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学会共催セミナー/フォーラム

記録集

【症例報告】ゴーシェ病とパーキンソン病
症例報告 パーキンソン病を合併したゴーシェ病の1例

症例 53 歳(現在) 男性

本症例は正期正常分娩で出生し、幼少時の発達は正常であった。父親が65歳時に、父方の従姉妹が40歳時に、それぞれパーキンソン病を発症していた。6歳時に肝脾腫を指摘され、骨髄生検でゴーシェ細胞が検出されたことからゴーシェ病と診断された。

経過

7歳時に最初の全身性強直性けいれんを認め、28歳時に大腿骨頭壊死に対して人工関節置換術が行われた。32歳時より酵素補充療法が開始され、肝脾腫および骨関節痛の改善を認めた。また、二度目の全身性強直性けいれんを認めたことから抗けいれん薬の投与が開始された。

34歳時に四肢の運動障害(固縮)、35歳時に無動、小刻み歩行が出現し、36歳時に歩行不可となった。39歳時に神経内科を受診し、パーキンソン病と診断された(ホーン-ヤールの重症度4)。L-ドパ製剤の投与開始後、車椅子依存から独歩可能な状態へと運動障害の改善を認めた。

41歳時にwearing-offが出現。42歳時に施行した脳深部刺激療法後に消失したものの、44歳時に再発した(重症度4~5)。45歳時に嚥下障害が出現し、嚥下性肺炎を繰り返すようになった。46歳時に胃ろう造設、気管切開が行われ、長期療養のため当院に転院となった。48歳時に喉頭摘出術を施行した。

53歳となった現在、重症度5の状態であるが胃ろうによる経管栄養と永久気管孔による気道確保の実施により、全身状態は安定している。肝脾腫、骨関節痛、貧血、血小板減少などのゴーシェ病の症状は認めておらず、全身性強直性けいれんの発作もみられていない。

本症例およびその家系の遺伝子検査により、本症例はL444P/F213Iのグルコセレブロシダーゼ遺伝子(GBA)変異を持つ複合ヘテロ接合体であることが確認された。また、パーキンソン病を発症した父親および父方の従姉妹は、いずれもGBAヘテロ変異を有するゴーシェ病保因者であることも分かった。

考察

若年発症のパーキンソン病を合併したゴーシェ病の症例を経験した。ゴーシェ病患者の家系調査1)では、GBAのホモ変異を有するゴーシェ病患者だけでなく、ヘテロ変異を有する保因者も高率にパーキンソン病を合併していることが示されている。また、世界16施設のパーキンソン病患者5,691例を対象とした国際共同研究2)では、パーキンソン病患者の7%がGBA変異を有し、GBA変異保有者におけるパーキンソン病発症のオッズ比は6.51〔95%信頼区間(CI)3.62-11.74〕であることが示された。さらに、日本人のGBA変異保有者におけるパーキンソン病発症リスクは約30倍で、欧米人と比べて著しく高いことも分かった。

ゴーシェ病患者の治療およびフォローアップにおいては、家系内のGBA変異保有者を含めてパーキンソン病発症リスクが高いことを念頭に置き、その徴候を見逃さないように留意すべきである。

Comment ゴーシェ病とパーキンソン病

パーキンソン病患者がGBAのヘテロ変異を持つ頻度は、対照に比べて顕著に高い〔オッズ比28.0(95%CI7.3-238.3)〕3)。そのため、脳神経内科医は日常診療においてGBA変異を持つパーキンソン病患者を診療する可能性がある。また、ゴーシェ病患者の両親は必然的にGBAヘテロ変異保有者であるため、パーキンソン病発症の高リスク群である。

パーキンソン病患者の脳ではα-シヌクレインの発現が増加していることから、α-シヌクレイン発現の質的・量的変化が、パーキンソン病の病態形成に関与していると考えられている。α-シヌクレイン病理はGBA変異によって加速するのみならず、α-シヌクレインがGBA活性に影響することが知られており、両者の研究は相補的に役立つ可能性が高い。ゴーシェ病とパーキンソン病の臨床および研究に携わる人々の連携が、臨床的にも研究的にも重要になっていくと考えられる。

    • 1)Lwin A, et al: Mol Genet Metab 81(1): 70-73, 2004.
    • 2)Sidransky E, et al: N Engl J Med 361(17): 1651-1661, 2009.
    • 3)Mitsui J, et al: Arch Neurol 66(5): 571-576, 2009.

2018年12月1日(土) 野村コンファレンスプラザ日本橋 6階「大ホール」で行われたセミナーを元に制作しております。

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

GZJP.CERZ.19.07.0582

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