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学会共催セミナー/フォーラム

記録集

【症例報告】ディスカッション
在宅医療

フロアから:呼吸器症状は時として生命を脅かすことがあるため、その管理において人工呼吸療法は重要な選択肢の一つです。一方で、在宅人工呼吸療法に対応できる医師がまだ少ないことや、学校側の受け入れ体制が整っていない場合があることなど、課題が残されています。これらの課題を解決するための方策について、お考えをお聞かせください。

戸谷:様々な診療科との連携なしには、在宅医療の実践は困難です。当診療所でも、呼吸器の管理に関しては医療機器の取り扱いに慣れている小児外科医との連携の下で行っています。積極的に探せば、在宅医療に関心を寄せてくれる医師は必ず見つかると思います。そうした医師を巻き込むことによって、在宅医療の幅を広げることができるのではないかと思います。

村山:状況は地域ごとに全く異なると思いますが、当院の場合は、対応可能な範囲などについて、隣接する特別支援学校の先生と話し合いを重ねています。こうした日頃のコミュニケーションが信頼関係の構築につながり、連携の下地になっていくと考えています。容易に答えが出る問題ではなく、答えは人によっても異なると思いますが、何より大事なことは不断の努力だと思います。

高柳:千葉県こども病院は病院のすぐ隣に特別支援学校があり、学校の先生たちが院内学級に来てくれるなど、高い疎通性が保たれています。信頼関係を構築する上では良好な環境が整っていると言えますね。

パーキンソン病

フロアから:重症型のゴーシェ病にリンクするGBA変異保有者は、軽症型変異の保有者よりも重症のパーキンソン病になりやすいという報告1)がありますが、L444Pを含む重症型変異の頻度は日本人の方がユダヤ人よりも高い2,3)という遺伝子変異分布を踏まえると、日本人に発症するパーキンソン病は、より重症になる可能性が高いと考えてよいのでしょうか。

髙橋:GBA変異とパーキンソン病の臨床表現型の関連を検討した国内の報告はまだ少ないのですが、経験的には、認知機能障害や幻覚を伴うなど、重症となる方が多いという印象を抱いています。

フロアから:GBA変異保有者はパーキンソン病リスクが高いということを初めて知りました。今後、ゴーシェ病と診断した際には、将来のパーキンソン病発症リスクについて、家族や本人に説明した方がよいのでしょうか。

鎌田:一般的には、説明するという選択肢も考慮すべきだと思います。しかし、親御さんであれば将来自分がパーキンソン病になるかもしれないということを心配されると思われますので、リスクをどのように説明するか、また、不安に対してどのようにケアするかが課題となります。本日提示した症例では父親と父方の従姉妹が既にパーキンソン病を発症していますが、それ以上の説明はしていません。

髙橋:パーキンソン病リスクの詳細は、日本ではまだ十分に検討されていませんが、米国の報告では、GBA変異保有者のうち80歳時にパーキンソン病を発症しているのは約30%であることが示されています4)。見方を変えれば70%の方は80歳になっても発症しないわけですので、そのリスクを伝えるべきか、また、どのように説明するかは難しい問題です。指針を定めるためには、もう少し知見が集積するのを待つ必要があると考えています。

高柳:ゴーシェ病とパーキンソン病を研究する者同士が手を携え合って両疾患の病態解明を進め、患者さんの利益につなげていただきたいと思います。

    • 1)Thaler A, et al: Parkinsonism Relat Disord 55: 45-49, 2018.
    • 2)Horowitz M, et al: Am J Hum Genet 53(4): 921-930, 1993.
    • 3)Ida H, et al: J Inherit Metab Dis 20(1): 67-73, 1997.
    • 4)Anheim M, et al: Neurology 78(6): 417-420, 2012.

2018年12月1日(土) 野村コンファレンスプラザ日本橋 6階「大ホール」で行われたセミナーを元に制作しております。

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

GZJP.CERZ.19.07.0582