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学会共催セミナー/フォーラム

記録集

【症例報告】ゴーシェ病と骨症状
症例報告 ゴーシェ病における難治性の骨症状を経験して

症例 20歳 女性 Ⅲb型

在胎41週0日で正常分娩にて出生した。定頸4カ月、座位6カ月、つかまり立ち13カ月、歩行開始24カ月。知的発達遅滞を認めた。月齢9カ月頃より腹部膨満を認め、1歳3カ月時に近医で著明な肝脾腫を指摘されたことから当院小児科を紹介受診した。肝腫4横指、脾腫5横指触知。血小板減少(6.6×104/μL)、総酸性ホスファターゼ(ACP)高値(187μ/L)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)高値(103.2μ/L)を呈していた。骨髄穿刺ではゴーシェ細胞の蓄積が認められた。グルコセレブロシダーゼ活性の低下が示され、遺伝子検査ではL444Pホモ接合体であることが分かった。以上の所見からゴーシェ病Ⅲb型と診断された。

経過

その一方で、骨症状は進行した。6歳時より脊椎変形が進行し、胸椎の突出を認めた。両側大腿骨骨頭病変を認め、大腿骨内反骨切り術が施行された。10歳時に脊椎後弯に対して脊椎前方・後方固定術が行われた。11歳時の骨密度(橈骨遠位端)は0.371g/cm2と低値であった。

13歳時に右大腿骨骨幹部、14歳時に左大腿および右上腕骨骨幹部、15歳時に左上腕骨骨幹部に骨折を来し、それぞれに対して骨接合術が実施された。15歳時に骨折予防のために両側下腿金属棒挿入術が施行された。

以上の病的多発骨折はいずれも軽微な動作で生じているため移動時の車の振動などにも留意が必要で、通院には大型の電動車椅子を使用としている。17歳時に内科に転科となった。

最近は2週間ごとの通院までの期間に必ず発作性の骨痛が生じている。骨痛部位は手指や足趾、あるいは四肢の骨の骨幹部が比較的多いものの不定で、局所の腫脹、圧痛、熱感を認めた。発作は2~3日間の安静のみで軽快することから、軽微な骨クリーゼと考えられた。現在は酵素補充療法とともに骨病変に対する対症療法を行い、その有効性・安全性を評価している。

Comment ゴーシェ病における骨症状診断と病態マネジメント

骨症状はゴーシェ病の主要な症状の一つであり、マクロファージに蓄積したグルコセレブロシドが骨髄に浸潤することによって引き起こされると考えられている。

ゴーシェ病レジストリー登録患者1,441例のデータでは、ゴーシェ病患者の63%に骨痛、94%に何らかの骨病変のX線所見が認められている1)。また、全体の約半数が10歳までにゴーシェ病と診断されていたが1)、こうした若年例では特に骨の成長期に骨病変が進行するため、正常な骨の形態、骨量を獲得することができず、骨強度が低下することが問題となる。

骨減少症、骨クリーゼ歴、その他の骨病変など一つ以上の骨症状を呈する未治療のゴーシェ病Ⅰ型患者33例を対象としたコホート研究では、骨痛を訴える患者の割合は酵素補充療法開始後3カ月の時点から低下し、その効果は48カ月時まで持続することや、腰椎および大腿骨頸部の骨密度Zスコアの改善などが示されている2)。一方で、酵素補充療法開始48カ月後も何らかの骨の痛みが残存する患者が約4割存在することが示されている2)。酵素補充療法を継続しつつ、骨症状に有効な対症療法の併用を検討することが重要である。

    • 1)Charrow J, et al: Arch Intern Med 160 (18): 2835 -2843, 2000.
    • 2)Sims KB, et al: Clin Genet 73(5): 430-440, 2008.

2018年12月1日(土) 野村コンファレンスプラザ日本橋 6階「大ホール」で行われたセミナーを元に制作しております。

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

GZJP.CERZ.19.07.0582