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学会共催セミナー/フォーラム

記録集

【症例報告】ゴーシェ病における在宅医療
ゴーシェ病とともに生きる~いのちの輝きと向き合う小児在宅緩和ケア~

小児緩和ケアの本質

児が致死的な疾病や障害を持つことは両親に特別な悲嘆をもたらす。これらは時に共有できない苦悩となり心理社会的に様々な孤立を引き起こし得る。アウトリーチとしての在宅資源は、これらにより引き起こされる様々な困難に対する実利的支援を通して介入する、有用な手段である。

おうちで暮らすことは児と家族が新しい希望のストーリーを紡ぎ直す再出発でもある。小児の緩和ケアでは、特別な喪失の悲嘆に対するケアニーズと期待される発育への支援ニーズが相まって求められる。

困難を乗り越え「児が伸びゆく存在である」と実感できると両親の児の受容と自己への赦しが促されていく。在宅における小児緩和ケアでは医療福祉社会資源の助けを借りながらこれらの環境心理(きっかけ)を構築することが求められる。

症例 4 歳(現在) 女児 Ⅱ型

在胎38週、出生体重3,146g。精神運動発達遅滞・呼吸障害・てんかん発作を主訴に精査の末、生後8カ月時にゴーシェ病Ⅱ型と診断。酵素補充療法が開始され、生後10カ月時に胃ろう造設、生後11カ月時に気管切開が行われた。1歳時に東京へ転居、大学病院へ紹介されたのち1歳1カ月時に退院し当院訪問診療が開始された。

初診時、覚醒時の強い筋緊張と疼痛症状を認め日常生活・睡眠に困難を伴う状態であった。訪問看護師による医療ケア支援を開始した。病状は進行し強いジストニア症状と失調性呼吸を伴う呼吸不全増悪を経て1歳4カ月時に人工呼吸器を導入。通院がより困難となり酵素補充療法を3カ月ごとの病院評価と併診で訪問診療を開始した。

2歳2カ月時、胸部X線にて間質性陰影の増大・肝腫大の増悪・貧血の進行・ACE高値・酸素需要量の増大、また酵素補充の際の高熱の持続が認められた。補充酵素に対して、それ以前に投与していた製剤と同様に抗体産生を認めた。酵素補充に耐性が生じており原病の急峻な進行が示唆され告知。病状が悪化した際の児にどこで治療をするか、どこまで治療を行うかについて家族に考えてもらう(Advance Care Planning;ACP)ことについて提示した。病状の悪化は自己抗体の産生による補充酵素の失活と免疫反応が要因と評価。メチルプレドニゾロンの前投与を行い投与後の高熱症状が徐々に軽快。またジストニア症状に対するオピオイドを含む薬物療法が緩和的に奏効した。危機的状況を脱したことで、3歳2カ月時より日帰り旅行が複数回実現。重症児とその家族の旅行を支援する「ちいの会」が企画する東伊豆旅行への宿泊が実現した。3歳10カ月時より訪問リハビリテーションを導入。体性疼痛を緩和する視点を持った理学療法と遊びを基軸とした作業療法を開始。3歳11カ月時には、初めて電車での家族旅行も実現した。

考察

本症例では原病の悪化と治療の困難により生活の安寧が保てなくなる危機的状況と病状の回復を通して、児の「いのちの輝き」と向き合う家族の姿がみられた。暮らしの現場から、難病のお子さんを医療福祉社会的に支援することは、病児の「いのちの輝き」をより深く見つめるきっかけとなり得ると考えられた。

Comment ゴーシェ病における在宅医療

ゴーシェ病を対象とした在宅医療を進めていく上で大切なことは、開業医や地域の訪問看護師との連携をしっかりと行うこと、家族および在宅医に対して自分たちが最終的な受け皿になると宣言すること、レスパイト施設と良好な信頼関係を保つことだと感じている。また、神経型ゴーシェ病の在宅緩和ケアにおいて、人工呼吸療法は非常に重要な医療サポートである。

ゴーシェ病の神経症状は多様であり、その病態解明は今なお十分ではない。加えて、現行の治療法は神経症状に対する効果は期待できないため、神経型ゴーシェ病に対する治療は依然として緩和的治療の域を出ていない。ゴーシェ病を克服するために、神経症状に対して有効な治療法の確立が望まれる。

2018年12月1日(土) 野村コンファレンスプラザ日本橋 6階「大ホール」で行われたセミナーを元に制作しております。

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

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