のニーズも多様であり、家族の身体的負担や介護離職、心理的問題、家族計画といった家族に関わる問題、あるいは教育、余暇活動、就労、倦怠感や痛みといった生活全般に関わる問題にも寄り添う必要がある。ガイドラインの作成は、こうした今まであまり目が行き届いていなかった部分への気づきを得る機会ともなっている。

    • 1) Shemesh E, et al: Cochrane Database Syst Rev; (3): CD010324, 2015.
    • 2)Somaraju UR, et al: Cochrane Database Syst Rev; (10): CD006974, 2017.
    • 3)Eliglustat for treating type 1 Gaucher disease. Published: 28 June 2017.
    • 4)Adult Gaucher Disease Standard Operating Procedures. Updated December 2012.
    • 5)Paediatric Gaucher Disease in England: Guidelines for Assessment, Monitoring, and Enzyme Replacement Therapy. Issued March 2012.
    • 6)Balwani M, et al: Mol Genet Metab 117(2): 95-103, 2016.
    • 7)Biegstraaten M, et al: Blood Cells Mol Dis 68: 203-208, 2018.
    • 8)Belmatoug N, et al: Eur J Intern Med 37: 25-32, 2017.

2018年12月1日(土) 野村コンファレンスプラザ日本橋 6階「大ホール」で行われたセミナーを元に制作しております。

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

GZJP.CERZ.19.07.0582