文字サイズ

心症状

原因不明の心筋症、もしかしたらファブリー病かもしれません

先生は、ファブリー病についてどのようなイメージをお持ちでしょうか?
ファブリー病は、ライソゾーム病の1つであり、細胞のライソゾーム内で働く酵素であるα-ガラクトシダーゼ(α-Gal)の活性低下あるいは欠損により、グロボトリアオシルセラミド(GL-3)が体内のさまざまな細胞に蓄積し、多様な症状を呈する進行性の疾患です1)。ファブリー病における心症状としては、左室肥大、非対称性中隔肥大、右室肥大などがみられます1)。一方で、日本人により同定された心症状のみに限局した亜型の「心ファブリー病」もあるため1)、学会等でファブリー病に関する報告を耳にされた先生方もいらっしゃるのではないかと思います。ファブリー病は、先生が日常診療で診ておられる患者さんの中にもいらっしゃる可能性があり、循環器症状としては下記のような多様な症状がみられます(図1)。
また、日本人ファブリー病患者の臨床症状の累積罹患率をみると、左心室肥大は40代以降に男性・女性共に高率で発症します(図22)

<図1 ファブリー病の循環器症状>
図1
衞藤義勝. ファブリー病 UpDate, 2013, 診断と治療社 より作成
<図2 日本人ファブリー病患者の臨床症状の累積罹患率>
図2
Kobayashi M, et al.:J Inherit Metab Dis. 2008; 31(Suppl 3):S483‒S487.より改変

心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)にも記載されているファブリー病

今年の4月に改訂されました心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)では、心筋症の定義と分類の図が掲載されており、鑑別すべき疾患(二次性心筋症)の1つとして、ファブリー病が挙げられています(図33)。また、本ガイドラインの本文中にも、「蓄積疾患や心臓外病変を有する全身疾患に伴う心肥大については、肥大型心筋症類似の病態を呈する二次性心筋症として区別する。二次性心筋症は、原因によっては疾患特異的な治療法があることに留意すべきである。ファブリー病は、酵素補充療法が導入されてから10年以上が経過し、その有用性は確立している」と明記されており、ファブリー病の鑑別が重要であることが伺えます。

<図3 心筋症診療ガイドラインにおける心筋症の定義と分類>
図3
日本循環器学会/日本心不全学会. 心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_tsutsui_kitaoka.pdf(2019年8月閲覧)

原因不明の左室肥大や肥大型心筋症に潜むファブリー病

原因不明の左室肥大や臨床的に診断された肥大型心筋症(HCM)を診られた際には、ファブリー病を考慮して、診断を進めて行く必要があります。それは、臨床的に肥大型心筋症と診断された患者において、ファブリー病や心ファブリー病がより高い頻度で潜在していたことが明らかになったからです。例えば、男性については左室肥大患者を対象とした調査ではわが国では3%、チェコでは4%、HCM患者を対象にした英国の調査では4%、女性についてはイタリアでの12%といった報告があります4)

ファブリー病の心症状に関連する臨床検査所見

ファブリー病の心症状に関連する臨床検査所見は、心電図や心エコー図、ガドリニウム造影MRI、冠動脈造影に基づき、以下の表に示す通りです(表14)

<表1 臨床検査所見>
表1
ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会 編. ファブリー病診断治療ハンドブック改訂第3版, 2018, E・N MEDIX

ファブリー病における早期診断・早期治療の重要性

ファブリー病は進行性の疾患であり、死因の半数近くは心血管疾患です5)。そのため、ファブリー病の疾患進行を抑制するために、早期診断・早期治療が重要となります。ファブリー病の診断のための検査には、「酵素活性測定」、「基質蓄積の測定」、「α-Galの遺伝子検査」がありますが、その中でも、乾燥ろ紙血検査(DBS)による酵素活性測定は、比較的簡便に行える方法です。
潜在するファブリー病患者さんを発見し、適切な治療につなげていただくため、疑わしい患者さんがいらした場合は、ためらわずに検査対応施設へ「ろ紙血検査依頼」をご検討いただけますと幸いです。

《参考資料》
  1. 1) 衛藤義勝 編: ファブリー病UpDate, 診断と治療社, 2013.
  2. 2)Kobayashi M, et al.:J Inherit Metab Dis. 2008; 31(Suppl 3):S483‒S487.
  3. 3) 日本循環器学会/日本心不全学会. 心筋症診療ガイドライン(2018年改定版)
    http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_tsutsui_kitaoka.pdf(2019年8月閲覧)
  4. 4) ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会 編. ファブリー病診断治療ハンドブック改訂第3版, 2018, E・N MEDIX
  5. 5) Waldek S, et al. Genet Med. 2009; 11: 790-796.

カスタム表示選択

※ご興味のある領域を選択ください。ご希望内容を中心に表示いたします。

この画面は上記「登録」か「不要」をご選択いただければ元のページに戻ります。
設定変更の場合は、画面上部の「ご興味のある領域選択」メニューをご利用ください。